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 米Eli Lilly社は、2020年6月1日、カナダAbCellera社と共同で開発している、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防・治療用の抗体医薬(開発番号:LY-CoV555)をCOVID-19の患者に投与する世界初の臨床試験で、患者への投与を開始したと発表した。

 LY-CoV555は、SARS-CoV-2のスパイク蛋白質を認識するIgG1モノクローナル抗体で、ウイルスがヒトの細胞に侵入する際のACE2との結合を阻害することにより、高い中和活性を発揮する。同抗体医薬は、AbCellera社と、米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のワクチン研究センターが、米国においてCOVID-19患者が報告され始めた頃に発症し、その後回復した1人の患者の血液中から見つかった中和抗体に基づいて作製されている。

 Lilly社は、抗体の発見から3カ月以内に、LY-CoV555の開発を、臨床試験段階まで進めることができた。両社はまず、COVID-19の重症化を防ぐ治療用抗体としての有用性を評価することにした。

 第1相臨床試験は、米New York大学Grossman医学部や米国ロサンゼルスのCedars-Sinai医療センターなどで開始された。入院しているCOVID-19患者を登録し、LY-CoV555またはプラセボに割り付けて投与して、安全性と忍容性を評価することになっている。

 両社は6月末には、最初に投与された一群の患者のデータを分析し、好結果であれば登録患者を増やして、有効性評価を目的とする臨床試験を開始する計画だ。この段階では、自宅隔離を指示された軽症のCOVID-19患者も対象に含めることになっている。

 Lilly社は並行して、LY-CoV555の大規模製造も開始する見込みだ。COVID-19患者に転帰改善をもたらせることが確認されれば、2020年末までに数十万ドーズの製造を目指すという。

 一方で両社は、LY-CoV555の予防効果の検討も計画している。対象としては、ワクチンが適応にならない、感染リスクまたは重症化のリスクが高い人々を想定している。

 Lilly社は他にも中和抗体を開発しており、それらについても今後数か月のうちに臨床試験を開始したいと考えている。有用な抗体医薬が複数得られれば、個々の抗体の単剤適用に加えて、複数の治療用抗体を併用するアプローチについても検討する予定だという。