(画像:123RF)
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 アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、1本鎖DNAウイルスであるAAVを利用した遺伝子導入用ベクターのこと。あらゆる細胞種に遺伝子を導入できる上に、宿主のゲノムへ挿入されるリスクが非常に低く、血清型によって臓器の指向性が異なるためターゲットを絞った遺伝子導入が可能で、非病原性のため安全性が高いなどの利点がある。

 このため、遺伝子治療やその研究開発に、AAVは盛んに活用されている。2017年に米国で承認を受けたレーバー先天性黒内障の遺伝子治療である「Luxturna」や、2019年に米国で、2020年には日本で承認を受けた脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療「ゾルゲンスマ」など、既に実用化している製品もある。研究開発中の品目も数多くあり、世界的にその製造キャパシティが需要に追いつかない状況が続いている。

 日本で最も有名なAAVベクター関連のスタートアップとして知られるのが遺伝子治療研究所(川崎市川崎区、浅井克仁社長)だ。自治医科大学の村松慎一特命教授が開発したAAVベクターなどを基盤技術に2014年5月に設立され、中枢神経疾患、先天性代謝疾患などを対象に10種類を超える遺伝子治療パイプラインを開発している他、独自AAVベクターの開発やライセンス事業なども手掛けている。

 開発が進んでいるのは、アステラス製薬とオプション契約を締結している筋萎縮性側索硬化症(ALS) に対する遺伝子治療(GT0001X)だ。AAVベクターを用いて生体内でRNA編集を触媒するADAR2を補充することで、ニューロンの変性を抑える効果を狙っている。また、パーキンソン病に対する遺伝子治療(GT0002X)は、AAVベクターにL-ドパをドパミンに変換するための芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)遺伝子を搭載した遺伝子治療だ。L-ドパからドパミンの産生を促すことでパーキンソン病の症状を抑えられると期待されている。いずれも、2021年中の臨床試験入りを目指しており、注目が集まる。

 また、自社で2種類のAAVベクター(AAV.GTX、AAV.GT5)を保有していることから、他社にライセンス料を支払わずに開発ができる他、HEK293細胞の浮遊培養によるベクターの製造技術を完成させ、AAVベクターの需給逼迫に対応するための体制を構築している。

 レストアビジョン(東京・新宿、堅田侑作社長)も、AAVを用いた遺伝子治療の研究開発を手掛けるスタートアップの1つ。慶應義塾大学発の企業として2016年11月に設立された。同社は、難治性眼科疾患に対する新規治療法の実用化を目指しており、重点的に開発を進めているのが、網膜色素変性症の遺伝子治療だ。光センサー蛋白質である独自のロドプシン遺伝子を導入することで視覚の再生を図る。用いるのは独自に開発したキメラロドプシンで、感度は高いがレチナールの補充が必要な「動物型」ロドプシンと、感度は低いがレチナールの補充が不要な「微生物型」ロドプシンの、それぞれ利点を保持している。これをAAVベクターに搭載・導入し、視力を回復させようというのが、レストアビジョンのアプローチだ。2021年下半期には非臨床試験の実施を予定している。

バイオスタートアップ総覧 2021-2022
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター関連の研究開発を手掛ける企業の掲載ページは以下の通りです。
遺伝子治療研究所(p.71)、エディットフォース(p.91)、シンプロジェン(p.222)、レストアビジョン(p.462)、エマオス京都(p.718)、メディリッジ(p.823)など
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