(提供:富士フイルム)

 富士フイルムは、2020年4月9日、米国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象に「アビガン」(ファビピラビル)の第2相臨床試験(企業治験)を始めると発表した。COVID-19に対して、ファビピラビルの企業治験を行うのは、日本に次いで2カ国目。第2相臨床試験は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染が認められ、ファビピラビルの経口投与が可能な入院患者を対象とする。

 米国で実施する第2相臨床試験(米国の臨床試験のデータベースは4月9日時点で未登録)は、非盲検ランダム化多施設共同比較試験で、米Brigham and Women's Hospital、米Massachusetts General Hospital、米University of Massachusetts Medical Schoolの3施設で実施する。

 第2相臨床試験の対象は、SARS-CoV-2への感染が認められ、ファビピラビルの経口投与が可能なCOVID-19の入院患者。目標症例数は50例。人工呼吸器を装着するなど重篤な患者は経口投与が難しいと考えられることから、事実上、重篤ではない肺炎などを呈した入院患者が対象になるとみられる。被験者のうち、25例を抗菌薬や輸液などの標準治療にファビピラビルを上乗せする群に、25例を抗菌薬や輸液などの標準治療を行う群に割り付け、観察期間である46日間、ファビピラビルの有効性、安全性を評価する。

 用法・用量は、1日目のみ1回1800mg×2回、2日目以降は1回1000mg×2回で、最長14日間、経口投与する。富士フイルム富山化学が、COVID-19を対象に日本でスタートさせたファビピラビルの第3相臨床試験の用法・用量は、1日目のみ1回1800mg×2回、2日目以降は1回800mg×2回で、最長14日間、経口投与するものなので、それに比べると投与量が引き上げられた格好だ。

 主要評価項目は、ウイルスが陰性化するまでに要する期間。具体的には、投与開始からSARS-CoV-2のウイルス量をモニタリングし、RT-PCR検査でウイルスの陰性化が確認されるまでに要する日数を、ファビピラビル群と標準治療のみの群で比較する。

 富士フイルムは「今週中にも米国で第2相臨床試験を開始し、2020年6月末までに終える予定」(広報担当者)。ただ、米国ではファビピラビルは未承認であり、米国で承認申請を行うには、より大規模な患者数を対象とした第3相臨床試験を実施して、有効性を確認することが必要になるとみられる。そのため、「第2相臨床試験を完了後、データを解析して、できるだけ短期間で第3相臨床試験に移行できれば」と広報担当者は話していた。

 ファビピラビルは、日本で2014年3月、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症を効能・効果として承認された。ただし、既存の抗インフルエンザ薬には無い作用メカニズムを有していることや、動物実験の結果から催奇形性のリスクが懸念されることなどから、ファビピラビルは「既存の抗インフルエンザ薬に耐性を有し、かつ高病原性のインフルエンザ感染症のまん延に備える医薬品」と位置付けられ、厚生労働大臣の要請が無い限りは、製造などを行わないことなどの承認条件が課されている。なお、日本以外では、承認されている国・地域は無い。

 ファビピラビルの作用機序は、宿主(ヒト)の細胞でリボシル三リン酸体(ファビピラビルRTP)に代謝され、1本鎖マイナス鎖RNAウイルスであるインフルエンザウイルスの複製に関与するRNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害すると考えられている。加えて、これまでに様々な研究が実施され、インフルエンザウイルス以外にも、エボラ出血熱やマールブルグ病など複数の感染症へ有効性を示す可能性が示唆されてきた。

 世界的に流行が広がっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、1本鎖プラス鎖RNAウイルスだが、同ウイルスに対しても、ファビピラビルがRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害するのではないかと期待され、中国や日本で複数の臨床試験や臨床研究、観察研究が実施されているところだ。ただし、ファビピラビルの物質特許は2019年に失効しており、現在は製造特許だけが有効な状況。そのため、中国では中国企業がファビピラビルの後発医薬品を製造・提供している。