リボルナの富士晃嗣社長

 リボルナバイオサイエンス(神奈川県藤沢市)は、2021年4月、開発中の中枢神経疾患領域の開発品について、米Biogen社と共同研究開発契約とオプション付ライセンス契約を締結した。契約締結に至った経緯や現在の事業について、2021年6月24日、リボルナの富士晃嗣社長が本誌の取材に応じた(聞き手は久保田文)。

 リボルナバイオサイエンスは2018年2月、武田薬品工業のアントレプレナーシップベンチャープログラム(EVP)を通じて立ち上がったスタートアップ。pre-mRNAからmRNAが生成されてから蛋白質へ翻訳、機能するまでの各段階に応じたフェノタイプによるスクリーニング系を基盤技術とし、核酸(mRNA)を標的とした経口低分子薬の研究開発を手掛けている。

 近年、複雑かつ多様な立体構造を取る一本鎖のmRNAを標的とした低分子薬の研究開発が活発化している。ここ数年で、米Arrakis Therapeutics社や米Skyhawk Therapeutics社など、スタートアップが数多く設立されている。また、米PTC Therapeutics社がmRNAのスプライシングを制御する低分子薬として創製し、スイスRoche社へ導出した「Evrysdi/エブリスディ」(Risdiplam/リスジプラム)が、脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬として国内外で承認されるなど、核酸標的低分子薬への注目は高まっている。

 今回リボルナがBiogen社と契約を締結した中枢神経疾患領域の開発品は、品目数を含めて開示されていない。現在のところ、リボルナの開発品は、(1)神経筋疾患に対する開発品(非臨床試験を実施中)、(2)認知症に対する開発品(化合物の最適化を検討中)、(3)ライソゾーム病に対する開発品(化合物の最適化を検討中)、(4)神経変性疾患に対する開発品(標的探索中)、(5)がんに対する開発品(標的探索中)──の5品目であり、このうちいずれかの開発品が、契約の対象となった。富士社長は「標的遺伝子や疾患名などは公表できないが、スプライシングを是正して正常なmRNAを増やし、蛋白質を増加させることで薬理効果を発揮する作用機序を有する」という。

 契約により、リボルナは契約一時金を受領し、契約対象の開発品について主に非臨床試験までを担当する。Biogen社がオプション権を行使した場合、リボルナは開発品のグローバルでの開発・製造・販売権を付与し、開発段階に応じたマイルストーン、売上高に応じたロイヤルティーを得る。金額などの詳細は非開示だ。

 以下、富士社長が本誌インタビューに答えた。

Biogen社とオプション付ライセンス契約をするに至った経緯は。

 ベンチャーキャピタル(VC)を通じて、Biogen社の日本法人の担当者を紹介されたのがきっかけだ。2018年12月に面会してから約1年半、日本法人とやり取りし、その後1年弱、米国本社とやり取りして契約に至った。

 デューデリジェンス(DD)を通じ、Biogen社はあらゆる視点で、我々がどのようにデータを解釈しているのか、その考え方を同レベルで理解しようとしていたと思う。例えば、膨大な生データをやり取りする中で、5回中4回得られた良好なデータだけでなく、1回出た悪いデータについての解釈を求められるようなことが少なくなかった。そこで、どういう背景、どういう理由でそうしたデータが出たと我々が考えているのか、自社内で考えているレベルの話を説明することが重要になった。結果的にDDは難航することもなく、迅速に終わった。

 Biogen社のDDの中で、同社のサイエンスの評価力の高さ、疾患のバイオロジーに対する理解の深さを目の当たりにした。契約に至るまで、日本法人の担当者が一貫してサポートしてくれたのも大きい。外資系の製薬企業の事業開発の担当者には、資料のやりとりや会議の設定などグローバル本社との仲介に徹するケースが少なくない。しかし、Biogen社の日本法人の担当者は、米国本社の考えや意向を理解した上で、我々と一緒にアピールの仕方を考えてくれるなど、非常にサポーティブでありがたかった。

外資系製薬企業との契約に際して、重要だと感じた点は。

 最終的には、お互い弁護士を立ててリーガルチェックを行うが、顧問契約している弁護士事務所の紹介で、米国の弁護士を立てたことはよかった。それにより、英語の細かい文言のニュアンスや返事のタイミング、交渉の持っていき方など、コミュニケ-ションが円滑になったと思う。

核酸標的低分子薬は、製薬企業の関心の高い領域だ。他の製薬企業から導出契約などの打診はなかったのか。

 2018年2月の創業後、かなり多くの製薬企業から連絡をもらった。外資系の製薬企業がほとんどだったが、数十社ぐらいに上るのではないか。最終的にBiogen社と契約に至ったのは、同社が中枢神経疾患領域のリーディング企業であり、同領域で高い開発力を有していて、ライセンスのエンドユーザーだったというのが大きい。導入後、本当に開発をしてくれる製薬企業でなければ導出したくはなかった。

改めて、リボルナの基盤技術の強みを知りたい。

 核酸標的低分子薬の研究開発を手掛ける企業の多くは、劣性遺伝の疾患を対象に変異型のアレルの変異を是正するアプローチを取っている。それに対して我々は、野生型のアレルを安定化して、発現量を増やすアプローチへの対応が可能だ。具体的には、ロングレンジのmRNAを合成し、ある条件下で生体内と同様のフォーメーションを取るmRNAを作った上で、化合物のスクリーニングを行う。

 第1段階では、mRNAと化合物の結合能(KD値)で選別し、第2段階では遺伝子の発現量が増えるかどうかなど機能で絞り込みを行う。mRNAの外側ではなく内側の構造に結合するインターナルバインダーを同定することで、標的への特異性、選択性を高めている。

今後の事業戦略については。

 事業モデルとしては、自社で標的を選定し、低分子化合物をスクリーニング・開発する自社研究開発と、持ち込まれた標的などに対してスクリーニング技術などを提供する共同研究開発の両輪を走らせている。また、資本提携をして、導出を目指す包括的研究開発も進める方針だ。

 現状、幾つかの国内の製薬企業と共同研究契約を締結して共同研究開発を進めているが、今後は基盤技術を活用した共同研究開発をさらに増やしたい。また、Biogen社にオプション権を付与したもの以外の自社開発品は、引き続き開発を進める計画だ。財務的にも、契約一時金が得られるのは大きい。早期の段階でも製薬企業と提携し、開発を加速するとともに拡充させたい。事業開発に力を入れるため、現在担当する人材を探しているところだ。Biogen社は業界が認めるサイエンスドリブンな製薬企業であり、そこに評価してもらえたことで、今後は他社とのコミュニケーションもより取りやすくなると期待している。

バイオスタートアップ総覧 2021-2022
リボルナバイオサイエンスを含めたバイオスタートアップの詳細情報を掲載しています。
●上場予備軍のバイオテク企業398社を一挙収載
●あなたの知らない「次のユニコーン」がこの中に!
●競合と比べた技術的アドバンテージを独自解説
詳しくはこちらをご覧ください!