(画像:123RF)

 英University of Oxfordは2020年5月22日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防ワクチン候補ChAdOx1 nCoV-19の第2/3相試験を開始すると発表した。幅広い年齢層を網羅する最大1万260人の被験者を目標登録とし、Oxford Vaccine Centreが英国内の提携機関と協力して遂行する。

 ChAdOx1 nCoV-19は、同大のJenner Instituteが開発した組換えウイルスワクチンで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク(S)蛋白質の遺伝子配列を改変し、チンパンジーのアデノウイルスワクチンベクター(ChAdOx1)に導入したもの。2020年1月10日に同ワクチンの設計に着手し、4月末には第1相試験を開始していた。その間、ChAdOx1 nCoV-19の安全性とサルでの免疫応答を確認するなど、臨床開発候補としての妥当性を示すエビデンスを蓄積してきた。並行して、同大は英AstraZeneca(AZ)社と契約し、今後の大規模臨床開発の計画と実用化に対応する量産に関して具体的な方針を協議している。

 4月から実施している第1相試験は、1000人以上の健常成人への投与が完了し、追跡評価を継続している。第2相試験では被験者の対象年齢を拡大し、成人は56歳から69歳、70歳以上に分け、小児は5歳から12歳として、それぞれ小集団の年齢層に分けてChAdOx1 nCoV-19に対する免疫応答を評価し、年齢層別の相違の有無を調べる。第3相試験では、18歳以上の被験者を多数登録する予定で、より大規模な集団における免疫応答を評価し、COVID-19に対する予防効果を検証する。第2相と第3相試験に登録される成人被験者はChAdOx1 nCoV-19群、または対照の髄膜炎菌ワクチン(MenACWY)群にランダム化される。

 MenACWYは活性薬剤対照の位置付けで、何ら副反応を誘発しない生理食塩液を投与するよりも、ChAdOx1 nCoV-19群で発現する可能性がある腕の痛み、頭痛、発熱といった軽い副反応を把握しやすくなる。ChAdOx1 nCoV-19または生理食塩液の2群のみの設定では、副反応が発現したとき、被験者は盲検下でも試験ワクチンであるChAdOx1 nCoV-19を投与されたことに気付くと予想される。試験者らは盲検状態を維持することを重視しているため、それが崩れれば被験者の日常行動に何らかの影響が及び、結果として試験データにバイアスが生じる可能性を警戒している。MenACWYは2015年から英国の10代を対象として髄膜炎の予防接種プログラムに承認されており、旅行者ワクチンとしても用いられ、副反応など安全性は検証済みだ。

 第2/3相試験は、同大のウェブサイトに掲載されている試験実施機関で、5月から6月にかけて投与が行われる。

 試験ワクチンの投与後は、一部の被験者は7日間の自覚症状を電子日記に記録し、具合の悪い状態を自覚した被験者は3週間にわたり記録を継続する。また、それとは別に週1回、被験者は家族など同居人がCOVID-19の感染可能性があったかどうかについての調査に回答することを求められる。症状が無い被験者の場合は、COVID-19への曝露状態をモニターする目的で、一部の被験者には自己採取した鼻咽頭などの拭い液を送付することを要請し、その検体のウイルス検査を実施する計画だ。

 被験者はワクチン投与後の一定期間内に試験機関で診察を受けることも要請される。その際は試験者が健康状態を診るとともに、ワクチンに対する免疫応答の評価の目的で採血し、記録された電子日記を評価する。試験期間中に被験者がCOVID-19を発症した場合は、試験者メンバーの専門医につなげ、感染の有無を精査、症状改善に向け対応する。重症化している被験者は提携する専門病院に治療対応を要請する。

 ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの予防効果は、試験者メンバーの統計学者が感染者数を対照群と比較して解析するが、そのためには、被験者のうちの少数でもCOVID-19を発症することが前提となる。解析に必要な感染者数を確保するまでの時間は、市中でのウイルス伝搬力の高低に左右される。伝搬力が高い場合には、ワクチンに効果があれば数カ月で十分なデータを収集することができるが、伝搬力が低下していけば最長で6カ月を要すると試験者らは予測している。そのため、感染者との直接接触機会が多い最前線の医療従事者や公的機関の職員などを被験者として優先的に登録し、できる限り速やかに有効性データを捉えたいとしている。

 ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの予防効果が証明できない場合は、試験者らはそれまでの試験の過程を評価分析し、投与回数など新たなアプローチを試みる。場合によっては、ChAdOx1 nCoV-19の開発プログラムを中止する可能性もある。

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