(画像:123RF)
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 体細胞のDNAをリプログラミングして作成されるiPS細胞は、創薬研究への応用が進む他、それ自体を機能性の細胞に分化させて医療に応用する研究も盛んに行われている。他家のiPS細胞をリソースとした再生医療等製品は、品質の安定性や投与開始までの時間の短さ、製造コストの低減など様々な利点があるため、多くのスタートアップで開発が進む。特に、ヒト白血球型抗原(HLA)型を気にせず使えるユニバーサルiPS細胞の開発に、注目が集まる。

 国内における他家iPS細胞由来分化細胞を使った研究開発では、原料の他家iPS細胞として、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)が樹立したHLA主要3座ホモのiPS細胞が広く使われている。しかし、HLA型が合わない場合、移植後の拒絶反応が出現する懸念が高まる。それを抑えるために免疫抑制剤を使うかどうかは、疾患や臓器などによって異なっている。

 このため、iPS細胞のHLAを遺伝子操作することで、ドナーとレシピエントの型を合わせなくても、誰に対しても免疫拒絶を起こしにくいユニバーサルな細胞にして、細胞医薬や再生医療等製品へ応用しようという動きも活発だ。ただ、細胞からHLAを消失させるとNK細胞からの攻撃を受けてしまうため、その実現には技術的な工夫が必要とされている。

 京都大学発スタートアップのサイアス(京都市左京区、等泰道[ひとし・やすみち]代表取締役)は、ユニバーサルiPS細胞の実現に取り組む企業の1つだ。同社は京都大学iPS 細胞研究所(CiRA)の金子新(しん)教授の研究成果をベースとして、2015年8月に設立された。他家iPS 細胞からキラーT細胞を分化誘導し、高効率で拡大培養してがんを攻撃させる治療法を開発している。現状の方法では、特定のHLA型を持つ患者での活用を念頭にしているが、並行して、ユニバーサルな他家iPS細胞から製造することを視野に入れている。ゲノム編集でHLAを改変し、NK細胞から攻撃を受けないユニバーサルiPS細胞の開発にめどをつけており、キラーT細胞の分化・誘導も確認しているという。

 サイアスと同じく、京都大学発スタートアップのリバーセル(京都市上京区、佐治博夫代表取締役)も同様のアプローチを取る。同社もがんに対する他家iPS細胞由来のT細胞製剤を研究している。HLA主要3座ホモの他家iPS細胞をベースに、A座とB座をノックアウトし、さらに独自の手法でNK細胞による攻撃やウイルス感染などへ対策を講じることで、ユニバーサルなiPS細胞由来のT細胞へと変換しようと試みている。

 この他、ユニバーサルなiPS細胞由来の血小板を研究しているのが、メガカリオン(京都市下京区、赤松健一社長)だ。同社はiPS 細胞から造血前駆細胞を誘導し、巨核球細胞株を作製してその細胞質を分裂させることで、人工的に血小板を得る技術を確立した。現在はHLA主要3座ホモの他家iPS細胞をベースに臨床開発を進めているが、次に実用化する製品として、ユニバーサルiPS細胞から、血小板を製造する計画だ。現在の血小板では日本人に多いHLA型を対象に製造しており、海外では展開しにくい。そこでゲノム編集などを用いて、HLAクラスI分子が持つβ2マイクログロブリンを欠失させることで、細胞表面にHLAクラスI分子が提示されないようにする。同社によれば技術的に完成しており、臨床試験入りに向けて準備を進めているという。

バイオスタートアップ総覧 2021-2022
iPS細胞関連の研究開発を手掛ける企業の掲載ページは以下の通りです。
クオリプス(p.165)、ケイファーマ(p.171)、サイアス(p.178)、セルージョン(p.238)、メガカリオン(p.396)、ランファム(p.433)、リジェネフロ(p.439)、リバーセル(p.442)、Heartseed(p.555)、HiLung(p.558)、iHeart Japan(p.576)、VC Cell Therapy(p.676)など
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