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 フランスSanofi社ワクチン部門のSanofi Pasteur社と米Translate Bio社は、2020年6月23日、感染症に対するmRNAベースのワクチンの共同開発とライセンスに関する現行の契約を拡大すると発表した。適応症を全ての感染症に拡大すること、Sanofi Pasteur社がTranslate Bio社に支払う新たな金額設定に両社が合意した。

 両社は2018年に、Translate Bio社専有のmRNAワクチン創製技術を活用する最大5品目、3年間の開発協力で最初の契約を締結していた。同契約を基礎に、2020年3月、期間を4年以上に延長して新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するmRNAワクチンの開発で連携すると発表した。そして今回、将来発生し得る感染症の拡大も見据え、様々なウイルスや細菌を病原とする感染症を対象としてmRNAワクチンの共同開発を継続していくことで一致した。

 現在両社は、複数のSARS-CoV-2ワクチン候補からリード候補決定に向けてin vivo免疫原性、中和活性を評価中で、2020年第4四半期に臨床試験を開始することを目標としている。インフルエンザウイルスに対するmRNAワクチンも前臨床開発が進んでおり、2021年中ごろの臨床入りを見込んでいる。並行して、他の感染症に対するmRNAワクチンの開発も進められている。

 今回の契約拡大により、Sanofi Pasteur社は共同開発するmRNAワクチンの全世界的独占的ライセンスを取得する。それに伴い、Sanofi Pasteur社はTranslate Bio社に対し、一時金4億2500万ドル(約455億円)、マイルストーン最大19億ドル(約2035億円)の他、全ての開発費、製品化後の売上高に応じた段階的ロイヤルティーを支払うことが決まった。一時金は、現金3億ドル(約321億円)と株式投資1億2500万ドル(約134億円)を合わせたもので、Translate Bio社は契約締結前20日間の平均株価の50%割増額(1株当たり25.59ドル)で普通株式を私募で発行する。マイルストーンには、2018年に決定した4億5000万ドル(約482億円)のマイルストーンを含んでいる。Translate Bio社は、今後数年以内にSARS-CoV-2ワクチンの開発目標達成に応じたマイルストーンを含めて3億6000万ドル(約386億円)が支払われると予測している。

 Translate Bio社は、独自のmRNA技術基盤「MRT」を利用した感染症のmRNAワクチン、嚢胞性線維症など肺疾患のmRNA医薬の開発を手掛け、脂質ナノ粒子(LNP)を用いた送達システムの開発も充実化させている。ワクチン開発では、病原特異的な抗原蛋白質の天然配列をコードするmRNAを基に、標的細胞における蛋白質発現の安定化と効率化のために配列を最適化し、LNPなどの運搬体に封入する。送達させる標的組織の特性に応じて、運搬体もサイズや表面電荷、脂質組成などを最適化し、mRNA構造物として完成させる。このMRTプラットフォームは、感染症やがんを対象とする治療用抗体、予防ワクチンなど様々なmRNA医薬の開発に幅広く応用することができる。