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 米Pfizer社は2020年4月9日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止に向けて他社や研究機関と対応を連携している開発プログラムについて、進捗状況を報告した。また、同年3月にドイツBioNTech社と合意後に即時着手したCOVID-19予防ワクチンの共同開発について、正式決定した契約内容を明らかにした。

 Pfizer社は、3月13日にCOVID-19拡大防止に対応する開発協力を製薬やバイオテク企業、研究機関など関係者に呼び掛けて以来、同社が提示した情報共有や人材、製造協力などに関する5項目の要綱に従って計画を推進してきた。約1カ月が経過し、同社が抗ウイルス薬や予防ワクチンの開発、既存薬転用の検討などを進める中で、現時点で分かっていること、今後の具体的な計画を次のように報告している。

(1)SARS-CoV-2に有望な抗ウイルス薬候補はプロテアーゼ阻害薬

 Pfizer社は、抗ウイルス薬の候補化合物スクリーニングを行い、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の3C-like(3CL)プロテアーゼを標的とする阻害化合物のリード候補と類縁体を同定した。今後、解析データに基づき前臨床の確証実験を行い、作用特性や静注経路での投与適用性など、必要な検証作業を進める。結果次第では、臨床試験の開始を予想より2カ月から3カ月前倒しして、2020年第3四半期に開始できるように準備を加速する。

(2)COVID-19のmRNAワクチン候補BNT162は2020年4月末に臨床試験開始予定

 Pfizer社がBioNTech社と2020年3月に提携合意したmRNAベースのワクチン候補BNT162の開発プログラムでは、米国と欧州の複数機関を実施施設として両社共同で臨床試験を進める計画で、各国当局からの試験実施承認を経て、早ければ4月末までには開始する。さらに、2020年末までには数百万回分の試験薬を供給できるようにし、そして2021年内には、億単位の投与回数分を確保できる製造規模に拡大し、実用化に向けた準備を加速する。

(3)抗SARS-CoV-2薬候補としてのアジスロマイシンについて情報共有

 Pfizer社では、マクロライド系抗生物質アジスロマイシンをSARS-CoV-2に対する抗ウイルス薬として活用できるかどうか、既に報告されているin vitroデータや臨床データを解析、評価している。それに基づく一定の結論が得られたとして、Clinical Pharmacology and Therapeutics誌に発表することが決まったため、そのオープンアクセスのレビューを通じて情報を共有し、今後のCOVID-19治療研究への活用を促す。

(4)肺炎球菌とSARS-CoV-2の関係性から医療現場でのCOVID-19リスクを実態調査

 Pfizer社は英Liverpool School of Tropical Medicineと協力し、肺炎レンサ球菌とSARS-CoV-2との相互作用の視点から感染リスクや重症化リスクの実態を明らかにするための2本の試験(SAFER、FASTER)を開始した。SAFER試験では、Royal Liverpool Hospitalの最前線で働く医療従事者100人を対象としてSARS-CoV-2の感染率、肺炎球菌のコロニー形成動態を調べる。FASTER試験では、同病院でコロナウイルス感染が疑われる感染症病棟の入院患者400例を登録し、SARS-CoV-2感染に起因する肺炎球菌肺炎の発症リスク、また、SARS-CoV-2と肺炎球菌の双方に同時感染した場合の重症化リスクを解析する。今後数カ月で試験データを公表する。

(5)トファシチニブの肺炎適応可能性を評価中

 Pfizer社が開発したJAK阻害薬「ゼルヤンツ」(トファシチニブ)がSARS-CoV-2感染に伴う間質性肺炎の治療薬になり得るかを評価するため、第2相研究者主導研究としてイタリアUniversita Politecnica delle Marcheで患者登録を開始した。同社資金で行われている目標登録50例の単群前向き非盲検試験で、関節リウマチや潰瘍性大腸炎に対する抗炎症薬として承認されているトファシチニブの肺炎に対する効果を判定する。1日2回2週間の経口投与で、動脈や肺胞内の酸素分圧を指標とした人工呼吸器の必要性を主要評価項目とする。

 トファシチニブの重症肺炎への適応拡大については、Pfizer社は他の研究機関とも協力し、新たな試験計画を協議している。COVID-19に伴う肺胞の炎症に対し、免疫関連炎症反応に関与するサイトカインのシグナル阻害というJAK阻害薬の作用メカニズムが症状緩和に寄与し、結果的に急性呼吸窮迫症候群を回避すると想定している。

 なお、BioNTech社とのCOVID-19予防ワクチンBNT162の共同開発契約では、Pfizer社が支払う一時金は、現金7200万ドル(約77億円)と株式投資1億1300万ドル(約122億円)を合わせて、1億8500万ドル(約199億円)に決まった。BioNTech社が受け取る対価の総額は7億4800万ドル(約805億円)で、そのうち開発の進捗に応じたマイルストーンは最大で5億6300万ドル(約606億円)の見込み。開発費用は両社が折半するが、Pfizer社が最初100%を支出し、BNT162の商用化段階でそのうちの50%をBioNTech社が返金することで合意した。

 BioNTech社は、mRNAワクチンBNT162の臨床開発で使用する試験薬を、GMP基準を満たす自社の製造施設から供給する。Pfizer社は、パンデミックに対応する製造規模の拡大に協力するとともに、中国を除く全世界での承認申請や商用化でも協力する。中国では、BioNTech社が既に中国Fosun Pharma社と提携契約を結んでいる。