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 米Cedars-SinaiのJonathan D. Grein氏や国立国際医療研究センターの大曲貴夫氏らの国際共同研究チームは、2020年4月10日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者53例に対し、人道的使用(コンパッショネートユース)の枠組みでレムデシビルを投与した結果をNEJM誌オンライン版に発表した。

 レムデシビルは、米Gilead Sciences社がエボラ出血熱を対象に開発を進めていた低分子化合物で、ウイルスのRNAポリメラーゼを阻害する作用を有する。これまでに承認された国・地域は無い。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対しては、in vitroの実験で、ウイルスの活性を抑えることが明らかになっており、世界中で複数の臨床試験が実施されている。

 今回、人道的使用の対象となったのは、新型コロナウイルス陽性が確認され、COIVID-19で入院し、酸素吸入や人工呼吸など呼吸のサポートを受けていても酸素飽和度(SpO2)が94%以下だった重症の患者。レムデシビルは、1日目は200mg、2日目以降は100mg、計10日間静注された。医師の裁量により、対症療法も実施された。今回の論文では、2020年1月25日から3月7日の期間中にレムデシビルの投与を受け、かつ、臨床データが収集できた患者の予後などを解析した。

 当該期間、人道的使用の枠組みでレムデシビルの投与を受けた患者は、合計61例に上った。ただし、そのうち7例は治療後の臨床データが無く、1例は用法・用量に誤りがあったため、研究チームは53例の臨床データを解析した。内訳は、米国の22例、欧州またはカナダの22例、日本の9例。治療前、30例(57%)の患者は人工呼吸を、4例(8%)は体外式膜型人工肺(ECMO)による治療を受けていた。

 フォローアップ期間の中央値である18日間に、53例のうち36例(68%)の患者が、呼吸のサポート度合いに改善が認められた。具体的には、人工呼吸を受けていた30例のうち17例が抜管に至った。また、25例(47%)が退院に至った。

 一方、53例のうち7例(13%)は死亡した。ECMOまたは人工呼吸を受けていた34例のうち、死亡したのは6例で、死亡率は18%。ECMOや人工呼吸を受けていなかった19例のうち、死亡したのは1例で、死亡率は5%だった。

 今回の人道的使用は、デザインが設計された臨床試験の結果ではなく、比較対照群などが設定されていないことから、これらの結果を持ってレムデシビルの有効性を論じることは難しい。実際、研究チームも、今回はあくまでも人道的使用であり、有効性の検証には、現在進行中のレムデシビルのランダム化プラセボ対照比較試験の結果が待たれるとしている。

 ただ、今回の結果から、ECMOなどの人工呼吸を受けていた重篤な患者の死亡率が、そうした治療を受けていない重症の患者の死亡率よりも高いことが示唆されたとはいえそうだ。