人類とウイルスとの闘いに終わりはないのか?(画像:123RF)

 スタンフォード大の創薬研究開発機関である「SLDDDRS」を率いる西村俊彦ディレクターは日本のアンジェスなどと協力して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの開発を推進している。新型コロナは今も感染拡大が続いているが、新たなパンデミックに対して、今から備えるべきだと西村氏は警鐘を鳴らす(聞き手:市嶋 洋平=日経BPシリコンバレー支局長)。

SLDDDRSとはどのような組織ですか?

西村俊彦氏
スタンフォード大学ディレクター。スタンフォード大学医学部麻酔科に設置した創薬を中心とした研究開発機関「Stanford Laboratory for Drug, Device Development & Regulatory Science (SLDDDRS)」の共同所長を務める。米国、日本・アジアの大学・研究機関、企業との連携に取り組む。東北大学医学部卒。医学博士。専門は胸部外科。シリコンバレーに20年間在住

 西村俊彦氏(以下、西村) スタンフォード大学の医学部麻酔科に設置した、創薬、および医療機器の研究室です。ゲノムや再生医療、遺伝子治療などの新たなテクノロジーに加え、ITやIoT、ビッグデータ分析などを活用することで、シードから臨床試験、認可までの期間を短縮し、成功率を上げる一気通貫のプラットフォームを構築するのが目的です。

 西村 SLDDDRSのメンバーには米国、日本、中国、台湾、シンガポールの大学や研究機関、企業などが参加しています。

COVID-19に関してはどのような取り組みをしていますか?

 西村 日本のバイオテクノロジー会社であるアンジェスとDNAワクチンの開発で協力しています。最近、同社がCOVID-19のDNAワクチンの開発で治験に入るということで話題になりました。アンジェスもSLDDDRSのメンバーで、このネットワークや知見を利用してもらっています。

創薬の研究や臨床試験に特別なマウスを活用しているとのことですが、どのようなものですか?

 西村 人間と同様の細胞や臓器を持ったマウスです。ヒューマナイズマウスと呼んでいます。それを利用することで、より人間に近い臨床試験が可能になります。これは日本の実験動物中央研究所(実中研)と連携して研究しています。

ヒューマナイズマウスを用いることで、実際に当局の承認プロセスなどの開発期間短縮に結びついた実績はあるのでしょうか。

 西村 アンジェスが開発していた遺伝子治療薬が、2019年に日本で早期承認されました。HGFと呼ぶ細胞を増やす因子を利用して、血流が悪くなっている患者に対して、血管を新生する効果をもたらすことが期待されています。

今、注力していることはどのようなことですか?

 西村 ポストコロナには、COVID-19よりも感染力や致死率が高い新型ウイルスがアウトブレイクする可能性は大きいと見ています。そうした非常事態に、ヒューマナイズマウスをFirst-in-human(FIH)および第2相臨床試験で患者の代わりとして臨床試験に活用できるのではないかと考えています。

 西村 もう1つニワトリ以外の大型鳥類を活用することでも開発のスピードアップや、大量生産が図れるのではと思っています。こうした研究と、迅速な開発・製造プロセスの両輪の準備が今まさに必要になっています。