新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症・重篤例の死亡割合が、レムデシビルとデキサメタゾン、トシリズマブを併用する「RDT療法」の導入によって大幅に改善したことが報告された。日本赤十字社医療センターの出雲雄大氏が、第68回日本化学療法学会総会(2020年9月12~14日)で発表した。

写真1 日本赤十字社医療センターの出雲雄大氏

 出雲氏らは、レムデシビルが承認された6月以降、COVID-19に対する薬剤治療方針を変更。COVID-19重症・重篤例に対しては、レムデシビルとデキサメタゾン、トシリズマブの3剤併用療法(RDT療法、図1)を導入した。レムデシビルには抗ウイルス作用を、デキサメタゾンには抗炎症作用を、さらにトシリズマブには抗サイトカイン作用と抗血栓作用を期待して、このような組み合わせとした。出雲氏は「明らかになってきたCOVID-19の病態1)に対応した併用療法となっている」と解説した。

図1 日赤医療センターのCOVID-19薬剤治療方針
(ファビピラビル・トシリズマブは未承認。出雲氏提供。表1、写真2も)

 では、RDT療法導入前後で治療効果に変化があったのか──。出雲氏らは、この答えを明らかにする目的で、2月11日から8月31日の間、日本赤十字社医療センターで入院加療したCOVID-19症例について後ろ向きに検討した。

 それによると、この間の症例数(陽性者数)は129例で男性が77例(60%)、女性が52例(40%)だった。年齢は45歳(中央値)と比較的若く、2~94歳(平均年齢:48±21歳)と幅があった。

 重症度(NIH分類、表1)は、軽症が30例(23%)、中等症が53例(41%)、重症が24例(19%)、重篤が22例(17%)だった。同センターは東京都救命救急センターとしての機能を担うため、重症や重篤例が多いのが特徴の1つだ。

 このうち、6月以降にRDT療法を受けた重症・重篤例は17例だった。男性が12例(70%)、女性が5例(30%)で、年齢は62歳(中央値、46~86歳)と全体に比べると高齢だった。死亡は1例で、死亡割合は6%だった。

 一方、6月以前のRDT療法なしの重症・重篤例の死亡は29例中9例で、死亡割合は31%だった。

 出雲氏らはこの死亡割合の違いに着目。統計学的な解析を行ったところ、RDT療法群が非RDT療法群よりも有意に死亡割合が低いことが明らかとなった(Fisher's exact test、P=0.04)。両群間で患者背景に差はなく、多変量解析ではRDT療法のオッズ比(OR)は、0.025(95%信頼区間:0.0009-0.68、P=0.03)だった。

表1 米国立衛生研究所(NIH)のCOVID-19重症度分類

 出雲氏は「当センターにおいてレムデシビルと関連があると考えられる有害事象は認められなかった」と指摘。レムデシビルは実地臨床でも安全に使用可能であるとしている。その上で、「RDT療法は実地臨床において重症・重篤患者に有効である」と結論し、今後の併用療法の臨床試験結果が待たれるとまとめた。

 最後に、出雲氏はRDT療法により回復できた重症例の経過を提示(写真2)。RDT療法によって、COVID-19発生直後の手探り状態の治療から脱し、重症・重篤例に対して確かな手応えのある治療ができる段階に至っている、と振り返った。なお、トシリズマブに関しては臨床研究倫理委員会の承認および患者の同意を得て投与していること、およびRDT療法の有用性に関しては現在英語論文にまとめ投稿中であると付け加えた。

写真2  RDT療法により回復できた重症例の経過

■参考文献
1) COVID-19 and therapy with essential oils having antiviral, anti-inflammatory, and immunomodulatory properties. Inflammopharmacology. 2020 Aug 14 : 1–9.doi:10.1007/s10787-020-00744-0 [Epub ahead of print]

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