(画像:123RF)
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 エクソソームとは、生体内の細胞や培養中の細胞が産生し、放出する直径50nmから150nm程度の細胞外小胞のことを指す。脂質二重膜で囲まれており、膜上には膜貫通蛋白質のテトラスパニンや接着分子などを発現している。内部には、mRNA、マイクロRNA(miRNA)などの核酸、骨格蛋白質や各種酵素などの蛋白質を含んでいる。

 エクソソームが細胞や組織間の情報伝達手段として機能していることが様々な研究から明らかになってきた。例えば、がん細胞が産生・放出するエクソソームが、がんの増殖を促進したり、微小環境を形成したりすることが示されている。また、間葉系幹細胞(MSC)が持つパラクライン効果の一部を、エクソソームおよびその中の核酸などが担っていることも分かっている。

 このため、エクソソームを治療や診断に応用するための研究開発が世界的に本格化している。エクソソーム療法は、細胞医薬と同様、多様な作用機序で抗炎症や組織再生などの効果を発揮する上、細胞医薬に比べて投与に際して肺塞栓が生じるリスクが少なく、細胞ではないので造腫瘍性のリスクが無いといった安全性の利点もある。

 エクソソームを治療に応用する研究開発を進めている代表的な企業の1つが、2019年11月に設立されたスタートアップのExTherea(神奈川県藤沢市、今福礼CEO)だ。同社は、口腔粘膜上皮細胞(ケラチノサイト)由来のエクソソーム療法の開発を進めている。同社によれば、口腔粘膜上皮細胞由来エクソソームの方が、間葉系幹細胞由来エクソソームに比べて、in vivo で高い効果を発揮するという。

 対象疾患は当面、(1)がん治療に伴う重度の口内炎、(2)神経変性疾患──の2つを念頭に置く。口内炎に関しては疾患モデル動物を開発しており、in vivoでの効果を確かめ、エクソソーム療法のPOCを取得していく計画だ。また神経変性疾患に関しては、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、神経炎症が関与している病態を対象に、抗炎症作用を持ったエクソソーム療法の開発を進める。

 エクソソームを用いた診断技術を実用化させようとしているのは、Craif(旧社名Icaria、東京・文京、小野瀨隆一社長)だ。独自のデバイスで尿中のエクソソームを捕捉し、その中に含まれるmiRNAを網羅的に解析して、miRNAの発現プロファイルからがん種別の発がんリスクを判定するサービスを開発している。

 現状、開発が先行しているのは卵巣がんで、それ以外にも5大がん(胃がん、大腸がん、乳がん、肝がん、肺がん)や膵臓がん、尿路上皮がんなどを対象に開発を進めている。2022年上半期にも、国内の医療機関向けに、尿中miRNAの発現プロファイルからがん種別の発がんリスクを判定する複数のサービスを開始する計画だ。

バイオスタートアップ総覧 2021-2022
エクソソーム関連の研究開発を手掛ける企業の掲載ページは以下の通りです。
ミルテル(p.393)、Craif(p.514)、ExTherea(p.536)、テオリアサイエンス(p.766)、ハカレル(p.790)など
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