MSDのOosthuizen社長

 米Merck社の日本法人であるMSDは2020年4月6日、年次定例記者会見を開催した。会見の質疑応答の中で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する取り組みについて問われ、副社長執行役員グローバル研究開発本部長の白沢博満氏は、「公衆衛生や感染症に取り組む企業として、COVID-19に対するワクチン、治療薬の開発には優先順位を上げて取り組んでいる」などと説明した。

 説明会ではJannie Oosthuizen(ヤニー・ウェストハイゼン)代表取締役社長が、2019年のMerck社の全世界売上高が11%増(為替の影響を除くと13%増)の468億ドルとなったことを紹介。特に医療用医薬品で、KEYTRUDA、GARDASIL/GARDASIL9、LENVIMA、LYNPARZA、BRIDIONの成長がけん引したと説明した。

 国内の売上高は対前年比7.9%増の3746億円となった。増収の要因は、抗がん薬「キイトルーダ」は適応拡大により6がん種で7つの適応を獲得するに至り売上高が大きく拡大したこと、2018年に発売した抗サイトメガロウイルス化学療法薬の「プレバイミス」と脂質異常症治療薬の「アトーゼット」、2019年に発売した脂質異常症治療薬の「ロスーゼット」の売り上げが寄与したこと、また、新製品などは無かったもののプライマリーケア領域製品が堅調に推移したことなどが挙げられる。

 2019年から2020年にかけては、新薬の承認や適応拡大の承認が相次いでいる。まず、2019年1月にはβ-ラクタマーゼ阻害薬配合抗生物質「ザバクザ」が膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍の適応で承認を取得。その後同年12月には敗血症と肺炎の適応を追加した。前出のロスーゼットは2019年3月、HIV1感染症治療薬の「ビフェルトロ」と真菌症治療薬の「ノクサフィル」は2020年1月に承認を取得した。適応拡大については、C型肝炎治療薬の「レベトール」が2019年1月に前治療歴を有するC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善の適応で、アルキル化薬の「テモダール」は2月に再発または難治性のユーイング肉腫の適応で、アストラゼネカと共同販促している「リムパーザ」は6月にBRCA遺伝子変異陽性卵巣がんの初回治療後の維持療法の適応で、抗PD1抗体の「キイトルーダ」は12月に根治切除不能または転移性の腎細胞がんと、再発または遠隔転移を有する頭頸部がんの適応で承認を得ている。

 日本での開発状況については、第2相臨床試験にキイトルーダとリムパーザの適応拡大で計2プログラムを紹介。第3相ではキイトルーダの適応拡大6プロジェクト、エーザイと共同開発を行っているレンビマで3プロジェクトの他、肺炎球菌結合型ワクチンV-114、抗菌薬の合剤でカルバペネム耐性菌に対する効果が期待されるMK-7655A、難治性または原因不明の慢性咳嗽の治療薬として開発中の経口投与のP2X3受容体選択的阻害薬gefapixant(MK-7264)を紹介した。さらに、申請中の段階に、9価のHPVワクチン、キイトルーダの胃がん、食道がんなどの適応拡大があることを紹介した上で、「開発中の品目が順調に進んでビジネスが進展することを確信している」と白沢氏は述べた。

 また、Merck社が2020年2月に婦人科疾患と伝統的ブランドの医薬品、バイオシミラー事業を切り離すと発表。その後、ORGANONの社名とする方針を発表していたが、3月末に日本でもオルガノンという社名の会社を登記したことを明らかにした。オルガノンが継承するのは以下の通り。婦人科疾患では「マーベロン」「ガニレスト」、循環器の「ゼチーア」「プレミネント」「ニューロタン」、呼吸器・皮膚科の「シングレア」「プロペシア」などのブランドがオルガノンに移管される。分社化は2021年上半期中に完了する見込み。オルガノンの分社化に伴い、MSDではがんとワクチン、感染症を中心とする病院向け製品と、動物薬に事業を集中する。

 また、同社ではIT系の技術革新を背景に会社全体の組織運営体制を見直し、「アジャイル組織」に変革を進めていることを紹介した。アジャイル組織は部門横断的なチームによりスピーディーに事業を進めることを目的としたもの。Oosthuizen社長は、「アジャイル組織に移行してから、成果物を出すスピードや、学習して改善するスピードが速くなっている」などと語った。