TLR4の構造(画像:123RF)

 エーザイは、2020年7月1日、米University of Pittsburgh Medical Centerと共同で、中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者を対象に、同社が以前に敗血症治療薬として開発を進めていたエリトラン(一般名、開発番号:E5564)の臨床試験を開始すると発表した。近く米国で被験者への投与が開始される。同社は今後、米国以外にもグローバルで試験を展開する予定で、早ければ、試験全体として2020年内に結果が得られる見通しだ。

 同試験は、中等度のCOVID-19患者を対象としたランダム化二重盲検比較試験だ。海外では、市中肺炎を対象に、アダプティブデザインの臨床試験「REMAP-CAP」(Randomized Embedded Multifactorial Adaptive Platform Trial for Community- Acquired Pneumonia)が実施されており、14カ国から200施設以上の医療機関が参加している。今回、エーザイが開始を発表したエリトランの臨床試験は、COVID-19を対象にREMAP-CAPのサブスタディーとして立ち上がった試験である「REMAP-COVID」の枠組みで実施される。

 具体的には、酸素吸入や人工呼吸器などを使用していないCOVID-19の入院患者を、標準治療に加えてエリトランを投与する群(介入群)と、標準療法のみを受ける群(対照群)に均等に割り付ける。症例数については、両群とも400例(介入群は最大で500例)程度を見込んでいる。ただし、「アダプティブデザインの試験であるため、今後、他の治療薬候補を投与する群を追加する可能性がある。その場合は介入群の症例数や、対照群との割り付け比が変わる可能性がある」(同社広報)としている。なお、同試験の主要評価項目はエリトラン投与後21日間における臓器不全が未発症の期間とした。

 エーザイの広報担当者は、エリトランの投与の開始時期について、「詳細は非開示だが、近く米国で投与が開始される見込みだ。その後、国内含めグローバルに試験を展開する予定で、早ければ試験全体で2020年内に結果が得られると考えている」と説明。国内での参加施設や目標症例数、開始時期については、「規制当局との協議もあるので、現時点では話せないが、検討を進めている段階」(同社の広報担当者)と回答した。

 エリトランはエンドトキシンの活性本体であるLipid Aの誘導体で、Toll様受容体(TLR)4に対する拮抗作用を示す。様々な炎症性サイトカインの過剰産生などによって引き起こされる過剰な免疫反応(サイトカインストーム)を抑制し、COVID-19の重症例で見られる肺をはじめとする多臓器の損傷を防ぐと期待される。

 エーザイの広報担当者は、「我々は、細胞や動物を使った実験でCOVID-19に対するエリトランの有効性を確認したわけではない。ただ、過去には、エリトランがインフルエンザウイルス感染による肺炎に有効であることが報告されており、同薬の作用機序から考えてもCOVID-19に対する有効性が期待できると判断した」と説明している。

 エーザイはエリトランについて、もともとは重症敗血症を対象にした開発を進めていた。しかし、第3相臨床試験で主要評価項目を達成できなかったことなどから2011年に同試験を中止。その後、2014年には重症敗血症に対する臨床開発を断念した経緯がある。エーザイの広報担当者は、「我々は臨床開発の中止を決めた後も、エリトラン自体の有用性は高いと考えていたため、米国でのIND申請を取り下げなかった。そのため、今回のCOVID-19のように新たな対象疾患が見つかった際に、臨床試験を直ちに開始する準備が整っていた」と話していた。

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