新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発について各国規制当局は認識と課題を共有した(画像:123RF)

 主要各国の医薬品規制当局が加盟する国際的支援組織International Coalition of Medicines Regulatory Authorities(ICMRA)は、2020年3月18日、17カ国の当局代表者に世界保健機関(WHO)、および欧州委員会(EC)の専門家を交えたテレビ会議を開き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発についての認識と課題を共有し、統一的な規制に関する見解をまとめた。

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 同会議は、欧州医薬品庁(EMA)と米食品医薬品局(FDA)が共同で議長を務めた。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的な感染増強で、ワクチン開発の緊急性を確認した上で、初めてヒトに投与する臨床試験(第1相試験)に入る前の段階における課題を明確にした。ワクチン候補は、開発者がそれぞれ採用する技術を用いて製造するDNAワクチンやRNAワクチンなど、様々な種類が実用化に向けて開発される。同会議では、臨床試験開始前に必要な前臨床データや予備データのタイプと範囲、ワクチン候補を原因として想定される臨床試験開始前の感染リスクへの対応という2つの議題について、参加者は大枠で意見が一致した。

 まず、臨床試験開始の正当性を示す前臨床・予備的データの要件は以下のとおりとした。

(1)前臨床・予備データのタイプは、ワクチン構造物の構成とその有用性を支持するデータ、並びに類縁ワクチンに関するデータに依拠する。
(2)SARS-CoV-2ワクチン候補の開発・製造に、科学的に検証されている既存の基盤技術を用いることは、開発の加速に貢献すると考えられ、既承認、未承認を問わずワクチン開発で十分な実績がある基盤技術を用いる場合、その技術で製造された既存ワクチンの毒性データや臨床データを活用することができる。その際、通常は臨床試験前に行うべき毒性試験などの前臨床試験を不要とする合理的根拠を提示する必要がある。そして、SARS-CoV-2ワクチン候補の構造物の安全性を担保するCMC情報を準備する。
(3)全てのSARS-CoV-2ワクチン候補について、動物実験データと免疫応答の特徴を明らかにする。チャレンジ感染させる動物モデルでの有効性を証明する必要はない。

 また、ワクチン候補による感染増強の理論的危険性に関する共通の見解は以下のとおりとした。

(1)SARS-CoV-2ワクチンの開発は急務であるが、臨床試験に参加する被験者がSARS-CoV-2感染という不合理な危険に曝されることがないよう、リスク低減戦略の重要性を認識した。
(2)臨床試験開始前に起こるワクチン候補による感染増強は、特殊事態と認識する。その際、確立されている適切な動物モデルや科学的手法に従い、事態を正確に把握しなければならない。そうした特殊事態に対する知見や分析に限界があったとしても、ヒトで起こる可能性を予測するための動物実験を遂行し、その評価に基づく理解を重視する。
(3)個々のワクチン候補の開発で、動物モデルとして非ヒト霊長類の利用可能性には限界があり、臨床開発を遅延させる可能性を認識する必要がある。
(4)ワクチン候補による感染増強への事前対応では、固有のワクチン構造、Th1優位の免疫応答や中和抗体力価といった免疫応答の明らかになっているデータ、臨床試験計画を総合的に考慮する。
(5)動物実験未完の状態で臨床試験開始を決定する際の要件、チャレンジ感染の動物実験を必要とする、あるいは免疫病理学的データを必要とするワクチン候補の種類については、満場一致ではないが参加者が大筋で合意した。
(6)臨床試験開始前のワクチン候補による感染増強リスク低減戦略を組み立てる目的は、臨床試験で健常な若齢者を登録し、それら被験者が理論上の感染リスクを理解、納得できること、安全性評価と頻回のモニタリングを実行するためのインフォームドコンセントを取得することである。
(7)各国規制当局は、動物実験と臨床試験のデータを共有するための枠組みを構築する必要があると表明した。当局間の包括的な連携体制を通して、実施されている試験の結果に基づき、適時に警告を発することができる仕組みを整える。