重症化した患者の一部は、体外式膜型人工肺(ECMO)による治療も実施される(画像:123RF)

 国立国際医療研究センター(NCGM)国際感染症センターの大曲貴夫センター長、齋藤翔医師らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者を対象に実施しているレジストリ研究の中間解析結果について、2020年9月30日、オンラインで記者会見を開催。国内では、2020年5月までの第1波の入院症例に比べて、2020年6月以降の第2波の入院症例では、あらゆる年齢層において死亡率が低下していることが明らかになった。

 NCGMが中心となって進めているレジストリ研究「COVIREGI-JP」は、2020年1月以降、COVID-19と診断され、医療機関で入院管理されている症例を対象に現在も実施されている。2020年9月28日時点で、研究に参加しているのは802施設、登録症例数は累計で1万84例に上る。

 研究グループは今回、レジストリが開設されて以降、2020年9月4日までに登録された345施設の6070例を対象に中間解析を実施した。その際、国内のCOVID-19の感染者数や入院患者数の増減を踏まえ、6070例を、2020年6月5日以前に入院した症例を第1波での入院例、2020年6月6日以降に入院した症例を第2波での入院例に分類した上で解析を行った。なお、入院時の重症は、酸素投与、人工呼吸器管理、SpO2(酸素飽和度)が94%以下、呼吸数が24回/分以上のいずれかに該当する症例と定義した。

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図1 中間解析の対象となった時期(提供:国立国際医療研究センター)

 その結果、第1波の入院症例に比べ第2波の入院症例では、(1)高齢者の割合が低下した、(2)入院時に重症だった症例が減った、(3)発症から入院までの日数が短くなった──ことが明らかになった。(3)に関しては、発症日が記録されており、かつ、入院日が発症日よりも遅い症例についてのみ解析を行った結果、第1波の入院症例は、発症から入院まで平均7.6日かかっていたのに対し、第2波の入院症例は、発症から入院まで5.1日しかかかっていなかった。

 続いて研究グループは、入院した症例を、0歳から29歳、30歳から49歳、50歳から69歳、70歳以上で層別化した上で、解析を行った。その結果、第1波の入院症例に比べて第2波の入院症例では、(1)あらゆる年齢層において、入院時に重症だった症例の割合が低下した、(2)あらゆる年齢層において、入院後の死亡率が低下した、(3)入院時に軽症または中等症だった症例のみを対象としても、あらゆる年齢層で入院後の死亡率が低下した(0歳から29歳は0.0%で同率)、(4)入院時に重症だった症例のみを対象としても、あらゆる年齢層において入院後の死亡率が低下した──ことが分かった。

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図2 重症度、年齢層別の入院後の死亡率(提供:国立国際医療研究センター)

 併存疾患についても解析を実施した。研究グループが、入院症例のうち、うっ血性心不全や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、COPD以外の慢性肺疾患、軽度糖尿病、重度糖尿病、肥満、固形がん、高血圧、高脂血症、腎機能障害などを併存している割合を、第1波の入院症例と第2波の入院症例で比較したところ、疾患によって増えたものも、減ったものもあった。ただし、これまでのところ併存疾患について、年齢で層別化した解析は行っておらず、今後実施する計画だという。

 投薬の状況についても解析された。研究グループが、入院した症例にどのような投薬が行われたかを調べたところ、第1波の入院症例よりも第2波の入院症例の方が、重症度にかかわらず、ステロイド薬(シクレソニドや入院前からの使用は除く)の投与は増加する傾向が、抗凝固薬の投与は減少する傾向が示唆された。同様に、重症度にかかわらず、ファビピラビルの投与は減少、レムデシビルの投与は増加、シクレソニドの投与は重症例においてのみ減少、ナファモスタットの投与は横ばいといった傾向が示唆された。

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図3 COVID-19の治療目的かどうかで分類した投薬の状況(提供:国立国際医療研究センター)

 さらに研究グループは、2020年5月31日までにレジストリに登録された2638例を対象として、入院後の重症化因子や死亡因子について解析した。その結果、(1)腎機能障害、肝機能、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病を有する症例は、入院後に重症化する割合が高い傾向にある、(2)心疾患、慢性肺疾患、脳血管障害、腎機能障害を有する症例は死亡する割合が高い傾向にある、(3)重症化因子と死亡因子は異なる可能性がある──ことが明らかになった。

 今回の研究では、第1波に比べ、第2波で入院した症例では、重症度にかかわらず、あらゆる年齢層において死亡率が低下したことが明確になった。その理由について、大曲センター長は、「発症から診断までの時間が短縮していることが大きいと考えている。軽症のうちに見つかれば、重症化率は下がり、医療的な介入も早期に実施できる。その結果、重症化率や死亡率が下がる可能性はあるだろう」と指摘。第1波と第2波で流行株のゲノムが変化し、病原性が下がっている可能性について、齋藤医師は、「ゲノムの解析は行っていないので、回答を控える」と説明した。

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