(提供:富士フイルム)
日経バイオテク×日経メディカル共催 緊急オンラインセミナー
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)征圧への道
2020年 5月 30日(土) 10:00~12:30
https://www.nikkeibp.co.jp/seminar/atcl/med/200530/

 日本医師会COVID-19有識者会議(座長:自治医科大学の永井良三学長)は、2020年5月19日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発について、「エビデンスが十分でない候補薬を拙速に承認すべきでない」とする緊急提言を発表した。同緊急提言は、具体的な薬剤名に言及しているわけではないものの、2020年5月20日に開催された日本医師会の記者会見で、同有識者会議の笠貫宏副座長は、緊急提言の背景に、国民の「アビガン」(ファビピラビル)への過剰な期待があることを示唆した。

 日本医師会(日医)は、全国の医師約17万人を会員とする職能団体。日本医師会COVID-19有識者会議は、COVID-19への対応を学術的な面から支援する目的で、2020年4月に発足した。同有識者会議の座長は自治医科大の永井良三学長、副座長は早稲田大学の笠貫特命教授(元東京女子医科大学学長)が務めており、Medical Excellence JAPANの近藤達也理事長(医薬品医療機器総合機構名誉理事長)などが委員に入っている。

 今回発表された「新型コロナウイルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」は、COVID-19の治療薬開発についての独自の見解をまとめたもの。緊急提言で同有識者会議は、「医療崩壊も危惧される有事であるため、新薬承認を早めるための事務手続き的な特例処置は誰しも理解するところである。しかし有事だからエビデンスが不十分でも良い、ということには断じてならない」との見解を表明。

 COVID-19に対する治療薬の開発に向けては、適切に設計され、対照群を置いたランダム化比較試験を実施すべきとした上で、「COVID-19のように、重症化例の一方で自然軽快もある未知の疾患を対象とする場合には、症例数の規模がある程度大きな臨床試験が必要となる。さらに、観察研究だけでは有意義な結果を得ることは難しい」と指摘している。

 さらに、「エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速に特例的な承認を行うことなく、十分な科学的エビデンスが得られるまで、臨床試験や適用外使用の枠組みで安全性に留意した投与を継続すべき」とくぎを刺している。緊急提言は、具体的な薬剤名には言及していないものの、富士フイルム富山化学の「アビガン」(ファビピラビル)などの薬剤を念頭に置いたものと思われる。

「結果を真摯に待たなければならない」と副座長

 アビガンについては、国内では、倫理審査委員会の承認、医師の判断、患者の同意を条件として、観察研究の枠組みで適応外使用することが可能になっている(編集部注:本来は、アビガンの適用外使用は、臨床研究法に基づき特定臨床研究に該当するが、厚生労働省は、アビガンなどの投与を通常の診療行為と解釈し、観察研究の扱いとしている)。その結果、2020年4月末までに、アビガンは1100カ所の医療機関で2194例に投与されている。

 それと並行して、藤田医科大学の主導により、無症状または軽症のCOVID-19の患者86例を対象に、アビガンを投与する臨床研究(第2相相当)が実施されている(臨床研究実施計画番号:jRCTs041190120)。さらに、富士フイルム富山化学は、重篤ではない肺炎を合併したCOVID-19の患者96例(当初の目標)を対象に、アビガンまたはプラセボを投与する第3相の治験(単盲検ランダム化多施設共同比較試験、国内の臨床試験のデータベースの登録番号:JapicCTI-205238)が進行中。

 こうした中、政府は、治験に限らず、前述した観察研究や臨床研究などで有効性が認められれば、2020年5月中にも、アビガンを一部変更承認する方針を示している。

 2020年5月20日、日本医師会の記者会見に登壇した同有識者会議の笠貫副座長は、「アビガンには国民の期待が大きくなっているが、感染拡大が抑えられてきて患者数が減っていく中で、科学的な根拠に基づき、『有効で安全だ』と言える結果がいつ得られるかは現時点では分からない。どういう結果が出るのか、いつ出るのかは真摯に待たなければならない、というのが今回の提言の趣旨だ」と説明し、緊急提言の背景に、アビガンへの過剰な期待があることを示唆した。

 笠貫副座長によれば、緊急提言に向けて検討を始めたのは、「1週間と少し前のこと」。ただ、同有識者会議が、アビガンの観察研究や藤田医科大による臨床研究、富士フイルム富山化学の治験などについて、最新情報を得ているわけではないという。2020年5月20日には、藤田医科大による臨床研究の中間解析で、「有効性の判断には時期尚早」との見解が示されたとの一部報道もあったが、緊急提言は、そうした中間解析の結果を受けたものでもないとした。

 なお、2020年5月20日の記者会見で日本医師会の横倉義武会長は、「笠貫先生がおっしゃったことが全て」と今回の緊急提言に賛同する考えを表明。横倉会長は以前から、COVID-19で重症化しやすい高齢者や基礎疾患のある患者に対して、アビガンをはじめとした抗ウイルス薬の早期投与が重要だと訴えている。その点につい問われた横倉会長は、「プロセスを踏み、観察研究で適応外使用で使うべきだと考えている」とコメントし、現段階で承認を要望しているわけではないことを示唆した。

 もっとも、「COVID-19の患者を治療する医療機関が限られる中、観察研究で相当数の医療機関がアビガンを投与できるようになっている」とある業界関係者は指摘する。観察研究や臨床研究で劇的な有効性が認められれば別だが、そうでなければ、ランダム化比較試験である富士フイルム富山化学の治験の結果を待つ必要がある。しかし、患者数が減少傾向にある中で、「プラセボを投与される可能性もある、富士フイルム富山化学の治験の患者組み入れがどこまで進むか」と懸念する声も出ている。

 世界的に、エビデンスに基づいて有効性が確認された治療薬が求められる中、国内では、「アビガンを観察研究で投与できる仕組み」によって、「アビガンのエビデンスの蓄積」に時間がかかる事態になっているともいえそうだ。

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 日経バイオテクと日経メディカルでは、2020年5月30日(土)10:00~12:30に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)征圧への道」と題するオンラインセミナーを実施します。医療崩壊を防ぎながら、経済活動を速やかに再開するのはどうしたら良いのか。医療とバイオテクノロジーの専門誌記者がCOVID-19治療薬やワクチンの開発動向を踏まえながら、抗体検査など最新の検査技術についても解説します。当日は、米シリコンバレーから日経BPシリコンバレー支局長の市嶋洋平や、Stanford大学の西村俊彦ディレクター(Stanford Laboratory for Drug, Device Development & Regulatory Science:SLDDDRS)もオンラインで生出演し、現地の最新情報も伝えていただく予定です。

会場  Zoomを使ったウェブ配信セミナー
受講料 2000円(税別)
定員 500名(上限)
主催 日経メディカル、日経バイオテク
申し込みはhttps://www.nikkeibp.co.jp/seminar/atcl/med/200530/