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(画像:123RF)

 NECは、2020年4月23日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の予防用ワクチンの開発に向け、独自の人工知能(AI)を活用し、ワクチンに適したエピトープを複数選別する技術を開発した。NEC OncoImmunity社(2019年7月にNECが買収)とNEC欧州研究所の研究チームによるもので、研究成果は、プレプリントのbioRχiv誌に公開された。

 研究チームは、NECとNEC OncoImmunity社のAIによる予測技術を活用し、予防用ワクチンの設計を行った。具体的には、公開されている新型コロナウイルスの数千種類のゲノムデータを参照。新型コロナウイルスの蛋白質(遺伝子)のアミノ酸配列の中から、ヒト主要組織適合性遺伝子複合体(MHCクラスIとMHCクラスII)との結合能、エピトープが細胞表面に提示されるかどうか、キラーT細胞の活性を高めやすいかどうかなどを指標とし、AIで免疫活性能の高いと思われるエピトープ(アミノ酸配列)のホットスポットを同定した(ホットスポット解析)。

 その上で、変異が生じやすいにある領域にあるエピトープや、正常細胞に類似の配列があるエピトープを除外。さらに、残ったエピトープの中から、頻度の高い100種のHLA型(A、B、DR)をカバーできるエピトープの組み合わせを、AIで計算した(ポピュレーション解析)。その結果、「スパイク蛋白質など、数個の蛋白質(遺伝子)にある、4つ、5つ程度の領域がエピトープとして有用なのではないかとの結果を得た」(AI創薬事業部の北村哲事業部長)。

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現状、新型コロナウイルスに対して開発されているワクチンの多くは、スパイク蛋白質をコードする配列を導入したmRNAやベクター、または、スパイク蛋白質自身を接種するものが多い。それに対して、NECが開発したエピトープの選別技術を活用して開発されるワクチンには、幾つかの蛋白質に由来する複数のエピトープが含まれているイメージだ。(図提供:NEC)

 AIによる予測技術は、NECが開発を進めている個別化がんワクチンの設計に用いられているもの。上記のような流れで選別した、複数のエピトープを含むワクチンを接種することで、主に、宿主のキラーT細胞を活性化し、ウイルス感染細胞への攻撃を誘導しようというわけだ。「また、ウイルス変異に強く、免疫系の副作用を抑える特徴も持たせられると考えている」(AI創薬事業部の山形尚子シニアマネージャー)。エピトープの選別に当たっては、「極力、B細胞による抗体産生にも有用なものを選ぼうとしている」(北村事業部長)という。

 NECは今後、ワクチンの研究開発を手掛ける製薬企業と協業し、新型コロナウイルスの予防用ワクチンの抗原の選定に、今回のAIによる予測技術を活用したい考え。同社は、「mRNAベースやウイルスベクター、プラスミドDNAを用いたものなど、新型コロナウイルスに対しては、多様なモダリティのワクチンが開発されているが、我々の技術はそうした幾つものモダリティに適用可能だ。実際に協業するとなれば、協業先のモダリティや投与方法に適したものに設計し直し、最新のゲノムデータをベースとして、改めてエピトープを選別することになるだろう」と北村事業部長は話していた。