ウイルスの封じ込めのためにも検査体制の拡充が求められている(画像:123RF)

 臨床用検査機器や検査薬を手掛ける米Ortho Clinical Diagnostics社は2020年4月25日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)について2種類の抗体検査試薬が米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可(EUA)を得たと発表した。既に米国などで出荷が始まっており、今後は大量生産体制を整備していく。日本国内では5月下旬から研究用試薬として売り出す。

 Ortho社の抗体検査試薬は特異度が100%なので、SARS-CoV-2に対する抗体を持っていない人(ウイルスに対する免疫を獲得していない人)が間違って陽性になることがない。同社でチーフ・イノベーション・オフィサーを務めるChockalingam Palaniappan氏は本誌(日経バイオテク)の取材に対し「2種類の製品ともFDAによる徹底的な審査を受けており、100%の特異性で承認されている」と語った。新型コロナの出口戦略を考える上で抗体検査の重要性が高まっている。疑陽性がゼロであることが保証された検査試薬が市場に投入された意義は大きいと言える。

 2種類の製品はそれぞれ役割が異なる。「VITROS Anti-SARS-CoV-2 Total抗体検査試薬キット(COVID-19 Total抗体検査試薬)」は、感染初期にウイルスが体内で増殖している際に同時に出現するIgMを含む全ての抗体(IgA、IgM、IgG)を検出する。他の臨床情報と組み合わせることで、患者がウイルスに感染しているかどうかを診断するのに役立つ。もう1つの「VITROS Anti-SARS-CoV-2 IgG抗体検査試薬キット(COVID-19 IgG抗体検査試薬)」は、感染後期から出現するIgGのみを検出する。患者が回復途中もしくは軽快した後にも体内に残り続けるIgGのみを判別するので、患者がウイルスに対して免疫を持っているかどうかを判断できる。

 両試薬はOrtho社の全自動免疫検査機器「VITROS」シリーズに最適化されている。患者の静脈から血液を採取し、遠心分離などの前処理をした後に専用試薬を混ぜて機器にセットすれば、1時間ほどで結果が得られる。1時間に150テスト分が処理できて、1日8時間稼働させルと仮定すると、年間で9000万人分の検査が可能という。「VITROS」シリーズは米国内では1000以上の病院や検査センターに、日本でもおよそ250カ所に設置されている。既に医療機関で稼働しているアセットを活用することで、検査体制を迅速に整備することができる。

抗原はスパイク蛋白質

 基本的なアッセイはELISA法に基づいている。抗原はウイルスの表面に突き出しているスパイク蛋白質だ。ウエルに固定化された抗原が血液中にある特異抗体と結合すれば、化学発光することで測定する。Ortho社は交叉反応性(特異性)を測定するために、2018年より以前に保存されていた400以上の血液検体(全て陰性)を使って、特異度が100%であることが実証できたとしている。

 COVID-19患者の血液サンプルもテストされた。Palaniappan氏は、「最初に35人から45人のCOVID-19患者の血液をテストして、疾患の初期から疾患の進行に至るまでのサンプルで抗体の存在を測定した。私たちのテストは患者のCOVID-19抗体を確実に検出した」とコメントしている。ただ、同社は感度が100%であることは保証していない。ウイルスに感染した後に特異抗体の産生量(抗体価)が上昇してくるかどうかは個人によって異なるためだ。

 Ortho Clinical Diagnostics社は1939年に米Johnson & Johnson社の事業部門として発足した。現在、世界130カ国で事業を展開しており、従業員は約4400人。病院、血液センター、検査センターなどに臨床検査用機器や診断薬を提供している。2019年の売り上げ規模は18億ドルだ。