COVID-19の収束シナリオとその後の社会、経済について分析する寄稿の第4回⽬は、前回紹介した感染収束のシナリオをベースにしながら、経済活動の回復に関する4つのシナリオについて触れたい。

 COVID-19の収束には集団免疫が必要で、「ワクチンの早期開発」「集団免疫の獲得」の成否によってシナリオが3つに分かれることを前回説明した。しかし経済活動の回復については要素がもう1つ加わる。COVID-19が収束していない中では、「一定の経済活動を許容しながら感染をコントロールしていく」のか、あるいは「感染制御のために強い経済活動への制限をかける」のか、どちらかを選択しなければならないからだ。

 そうした視点で分岐を新たに加えると、経済回復のシナリオは図7の通り4つに整理される。最も明るいシナリオ(アップサイド)では1、2年で収束し経済がV字回復するが、最も暗いシナリオ(ダウンサイド2)では収束前に経済が崩壊してしまう。

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経済活動の強い規制が大きな分岐点に

 まず、ワクチンが今後1、2年の間に早期開発された場合を考えたい。この場合、感染者増加による移動制限などが断続的に発生する可能性があるものの、ワクチンが完成するまでの1、2年間のみであり、経済活動は比較的短期間の制限で済む。そのため、倒産・廃業に追い込まれる企業数は最小限に抑えられ、経済的ダメージも短期で底を迎える。感染収束後は、社会システムの変革が無くともCOVID-19流行前と同様の経済活動が戻り、1、2年でV字回復すると想定される(アップサイド)。

 ではワクチン開発が成功しなかった場合はどうだろうか。この場合、自然感染の制御をしながら一定の経済活動が可能かどうかで大きくシナリオが分岐する。もし都市封鎖や強い外出自粛を行わずに緩い制限で感染制御が可能となれば、経済活動は一定の範囲で再開し、一部の業種を除いて徐々に回復に向かっていくことが期待できる。

 その回復スピードは、自然感染で得られる免疫の有効性によって左右される。ウイルスに一度感染した人が再感染しないのであれば、徐々に集団免疫が形成される。治療薬の登場や重症化メカニズムの解明による重症化の抑制、医療資源の拡大も見込まれるため、一定の患者増加が許容されるようになる。よって、自由な活動の範囲を徐々に拡大させることが可能となり、3年から5年で集団免疫が獲得されたときには、経済活動が回復する(ベース)。

 一方、免疫の減弱化やウイルス変異による再感染が高率で起きる場合、集団免疫が長期にわたって獲得できない。ベースシナリオと比較して経済活動の制限期間が長くなってしまい、経済停滞の長期化が予想される。常に感染リスクにさらされた状態に適応した社会システムが必要だが、その構築は短期間では難しく、そのため経済活動が完全に回復し、新たな社会システムの中で経済が成長を始めるまでには5年以上かかると推察される(ダウンサイド1)。

強い制限が続く場合は経済が崩壊する懸念も

 さらに、緩い制限では制御できず、都市封鎖や強い自粛要請などの強い制限を要する場合は、一定の経済活動が行えるまで感染者を減らすことが優先される。それでも経済に深刻なダメージを与える前に患者数が十分に減れば、一定の制限下で経済活動が再開可能となる。この状態でベース(感染収束)またはダウンサイド1(新たな社会システムの構築)に進むことができれば、経済回復が期待できる。しかし、もし強い経済活動の制限と解除を繰り返すような事態になると、徐々に経済へのダメージが蓄積してしまい、元に戻らない可能性がある(ダウンサイド2)。

 ダウンサイド2のようなシナリオは、何としても避けなければならない。一定の経済活動を続けながら感染制御が可能な体制を構築するためには、有効な治療薬の開発による重症化抑制や医療資源の拡大が急務となる。

 次回以降は、このような経済回復シナリオに基づき、短期的なインパクトと中長期的な「Withコロナ」「Postコロナ」の世界観・価値観について考察したい。