【GreenInnovation Vol.371】

アグリバイオ最新情報【2018年12月】のハイライト

(2019.01.10 08:00)
アグリバイオ最新情報【2018年12月】のハイライト
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 2016年に、過去にノーベル賞を受賞した科学者110人がグリーンピースの展開している「遺伝子組換え(GMO)食品」反対のキャンペーンに対して、科学的根拠がないと非難する署名を共同で発表した。存命中のノーベル賞受賞者3分の1以上が署名するという大規模なメッセージで、日本からは天野浩教授が署名している。このことは先年お知らせしたので、記憶している方も多いと思う。

 これに続き、2018年のノーベル化学賞受賞の米国のFrances Arnold教授と英国のGregory Winter卿が、GM食品に対する過度の懸念が、この技術から社会が受けられる恩恵を妨げていると述べた。Arnold教授は記者会見で、「どういうわけか、私たちが既にしてきたことに対するこの新しい恐れが表れ、その恐れが本当の解決策を提供する私たちの努力を阻害している」と彼女は付け加えた。

 Arnold教授は、遺伝子組換え作物は食料生産をより環境的に持続可能なものにし、世界の人口増加に貢献することができると主張した。一方、Gregory Winter卿は、GM作物に対する現在の規制は「ゆるめる」必要があると述べた。また、Richard J. Roberts卿は、University of the Philippines(UP)からの名誉博士号を授与された際に、「政治にはもっと科学が必要で、科学には政治の必要性は少ない。政治家は彼らが資金を供給している科学者に耳を傾けるべきである。また、我々は科学に基づいて『遺伝子組換え作物は危険でない』と判断しているのだから、遺伝子組換えで作られた食品が本質的に危険であるとする考え方を止めなければならない」とも述べた。彼は、グリーンピースやその他の反GMOグループに向けて、GMOに対する彼らのキャンペーンをやめるよう促す運動を主導している。

 国連食糧農業機関(FAO)事務局長のJosé Graziano da Silvaは、FAO評議会での開会演説で、食料システムの変革を通じてあらゆる形態の栄養失調に取り組むよう各国に緊急の要請を出した。また彼は、「我々が栄養失調の三大課題としている『栄養不良、肥満、微量栄養素欠乏』の同時存在が拡大し、ほとんどあらゆる国々に影響を及ぼしている。国際社会は、この課題に早急に対応するために、食料システムの変革を促進する必要がある」と語った。そして「私たちの飢餓ゼロのゴールは、人々に食糧を与えることだけではなく、健康的な生活のために必要な栄養素を全ての人に提供することにある」とつけ加えた。

 世界資源研究所(WRI)が発行した新しい報告書「持続可能な食糧未来の創出」は、食料需要が50%以上増加し、畜産製品(肉、乳製品、卵)に対する需要がおおよそ70%増加すると想定される2050年までに、地球のほぼ100億人に食糧を供給する方法を提供できる可能性がある。報告書は、「世界は既存の農地で食料生産を増やさなければならない」「遺伝子組み換え生物(GMO)と遺伝子編集が作物育種を改善して収量を増進させられる」と述べている。報告書は、「GMOがヒトの健康を直接害したという証拠はない」とも明言している。

 アイオワ州立大学で実施された研究は、Btトウモロコシの安全性に関するこれまでの数十の科学的研究を分析し、遺伝子組換え(GM)作物に用いられたリスク評価プロセスの概要を提供している。これによると、GM作物はヒトと環境にとって安全であり、GM作物に関連するリスクは低いか全く存在しないことが証明されていると結論されている。GM技術がストレス耐性とより栄養価の高い作物品種を開発するために、そして天然資源とヒトの健康を守るために使われることができるとの結論を下した。また、それぞれの新しいGM製品はケース・バイ・ケースで評価されるが、Bt遺伝子を含む製品などの承認された市販製品は厳密な科学的精査の対象となっている。植物に組み込まれたBt保護を含むが、これに限定されないGM形質は、作物収量、食品の安全性、および食料に不安のある農家の収入を改善するためのツールとして考慮されるべきであるとしている。

 技術的な面での画期的な報告としてフランスの農業開発研究局(Agricultural Research for Developmen、CIRAD)および国立農業研究所(National Institute for Agricultural Research 、INRA)の研究者らは最近、遺伝子RECQ4を不活性化すると、イネ、エンドウマメ、およびトマトなどの作物における組換え頻度が3倍に増加することを示したことがあげられる。彼らは、RECQ4を「スイッチオフ」にすることによって、平均して交叉回数を3倍にし、その結果、染色体シャッフリングが大きくなり、そのため世代ごとに多様性が増したことを示した。

世界
国連食糧農業機関事務局長が栄養失調への対応を呼び掛け

2050年までの生物多様性保全のための目標設定に多数の国の政府が同意

ノーベル賞受賞者ら、「GM作物への過度の懸念が社会の利益を阻害」と指摘

遺伝子組換えと遺伝子編集が世界の食糧供給のための作物育種を向上する

南北アメリカ

アルゼンチン、遺伝子組換え(GM)コムギ商業化に一歩前進

アイオワ州立大学、反GMOが発展途上国に与える影響を研究

ヨーロッパ

遺伝子の不活性化が作物の遺伝的多様性を向上

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/010900030/

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