熊本県や大分県で発生している地震による熊本大学の被災状況が、2016年4月20日までに本誌の取材で分かった。熊本大の建物や実験機器へは様々な影響が生じているものの、遺伝子組換えマウスの国内有数の拠点である熊本大学生命資源研究・支援センターで飼育されているマウスや凍結保存されているES細胞は、無事に維持されていることが明らかになった(震災関連記事のため、フリーで公開します)。

 熊本大は2016年4月19日19時、熊本地震による被害状況を明らかにし、1万979人の学生の安全を確認するとともに、教職員5人が軽傷を負ったと発表した。残りの学生や教職員の安全については、引き続き調査している。

 物的被害としては、五高記念館、化学実験場、工学部研究資料館は立ち入り規制されているが、その他の建物は安全確認作業中。本誌の取材によれば、医学部の研究室や発生医学研究所などで、建物外壁の損傷やひび割れ、漏水が起きていることが分かっている。また、医学部の研究室や発生医学研究所、生命資源研究・支援センターなどでは、質量分析器、次世代シーケンサー(NGS)、フローサイトメトータ、顕微鏡などの数多くの実験機器が転倒、落下。医学部の研究者は「余震も続いており、実験を再開するまでには相当の時間がかかるだろう」と話していた。

 ただし、組換えマウスの拠点である生命資源研究・支援センターの「マウスやES細胞は無事に維持されている」(熊本大広報部)。同センターでは、電気、水道、ガスなどのライフラインが保たれており、今のところ外部への移送などが必要な状況ではないという。同センター以外の大学関連の研究施設でも、4月20日までに電気、水道とも復旧した。ガスは依然として、一部の大学関連の研究施設で止まっているもようだ。

 文部科学省研究振興局学術機関課によれば、熊本大の研究施設の建物に亀裂が入っていることや、破損した実験機器があることから「今後復旧に必要な予算を措置する」という。

 なお、生命資源研究・支援センターの実験動物に関しては、2016年4月19日、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長が首相官邸で安倍晋三首相へ科学技術予算の拡充の申し入れを行った際、熊本大の実験動物の保護などを訴えていた。