アグリバイオ最新情報【2018年11月】のハイライト
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 ゲノム編集に関する話題の多い月である。まず米国で標的DNA複合体(CRISPR/Cas9遺伝子編集ツール)の特許が発行されたことは今後のこの手法を用いる育種に大きな影響を与えると予想される。一方、ゲノム編集の利用の透明性を確保するため、ミシガン大学のShobita Parthasarathy教授は特許の制度化を推奨している。これにより、公的利益のために重要な特許を評価し、最終製品の最終用途と価格を監視することができるとの考えで、これはやってみる価値があるように思われる。つまり特許制度は政府主導であるべきで、その方が私的な方策よりも透明性が高く、政策的にも正当である、との考えには同意できるところである。私見を述べると、ゲノム編集技術を作物に応用するには倫理的問題はないのだから、ヒトに使用するのとは異なると主張したい。もちろん、できた製品の安全性はきちんと試験して保障すべきだが、手法(遺伝子組換え、ゲノム編集を問わず)で規制すべきではないとの考え方である。我が国ももたもたせずに政府主導でよい政策を早く出してほしいものである。できれば米国に準じたものが望ましいと願っている。

 この点については、スウェーデン農務省および欧州食品安全機関を含む多くの欧州諸国の権限のある当局の支援及び前欧州委員会委員長およびヨーロッパアカデミー科学顧問会議の最高科学顧問の積極的なアドバイスにも拘らず、欧州司法裁判所は、ゲノム編集による産物を遺伝子組換え作物と同様に規制することを決定した。この決定は全く同意できるものではない。EU内からもこれに対する反対の声が上がっている。例えば、EUにおけるゲノム編集政策、特にセリアック病(Coeliac Disease 、CD)に対する様々の見解、EC最高科学顧問は遺伝子組換え(GM)の法律の改正を求めている。「遺伝子組換え(GE)製品に関する議論で考慮すべき価値とは?」「オランダの農業大臣が遺伝的改変に向けて扉を開けた」「欧州の主導的な植物科学者が植物育種革新を守るために政策策定を呼び掛け」などの記事をご覧いただきたい。科学的根拠のない欧州司法裁判所の決定は納得がいかないのは、私も同様である。

 新しい作物への遺伝子組換えの応用として、オーストラリア遺伝子技術規制局(OGTR)が
遺伝子組換えコムギの圃場試験の許可申請を受理したことが挙げられる。コムギは、ゲノム
の構成が複雑なためなかなか良い品種ができていなかったが、ようやく出た。

世界
ミシガン大学教授がゲノム編集を規制する特許制度制定を推奨

南北アメリカ
CRISPR/Cas9複合体の組成物の特許が米国で成立

アジア・太平洋
オーストラリアで遺伝子組換えコムギの圃場試験の許可申請を規制当局が受理

ヨーロッパ
EUにおけるゲノム編集政策、特にセリアック病に対する様々の見解
EC最高科学顧問は遺伝子組換えの法律の改正を要請
遺伝子組換え(GE)製品に関する議論で考慮すべき価値とは?
オランダの農業大臣が遺伝的改変に向けて扉を開けた
欧州の主導的な植物科学者が植物育種革新を守るために政策策定を呼び掛け
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/121200029/