【GreenInnovation Vol.365】

アグリバイオ最新情報【2018年9月】のハイライト

(2018.10.11 08:00)

アグリバイオ最新情報【2018年9月】のハイライト
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 「世界の食糧安全保障と栄養状態に関する国連報告2018」によると、飢餓人口は世界的に増加しており、2017年には8億2100万人、すなわち9人に1人が飢餓に瀕しているとのことである。この要因は、降雨パターンや農業季節に影響を与える気候変動、旱魃や洪水などの極端な気候条件、紛争や経済減速であると、報告書は警告している。

 また、Scienceにはイネ、トウモロコシ、コムギなどの害虫が様々な気候変動シナリオにどのように対応するかを検討した研究結果が発表された。それによると、地球温暖化の増加は、特に温帯地域における害虫被害による作物の損失の増加をもたらすとのことだ。損失は1度の温度の上昇ごとに10%から25%上昇すると予測されている。

 この両者を合わせて考えると、日本も今年、地震に加え台風や気象変動で農業生産に大きな影響を受けており、上記の温度上昇による損失の予測も当てはまるだろう。同様に世界の穀倉地帯への影響も免れられない。遺伝子組換え技術により、これらの影響に対応できる品種の育種が望まれると考えている。

 アフリカ諸国(ガーナ、ケニア、ブルキナファソ)の話題も興味深い。ガーナの農業リーダーは、遺伝子組換え生物(GMO)の正しい理解の進行により「私たちの多くは、GMOは悪いとの誤解へと誘導されていたが、今は真実を知り、私はGMOに非常に満足している。GMOに関しては何ら害が無い」と考える方向に動き出した。ケニアの科学者たちは、GMOに関連する否定的な認識が、同国におけるGM作物の商業化に有害である可能性があるという懸念を表明している。さらにブルキナファソの綿花栽培は、Btワタの撤去からこの2年間に急速に落ち込んだ。これらの話題から、アフリカ諸国では急速にGMOの正しい理解が進行しているとみられる。

 一方、南米では、遺伝子組換えダイズにより、農業者は導入最初の5年間で収入が76億4000万ドル増加した。また、「農薬散布量を1044万kg削減し、温室効果ガスの排出を削減し、さらも道路から330万台の車を取り除くことに相当する」などを上げてその効果の大きさを確認している。

 中国科学アカデミーの植物遺伝学者Xiangdong Fu氏と共同研究者は、作物による窒素肥料の吸収利用が少ないため河川、湖沼、海洋の富栄養化を防ぎ、作物の成長を助ける遺伝子を発見し、その遺伝子組換え品種で、従来種よりも少ない窒素で高収穫・短稈種育種につなげられる可能性を発見した。

 Australian National University (ANU)の科学者たちは、藍藻類からの炭素固定機構を植物に組み込むことで「CO2濃縮メカニズム」を使用し、糖へのCO2変換速度を高め、酸素反応を最小限に抑えた。シアノバクテリア内のRubisco酵素は、二酸化炭素を捕捉し、植物中に見出されるRubiscoより約3倍速く糖を生成することを発見した。

世界
地球温暖化で害虫による作物被害が増加
「世界の飢餓は継続して上昇する」と国連が報告

アフリカ
ガーナの農業リーダーが農業バイオテクノロジーの支援に転向
ケニアの科学者、関心の低さがGM作物の商業化を遅延と懸念
ブルキナファソの農業者はBTワタ栽培の再開を要望

南北アメリカ
南米の農家は遺伝子組換えダイズ栽培で大きな利益獲得

アジア・太平洋
少ない窒素資源で植物の成長を促進する分子を発見
藍藻類が重要な食用作物の収量を向上

国際アグリバイオ事業団(ISAAA)アグリバイオ最新情報【2018年9月】 https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/101000027/

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