画像:123RF
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 塩野義製薬は2020年6月22日、日本大学などが開発した、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)などへの感染を約30分で判定できる迅速診断法について、開発や販売などに関するライセンス契約に合意したと発表した。今後、塩野義製薬は、臨床試験等で性能を検証し、体外診断用医薬品としての承認取得を視野に入れて、実用化を進める。

 塩野義製薬が実用化を進めるのは、日本大の桑原正靖教授らが開発した核酸増幅法の、Signal Amplification by Ternary Initiation Complexes法(SATIC法)を応用した新型コロナの迅速診断法だ。

 SATIC法では、検査対象となるウイルスRNAを含む検体(鼻咽頭拭い液や、唾液、鼻汁など)を、専用の前処理液で処理(95℃、2分間)した後、専用の試薬と反応させる。試薬には、ウイルスRNAの特定の配列に結合する環状の1本鎖DNAや、プライマー、DNAポリメラーゼ、ナノビーズなどが含まれている。検体中のウイルスRNAや、試薬中のプライマーが、環状1本鎖DNAに結合すると、環状DNAに沿って、連鎖的にDNAが伸長する。

 その結果、伸長したDNAは、グアニン四重鎖と呼ばれる高次構造を形成。グアニン四重鎖とナノビーズが複合体を形成することで凝集塊が沈殿すれば、陽性と判定される。検体の処理から判定までにかかる時間は約30分で、PCR法と比較して迅速に判定できる。桑原教授は、「PCR法のようにウイルスRNAを増幅させるのではなく、ウイルスRNAやプライマーを起点としたDNAの増幅産物を判定に用いる。検体に含まれるウイルスRNAが10コピー程度でも判定可能で、PCR法と同等の性能を持つ」と説明。実際に東京医科大学と共同で、「SARS-CoV-2の感染者と非感染者を合わせて約100人の検体を用いて、SATIC法を検証した結果、PCR法による判定と同じ結果であることが確認されている」(桑原教授)。

 塩野義製薬は、同診断法を実用化し、医療機関や検疫所における感染者の把握や、海外からの渡航者を受け入れる際の感染者のスクリーニングなどに活用したい考えだ。同社の広報担当者は、「現段階で詳細を話せることは少ない」とした上で、「今後、臨床試験などを実施し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断に利用できると判断された場合は、体外診断用医薬品として薬事承認の取得を目指す」と説明。実用化の時期については、「現時点ではめどは立っていないが、できるだけ早く実用化できるように進めていく」(同社広報)と回答した。