画像のクリックで拡大表示
ペプチドリームの決算説明会の資料より

 ペプチドリームは、2020年8月7日、2020年12月期第2四半期の決算説明会を電話会議で開催。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しては、スパイク蛋白質を標的として、3つのアプローチで抗コロナ薬の研究開発を進めており(上図)、2021年中には臨床試験入りできるとの見通しを示した。

 2020年12月期第2四半期は、創薬共同研究と戦略的提携による自社パイプラインの拡充において、それぞれ幾つかの進捗があった。

 創薬共同研究では、2020年5月、参天製薬と眼科領域で進めている包括的創薬共同研究開発の2つ目のプログラムで、見いだされた特殊環状ペプチドがヒット化合物のクライテリアを達成。また、2020年5月、ドイツBayer社と進めている創薬共同研究開発について拡大契約を締結し、複数の標的蛋白質を対象に特殊環状ペプチドを探索・最適化し、放射線を用いた診断薬や新規の治療薬への応用などを目指すことになった。さらに、2020年6月には、米Merck社と、将来発生し得る変異型も含め、抗コロナ薬の共同研究開発契約を締結した。

 COVID-19に関しては、抗抗体ができにくく、変異のスピードが速いスパイク蛋白質を標的とし、変異型の新たなコロナウイルスに対しても有効な、汎用性の高い抗コロナ薬の研究開発を進めていることを紹介。ペプチドリームとして、(1)スパイク蛋白質のS1領域に結合し、ヒト細胞のACE2(受容体)との結合を阻害する薬剤、(2)S1領域またはS2領域に結合し、免疫細胞を誘導するペプチド薬物複合体(PDC)、(3)コロナウイルス全般で高度に保存されているS2領域に結合、ウイルスを阻害する薬剤――の3つのアプローチで創薬を進めていると説明した上で、一部のアプローチについてMerck社と共同研究開発を進めていると明らかにした。

 現在、最も進んでいるアプローチは、「in vivoでのPOC取得に近いところにある」(金城聖文副社長)といい、早いものは、2021年中に臨床試験入りできるとの見通しを示した。それがMerck社と共同研究開発を進めているプログラムであれば、契約に基づく枠組みで臨床試験を、また、ペプチドリームが自社で進めているプログラムであれば、自社で臨床試験を行う。なお、いずれのアプローチについても、開発対象となるのは、COVID-19と診断された陽性患者や軽症患者になるとみられ、「重症患者に対しては、他の薬剤との併用になるのではないか」(金城副社長)という。

 戦略的提携による自社パイプラインの拡充に向けては、2020年2月、米Kleo Pharmaceuticals社と共同で研究開発しているプログラムに進捗があった他、2020年4月に三菱商事と合弁会社のぺプチグロース(東京・千代田、杉本二朗代表取締役)を立ち上げ、ぺプチグロースと細胞医薬や再生医療向けに成長因子を代替するペプチドを共同開発する契約を締結した。

 Kleo社とは現在、多発性骨髄腫を対象に、がん抗原であるCD38に特異的に結合するペプチドと、ヒト体内のIgG抗体と特異的に結合する低分子化合物を組み合わせ、免疫細胞にがん細胞を攻撃させるPDC(開発番号:KP1237)を開発中(通称『CD38-ARM』)。

 2020年2月には、多発性骨髄腫で自家幹細胞移植の治療を受けた後、微小残存病変(MRD)を認める患者を対象として、米国で、KP1237と自家NK細胞による治療の臨床試験開始届(IND)が承認された。COVID-19の影響で、試験開始が遅れていたものの、「2020年第3四半期にも、第1/2相臨床試験が開始される予定だ」(金城副社長)という。また、ダラツムマブに再発・難治性の多発性骨髄腫患者を対象にKP1237(旧開発番号:KP1196)を投与する治療についても、2020年第3四半期に臨床試験入りできる見通しだという。

 ぺプチグロースとは、成長因子を代替できる特殊環状ペプチドを探索・開発する、再生・細胞治療向け成長因子事業を進める。具体的には、動物血清由来や組換え技術で製造され、培地に添加されている数十種、数百種の成長因子を代替できる特殊環状ペプチドを探索し、培地を開発・販売する企業へ販売したり、細胞医薬・再生医療の開発を手掛ける製薬企業、アカデミアなどと共同開発したりすることを検討している。スクリーニングで、ヒット化合物の特殊環状ペプチドが見いだされ、そのプロパティが診断薬や成長因子を代替できる医薬品に向いていれば、培地向けではなく、ペプチドリームが医薬品や診断薬として自社開発することも考えているという。

総プログラム数は107件から114件に増加

 なお、ペプチドリームのプログラム数は、2019年12月末時点では107件だったが、2020年6月末には114件となり、7件増加(下図、アクティブなプログラムのみカウント。技術移転先のプログラムは含まれていない)。114件のステージ別の内訳は、第1相臨床試験の段階にある医薬品が1件、臨床試験入りしている診断薬が1件、GLP試験からIND申請の段階が8件、リード化合物からGLP試験の段階が13件、ヒットからリード化合物の段階が46件、ターゲット検証からヒット化合物の段階が45件――となっている。また、114件のプログラムの創薬アプローチは、特殊ペプチドと低分子薬が計77件、PDCが37件だという(同一標的は重複してカウントせず)。

画像のクリックで拡大表示
ペプチドリームの決算説明会の資料より

 なお、第1相臨床試験の段階にある1件の医薬品は、これまで同様、米Bristol-Myers Squibb(BMS)社が、経口薬と注射薬の両面で開発し、第1相臨床試験を終えているPD1/PD-L1阻害ペプチドで変わっておらず、「現時点で、開示できる新たな情報は無い」(金城副社長)という。

 2020年初頭、ペプチドリームは、2020年末までに2品目から6品目が臨床試験入りするとの見通しを立てていた。それについて金城副社長は、「COVID-19の影響で半年遅れたものの、2020年第3四半期にKP1237の2本(2品目分)が臨床試験入りすることは間違いない。それ以外の開発品は、今後数カ月以内に間に合うかどうかだ」との見方を示し、2020年末までに3品目以上が臨床試験入りする可能性を否定しなかった。

 同社の2020年12月期第2四半期の業績(非連結)は、売上高が31億700万円、営業利益が11億7600万円、経常利益が11億7300万円、四半期純利益が8億9000万円だった(2019年12月期から事業年度の末日を変更したため、前年同期比の記載は無し)。

 また、2020年12月期通期の業績は、売上高が100億円以上、営業利益が53億円以上、経常利益が54億円以上、当期純利益が40億円以上と、これまで通りの予想。金城副社長は、「第2四半期は、COVID-19の感染拡大により、新規の契約締結や既存のプログラムの進捗が遅れるなど、想定外の向かい風となったが、通期の業績予想は十分射程圏内だ」と話していた。