新型コロナに挑む(1)

新型コロナウイルスについて今分かっていること

(2020.03.11 08:00)
2020年03月16日号
久保田文

 新型コロナウイルスの感染がじわじわと拡大する中、治療薬やワクチンへのニーズは高まっている。日経バイオテクでは、米国、中国、日本を中心に治療薬やワクチンの研究開発動向を調べた。国内で新型コロナウイルスを検出する検査技術の開発に乗り出した企業の動向も調査した(開発動向がめまぐるしく変化しているため、3月16日号特集をオンラインで先に掲載していきます)。

『日経バイオテク』3/16号特集「新型コロナに挑む」
(1)新型コロナウイルスについて今分かっていること (3/11公開)
(2)世界の治療薬の開発動向 (3/12公開)
既存薬の転用と新薬の開発が同時並行で進行中
(3)国内製薬企業の動向 (3/12公開)
治療薬やワクチンの開発に乗り出す国内企業はごく一部という現実
(4)世界のワクチンの開発動向 (3/13公開)
開発競争が激化する中、不安材料も浮上中
(5)国内の検査技術の開発状況 (3/13公開)
研究用試薬を容認し検査体制の拡充を図った厚労省

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大に歯止めがかからない状況だ。中国国内の新規感染者数は、2 月末からようやく減少傾向に転じたものの、韓国、イタリア、日本、米国などでは感染者や重症者が連日報告されており、じわじわと感染が広がっている。3 月10 日時点で、感染者が確認された国・地域は、アフリカや中南米を含めて100 以上。専門家からは、年単位での戦いになるだろうとの見方も出始めている。

スパイク蛋白質がACE2受容体に結合して侵入

 コロナウイルスは、一本鎖プラス鎖のRNA ウイルスであり、ゲノム(RNA)配列は約30kb。家畜を含め、様々な動物に感染することが知られており、ヒトでは呼吸器感染症を起こす、いわゆる一般的な風邪の原因の1 つとして知られている。また、それとは別に、2002 年から03 年にかけて中国を中心に感染が広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)や、2012 年以降に発生している中東呼吸器症候群(MERS)の原因もコロナウイルスだ。今回の新型コロナウイルスは、そうしたコロナウイルスに続いて同定された。現在のところ、新型コロナウイルスは、ウイルス表面に発現しているスパイク(S)蛋白質が、ヒト細胞上のアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)受容体に結合することで、ヒトの細胞質内へ侵入、感染すると考えられている(図1)。

図1 新型コロナウイルスの基本的な構造
新型コロナウイルスは一本鎖のRNAウイルスであり、ゲノム(RNA)はスパイク(S)蛋白質、エンベロープ(E)蛋白質、膜(M)蛋白質、ヌクレオカプシド(N)蛋白質の4つの遺伝子をコードしている

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者が増えるに従って、その臨床像も明らかになりつつある。これまで発表された複数の論文や症例報告をまとめると、現在のところ、新型コロナウイルスは、主に感染者のせきやくしゃみなどによる飛沫を中心に感染すると考えられている。潜伏期間は今のところ2 日から12 日程度で、症状の無い感染者(無症候性キャリア)であっても感染を広げる可能性が示唆されている。

 発症した感染者の主な症状は、発熱やせき、のどの痛み、倦怠感、呼吸苦などで、約80%が軽症で済む。ただ、重症化のリスクや致死率は、季節性インフルエンザよりも高いとされ、特に高齢者や基礎疾患があると重症化しやすいと考えられている。中国や日本からの報告によれば、初期の症状が軽症であっても、その後、急速に悪化する重症例が少なくないようだ。

 現時点で、COVID-19 への有効性が認められた治療薬は無く、重症例には対症療法が施されている。また、感染を予防したり、重症化を防いだりするワクチンも無い。施設を選ばずどの医療機関でも実施できるような検査技術も国内には無い。そのため世界では(1)COVID-19の患者を治療するための治療薬の開発、(2)新型コロナウイルスへの感染を抑えたり、重症化を防いだりするためのワクチンの開発、(3)より多くの患者を迅速に診断するための検査技術の開発――が急ピッチで進められている状況だ。

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