アンジェス山田社長、新型コロナのDNAワクチンの開発状況を明らかに

動物実験には何を使う?抗体依存性感染増強のリスク評価は?
(2020.03.27 08:00)
久保田文
アンジェスの山田英社長

 アンジェスは、2020年3月26日、大阪大学と共同開発している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染を予防するためのDNAワクチンについて、in vivoでの評価をスタートさせたと発表した。ワクチンの感染試験に何の動物種を使うのか、世界保健機関(WHO)も懸念を示している、ワクチン接種後の抗体依存性感染増強(Antibody Dependent Enhancement:ADE)のリスクなど、開発中のDNAワクチンについて、アンジェスの山田英社長が本誌(日経バイオテク)の取材に応じた。

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 アンジェスと大阪大学は、プラスミドDNAにSARS-CoV-2がヒト細胞へ感染する際の足掛かりとなるスパイク(S)蛋白質の遺伝子を導入したDNAワクチンを開発中。同ワクチンは、接種後に取り込まれた細胞中でS蛋白質を発現し、S蛋白質を中和するポリクローナル抗体など新型コロナウイルスへの免疫を誘導。感染を予防したり、感染後に発症や重症化を抑えたりすることが期待される。

 アンジェスなどは、SARS-CoV-2のゲノム配列に基づき、S蛋白質の遺伝子を導入したプラスミドDNAを設計。同プラスミドDNAを産生する組換え大腸菌を確立し、GLP試験に使えるDNAワクチンの原薬を製造した。製造は、タカラバイオが実施した。並行して、開発したプラスミドDNAの安全性や有効性を評価するため、in vivo(動物実験)をスタートさせたところだ。今後、動物実験の結果などに基づき、投与方法やアジュバントなどについて検討を進め、非臨床試験を実施して、臨床試験の開始を目指す。

DNAワクチンの投与方法は、皮下注射や筋肉注射などが考えられるが決まっているのか。

 投与方法はまだ決まっていない。マウスに対して、無針注射器を用いてDNAワクチンを投与する実験や、筋肉注射でアルムアジュバントとDNAワクチンを投与する実験を実施し、より抗体価が上昇する投与方法を選択する計画だ。

無針注射、筋肉注射それぞれの場合について、DNAワクチンの作用機序を教えてほしい。

 無針注射の場合は、樹状細胞などに取り込まれたプラスミドDNAから抗原(S蛋白質)が発現して免疫反応を惹起する。筋肉注射の場合は、筋肉細胞でプラスミドDNAから抗原が発現して免疫反応を惹起すると考えている。

in vivoでは、何の動物種を使い、何を評価するのか。

 今のところ、マウスやサルなどにDNAワクチンを接種して、抗体価の上昇など評価することで、有効性の判断材料にしたいと考えている。ワクチンによって産生された抗体が中和抗体であるか否か、感染試験を実施して確認することも検討している。感染試験やサルを用いた暴露試験に関しては、医薬品医療機器総合機構(PMDA)や国立感染症研究所と協議しながら、進めていきたい。

新型コロナウイルスに感受性があると分かっている動物種が存在するのか。

 ヒトACE2を発現し、過去に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因であるSARSコロナウイルス(SARS-CoV)に感受性がある遺伝子組換えマウスが、感染研で作出されていると聞いている。また、フェレットが発現するACE2は、SARSコロナウイルスに感受性があることが分かっており、今回の新型コロナウイルスの感染試験をする際、フェレットをモデル動物に活用できる可能性が示唆されている。また、SARSコロナウイルスはサルでも感染が成立するようだ。感染試験を行うに当たってはさらに精査する必要があるだろう。

新型コロナウイルスワクチンの開発に当たって、WHOや業界関係者は、ワクチン接種によって不十分な免疫(抗体)ができ、その後、ウイルスに自然感染した際にウイルス感染が促進される、ADEが生じるリスクを懸念している。

 ADEは、ウイルスに結合した抗体のFc部分を宿主(ヒト)細胞のFc受容体または補体が認識して、ウイルスを細胞内に引き入れるのを助長する現象だ。この現象は、エボラウイルスでも観察されており、in vitroでも観察できる。ADEのリスクに関するWHOなどの指摘は的を得たものであり、現在、適切にリスクを回避するための説明を行うのは困難だ。

 ただ、ワクチンによって産生される抗体の量に、ADEのリスクが依存するということになると、ワクチン接種を受けたヒトの状態によって、どのようなワクチンでもADEのリスクが避けられないということにもなる。専門家の意見を聞いた上で、開発を進めていきたい。

新型コロナウイルスに対しては、複数の企業・研究機関がmRNAベースのワクチンを開発している。mRNAベースのワクチンに比べた場合の、DNAワクチンの利点についてどのように考えているか。

 mRNAの利点は、細胞に入ってから短時間で抗原が発現すること、間違っても宿主のDNAに挿入されることがないことだろう。ただ、製造期間や開発期間は、プラスミドDNAよりも長くかかるのではないか。

 プラスミドDNAは大腸菌を培養、精製すれば製造できるが、mRNAを大量に製造するのは、それほど簡単ではない。化学合成で作るとなると、長鎖の場合は純度・収量を確保するのが難しいと思う。また、製剤としての安定性、細胞への伝達や細胞内での安定性も問題になるのではないか。

今後の開発スケジュールは。PMDAから助言などを受けているのか。

 現財精査中だ。臨床試験の規模やデザインについては、今後の課題であり、厚生労働省、PMDA、感染研などと協議しながら進めていきたい。

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