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 米Pittsburgh大学医学部は、2020年4月2日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク(S)蛋白質を抗原とし、マイクロニードルパッチで投与するワクチン候補を開発し、マウスで抗体価の上昇を確認したと、2020年4月1日、EBioMedicine誌のオンライン版に報告した。

 同大の研究者らは、SARS-CoV-2との類似性が高いSARS-CoVとMERS-CoVに関する研究を行ってきた経緯があり、コロナウイルスに対する免疫反応の誘導において重要なスパイク蛋白質について、豊富な情報を持っている。今回、こうした経験が速やかな新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン候補の開発に結び付いた。

 先に臨床試験が開始された、mRNAベースのワクチンとは異なり、Pittsburgh大のワクチン開発には、オーソドックスなアプローチが用いられている。研究者らは以前から、MERS-CoVに対するワクチンの設計に取り組んできた。最終的に抗原として用いたのは、コドン最適化を行った、MERSスパイク蛋白質のS1サブユニットと三量体化ドメインを融合した分子だ。別バージョンとして、TLR4刺激因子としてフラジェリンを、またはTLR5刺激因子としてRS09を組み込んだ融合分子も作製した。

 この抗原分子の送達に用いたのは、マイクロニードルパッチだ。糖と蛋白質から成るマイクロニードルアレイ(MNA)は、皮膚に貼ると溶解し、含まれている抗原分子が浸透して、強力な免疫を誘導する。貼り付けても痛みは無いという。マウスモデルにMNA MERS-CoVワクチンを皮下注射した、または、マイクロニードルパッチを用いて投与し、中和抗体が誘導されるかどうかを検討した実験では、少なくとも1年後まで、十分な量の中和抗体が検出できた。

 研究者らは、SARS-CoV-2のS1サブユニットのシーケンスが同定されてから4週間以内に、MERS-CoVの場合と同様の方法でSARS-CoV-2ワクチン候補を得ることができた。マイクロニードルパッチ状のSARS-CoV-2ワクチンをマウスに適用したところ2週間で中和抗体が誘導されたという。

 マイクロニードルワクチンは、使い捨て注射器などの滅菌に用いるガンマ線照射を行っても、その効果を維持していた。この特性は、ヒトを対象とする製品化において重要だ。また、スパイク蛋白質の製造には細胞を用いるため、スケールアップは容易だ。精製とマイクロニードル化も工業規模で行える上に、完成品は室温での輸送と保管が可能だという。

 現在研究者らは米食品医薬品局(FDA)に臨床試験の開始許可を申請するための準備を進めており、今後数カ月以内に第1相臨床試験を開始できると予想している。臨床試験終了までには通常なら1年以上かかるが、これまでに経験したことの無い事態であるため、商品化までの過程が加速される可能性はあると研究者たちは考えている。