【GreenInnovation Vol.367】

アグリバイオ最新情報【2018年10月】のハイライト

(2018.11.08 08:00)

アグリバイオ最新情報【2018年10月】のハイライト
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 BILL GATES氏は、地球気候行動サミットの会議で「我々がなすべきことはこれらの農業者に農業技術と新しい種子を提供することである。つまり干ばつに対応し、洪水対応を改善し、基本的に生産性が高い種子を農家に提供することである。これらのGMOと呼ぶ新しい種子は、先端科学を使って、生産性を倍増させ、干ばつに対処し、飢餓を避けるものである」と語り、これまで通り遺伝子組換え作物の重要性を語り、支持してみせた。また、「無駄にする時間はない」と国連食糧農業機関(ODA)のJosé Graziano da Silva総裁も語り、遺伝子組換え作物の重要性を指摘した。

 ケニア、エチオピア、ウガンダでは遺伝子組換え作物の重要性を認め、その栽培を政府主導で進めようとしていることは、食糧供給の面から望ましいことである。コムギについては、遺伝子組換え品種がなかなか出てこなかったが、2020年までに最初のゲノム編集高食物繊維コムギが市場に出るようになりそうなことが報告された。また遺伝子編集技術によって開発されたダイズ品種が1万6000エーカー(約6475ヘクタール)の農場で栽培され、収穫されたこともすごい進歩である。

 一方、セントルイスのWashington大学のOlin Business Schoolの助教授Sydney Scott氏が率いる研究者らが行った新しい研究によると、遺伝的に改変された(GE)食品は「“キモイ”といった不快な感じ方」にさらされているという。人々は、自然と自然なるものを神聖とみなして、遺伝子組換え食品は自然の冒涜とみなしているという。また消費者が「うわさの魔法の法則」に従うことも、この研究者は示した。これは、自然食品とそれ以外のものとのわずかな接触がそれを汚染するという考え方である。Scott氏は、科学的な情報だけを考えていてはギャップの解消ができない。より良いコンセンサスに到達する方法を見つけようとすべきと付け加えた。同様な位置にある我が国にも同じような考えが蔓延しているので、今後の動きを期待している。またこれの助けになるかもしれないのは、科学技術シンクタンクである情報技術と革新事業財団(ITIF)が食品医薬品局(FDA)に非GMO表示の使用禁止を行ったことだ。「食品、食品添加物およびその健康への効果と安全性に関して誤りや誤解を招いて消費者を欺くことになる」と指摘している。我が国の組換え表示法の検討者も十分に考えて欲しいところである。

 オーストラリアでは、南オーストラリア州の遺伝子組換え作物の栽培に関するモラトリアム(導入の一時凍結)についての独自の見直しが行われている。この見直しは、様々な視点からの理解と、モラトリアムの現在および将来の経済的影響をよりよく理解することを目的としている。この見直し完了後、南オーストラリア州のGM食用作物に関する政策決定が正しい科学情報に基づいて行われることが可能になる。北海道も考え直しが必要であろう。ヨーロッパでは、英国がゲノム編集で造成した品種の扱いを米国と同じく遺伝子組換えとはしない方向にあることは注目に値する。英国が独自の健全科学に基づく規制制度を設定すれば、第一級の食品安全性評価システムを提供し、農業者により良い種子を提供し、競争力を高め、消費者の需要を満たすことができ、長期的に最大限のベネフィットを英国にもたらすだろう。これらのメリットは、世界のほとんどの国で実施されている規制制度と整合的に、健全な科学に基づいてGMOとNBTの両方を規制する独自の道を英国が設定すれば、最も高くなる可能性が高いとしている。この点には、我が国の関係者も注目して欲しいものである。

世界

「遺伝子組換え種子は農業者が気候変動に対応する助けになる」とBill Gates氏

アフリカ

ケニア大統領が組換えBtワタ栽培を承認
エチオピア政府、農業バイオを用いた経済発展を支援
ウガンダでもバイオテクノロジーが成長を変える可能性

南北アメリカ

2020年までにゲノム編集高食物繊維コムギが市場へ
米国ではゲノム編集ダイズを収穫へ
遺伝子組換え食品は“キモイ”感情に直面
米財団が非GMO表示の禁止をFDAに請願

アジア・太平洋

豪南オーストラリア州のGM作物の一時凍結を見直しへ

ヨーロッパ

英国の一般大衆が遺伝子組換え作物を支持するとの調査結果
英EUSTICE環境・食糧・農村大臣が「ゲノム編集作物は必須」と指摘
Brexit後の作物規制には健全な科学の導入が急務と民間報告書

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/110700028/

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