1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。原則として第4木曜日のGreenInnovationメールを担当しております。

 環境分野では、海洋廃棄プラスチック問題の注目度が高まっています。

※日経バイオテクONLINE記事
(2018.10.23)
環境省プラ小委員会でレジ袋有料化の方針、バイオマスプラには追い風
2020年度以降はコンビニでも無償配布を禁止
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/10/22/04877/

(2018.10.12)
【日経バイオテクONLINE Vol.3023】
まさに猫だまし?プラスチック製ストローの使用廃止宣言
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/btomail/18/10/11/00432/

 バイオテクノロジー関連では、カーボンニュートラルのバイオマスプラスチックと、生分解性が高いバイオプラスチック、という分類で、市場拡大が進んでいるようです。

 ここで着目したいのは、安全性評価です。

 プラスチックはおよそ、有機物モノマーが重合した有機物ポリマーといってよいかと思います。

 最終的に二酸化炭素と水などまで分解されれば、毒性は低くなった(二酸化炭素問題はありますが、カーボンニュートラルならば)といえますが、この分解過程の途中のものの安全性をどう評価するのか、といった点です。

 5mm以下程度に小さくなったプラスチックは、マイクロプラスチックと呼ばれています。さらに分解するとオリゴマーになり、モノマーになり、そのモノマーがさらに分解されていくと最終的には、上記の二酸化炭素などになります。

 カネカの生分解性ポリマーは、発酵原料の糖原料などからモノマーを作るプロセスと、それをポリマーにするプロセスの両方を、微生物にて行っています。

 代表的なポリ乳酸は、乳酸を糖原料からつくるところは微生物に任せ、ポリマー化は化学的手法で行っています。

 遺伝子組換え食品の安全性評価でもよく出てくるキーワードで、プロセスを考慮した評価とプロダクトそのもの評価というのがあります。安全性評価の対象は当然、プロダクトになるのですが、安全性評価というのは実はとても難しい(きりがない)ので、プロセスを勘案することにより、プロダクトの安全性確保の向上に活用しようという考え方です。

 なお、大豆の輸入で非遺伝子組換え大豆を調達する手法としては、IPハンドリングという手法が使われていて、これは“社会的検証”と呼ばれ、プロダクト評価などの“科学的検証”と対比して使われます。

 環境問題での安全性評価というと、環境ホルモン問題やナノ素材・ナノ食品問題、放射性物質問題など、取材してきましたが、いやはや大変です。安全性評価に不可欠となる高度な分析技術が登場しています。頑健性が高まった技術については安全性評価に取り入れていきたいところですが、解析対象が膨大(ビッグデータ)になればなるほど、何らかの変化・影響は観察されます。その変化・影響を、安全性評価の上でどのように重みづけするのか。

 ここで共通点を指摘しておきます。当然のことながら、基準を定める審議会、検討会には、該当する安全性評価に詳しい専門家が委員を務めます。そして、厳しい基準を設ければ設けるほど、その分野に詳しい専門家コミュニティの研究費が増す、という構図です。

 生物多様性への影響をはじめ環境への影響に関する安全性評価がまずは大変なのですが、最終的には、ヒトへの影響が重要な課題となります。

 真核生物であるヒトへの影響では、遺伝情報の発現への影響や遺伝情報の修復などの評価が大切です。

 今週月曜日発行の日経バイオテク2018年10月22日号で、クロマチンの特集記事を載せたのでご覧いただきたいのですが、遺伝情報の発現や修復などのメカニズムの一端が少しずつ分かってくるようになりました。

 安全性評価ではエピジェネティクス、エピゲノムの側面も重要になりますが、奥が深いですね。

(2018.10.24)
次世代エピゲノム創薬◎特集連動
平野達也氏と胡桃坂仁志氏、「教科書を書き換えろ!」を編集
「染色体の新常識、ポリマー・相分離から疾患・老化まで」発刊
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/10/24/04895/

日経バイオテク2018年10月22日号特集
次世代エピゲノム創薬
クロマチン解析のChIPやHi-Cが進化、技術革新で創薬への応用に期待
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082400016/101700066/

 さて、最後にメール表題の「フレームシフトでアレルゲン」の話題を紹介します。

 先週月曜日(10月15日)の厚生労働省の食品の審議会を傍聴取材しました。

(2018.10.17)
厚労省審議会、ゲノム編集育種食品の2回目審議
「最悪の規制を作ることになりかねない」と中島春紫・明治大教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/10/17/04856/

 ゲノム編集育種した食品の安全性評価では、通常の遺伝子組換え食品の安全性評価と同じように、アレルゲン性も“できるだけ”評価していく方法性で審議が進んでいます。

 アレルゲン性の評価は一般に、アレルゲンになることが知られている食品中の蛋白質のアミノ酸配列を含まないかどうかをチェックすることで行われます。パネル化した患者血清を用いた評価を行うべき、という委員の発言もありましたが。

 “できるだけ”がポイントになりそうです。できるだけ、とはどこまでやるのか、ということです。

 従来型の遺伝子組換え食品では、導入した外来遺伝子により新たに発生する蛋白質が評価対象です。

 一方、現在審議が進んでいる、ゲノム編集育種食品では、ゲノム編集の操作で“オフターゲット”に作用した場合の変化を調べる、とのことです。

 オフターゲット作用とは「狙ったゲノム部位とは異なる部位に作用してしまうこと」を意味します。

 オフターゲットに作用したときに、そのオフターゲット部位付近で、塩基配列から翻訳されるアミノ酸配列が変化していまう場合に、その変化したアミノ酸配列についても、アレルゲンをチェックしましょうということです。塩基配列3つ毎にアミノ酸残基1つに翻訳されます。この読み枠(フレーム)が1つずれると、翻訳してできるアミノ酸配列が大幅に変わります。

 イネやトマトなど、ゲノム全体の塩基配列がよく読まれているものですと、ゲノム編集育種に用いるゲノム編集ツール(CRISPR/CasやTALENなど)を設計するときに、オフターゲットがなるべく生じない物を選ぶことができます。

 当然のことながら、全ゲノム解析が行われていなければ、オフターゲット予測解析は実行不可能です。食品の原料となる食材(=生物)にも品種や個体差があるので、ゲノムの塩基配列は微妙に異なるのですが、まずはともかくも、標準的なゲノム配列情報をまずは確保しておきたいところです。

(2018.10.19)
【機能性食品 Vol.356】
ゲノム編集育種食品の安全性評価にゲノム情報、多彩な日本食材のゲノム解読を推進しょう
東海大学教授の永井竜児氏が「代謝マーカーとしての各種AGEsの精密測定」講演
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/foodmail/18/10/19/00174/
 日経バイオテクの連載「機能性食材研究」にて、食材を取り上げる際に、必ず、食材のゲノム解読状況を調べるのですが、日本はこの体制が脆弱と感じています。

 今回の安全性評価の議論をきっかけにしてでも、推進体制を整備できれば、と思います。

 ゲノム解読は、次世代DNAシーケンサー(NGS)の技術革新により、より安価・短期間でできるようになってきました。

 ヒトやコメなどのリシーケンスですと、あらかじめ分かっているゲノム塩基配列文字列に、新たに読んだ塩基配列を張り付けていけばよいのですが、新たなde novoゲノム解読だと、参照になる配列情報が無いので、大変です。

 1分子ロングリードNGSが、de novoゲノム解読では大きな意味を持ちます。NGSが連続して読み取る1リード当たりの塩基配列数は、精度が高いショートリードNGSでは数百程度ですが、新型のロングリードNGSでは数万以上も読むことができます。

 廃棄書類をシュレッダーにかけて、他人が復元しにくくするということはオフィスや研究室、家庭などで多く行われているかと思いますが、シュレッダーで切り刻まれた断片が小さいほど、元の状態を復元するのは困難です(=安全性が高い)。ロングリードNGSの情報は、この断片が大きいことを意味します。