(画像:123RF)

 米Moderna社は2020年7月14日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンmRNA-1273について、第1相臨床試験の中間解析の結果を著名な医学雑誌であるNEJM誌のオンライン版に報告したことを明らかにした。この臨床試験は「mRNA-1273 Study Group」に参加している米Kaiser Permanente Washington Health Research InstituteのLisa A. Jackson氏らが発表したものだ。

 今回報告されたのは、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が中心となって進めているオープンラベルの第1相臨床試験に参加し、25µg、100µg、250µgのいずれかを 28日間隔で2回接種されて、57日後まで追跡された、18歳から55歳の健康な成人45例から得られたデータだ。それらは、5月18日に公表された中間解析の結果を確認した。

 初回接種から15日目までに、全ての患者に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白質に結合する抗体が現れた。結合価は用量依存的に上昇し、また、1回目の接種後より2回目の接種後の方が高かった。2回接種後の幾何平均抗体価(geometric mean antibody titer:GMT、被接種者それぞれの抗体価変化率の平均を捉えた指標)は、COVID-19確定例38人(15%が重症、22%が中等症、63%が軽症者)から回復期に採取した血清の測定値より高かった。例えば、100µgを2回接種された患者の初回接種から57日時点の幾何平均抗体価は、38人に由来する回復期血清の平均2.1倍だった。なお、結合価と中和抗体価の間には強力な相関が見られた。

 中和抗体の測定には、プラーク減少中和試験(PRNT)と、シュードタイプウイルスを用いた中和(PsVNA)アッセイを用いた。ワクチン接種前には、中和抗体を保有する人はいなかった。2回接種後には、中和抗体価は確かに上昇しており、初回接種から43日時点で、全員に中和抗体が見られた。

 25µg群と100µg群の幾何平均力価には明らかな用量依存性が見られたが、250µgまで用量を増やしても、追加の利益はわずかだった。そこで、第3相臨床試験には100 µgを用いることにした。

 25µg群と100µg群については、T細胞の反応も調べた。2回目の接種後は、Th1細胞(体内に侵入してきた異物を攻撃する細胞性免疫を促進するT細胞)に偏向したCD4 T細胞反応が認められた。Th2細胞(抗体による侵入異物に対する攻撃を促進するT細胞)に偏向したCD4 T細胞反応には有意な変化は見られなかった。

 免疫反応の持続期間に関する検討は現在行われている。参加者は、2回目の接種から1年間、追跡される見込みだ。

 mRNA-1273は、安全で忍容性も高く、重篤な有害事象は報告されなかった。有害事象は一般に、一過性で、軽症から中等症だった。有害事象の報告は250µg群に多く、この用量の投与を受けた14例中3例(21%)が1つ以上の有害事象を経験していた。

 全身性の有害事象は、2回目の接種後に、より多く認められた。25µgの13例中7例(54%)と、100µg群と250µg群の全員がこれを経験した。2回目の接種後に100µg群に多く報告された全身性の有害事象は、疲労感(80%)、悪寒(80%)、頭痛(60%)、筋痛(53%)だったが、全て一過性で、軽症から中等症だった。また、100µgにおいて最も多く報告された局所の有害事象は注射部位の疼痛で、全員がこれを経験したが、全て一過性で、軽症から中等症の範囲だった。

 第1相臨床試験にはあと7コホートが参加することになっており、患者登録は既に終わっている。内訳は、18歳から55歳の健常人15例に50µgを投与するコホート、56歳から70歳を30例登録して25µg、50µg、100µgを投与する3コホート、71歳以上を30例登録して25µg、50µg、100µgを投与する3コホートだ。

 第2相臨床試験については、18歳から55歳の健常成人300例と、55歳以上の健康な300例の登録が既に完了している。第2相試験では、50µg、100µgに加えてプラセボ群も設定し、28日間隔の2回の接種による反応性と免疫原性を評価する計画になっている。

 7月27日に患者登録が開始される第3相臨床試験(COVE試験)は、3万例を登録し、100 µgのワクチンまたはプラセボに1対1でランダム割り付けする計画で、SARS-CoV-2感染予防と、症候性のCOVID-19の予防が、主要評価項目に設定されている。Vaccine efficacy(VE)は60%(95%信頼区間の下限は30%超)を想定している。データの中間解析は、SARS-CoV-2感染またはCOVID-19発症というイベントが53件発生した時点と、106件になった時点で行い、最終的な分析は、イベントが151件発生した時点で行う予定だという。

 Moderna社は、第3相試験用のワクチンの製造を終えている。さらには年内に、おおよそ5億ドーズの製造を予定しており、年間生産能力は最大で10億ドーズになる見込みだ。また、米国外に供給する分のワクチンの製造は、7月9日に結んだ契約に基づいて、スペインLaboratorios Farmacéuticos Rovi (ROVI)に委託している。