【GreenInnovation Vol.363】

アグリバイオ最新情報【2018年8月】のハイライト

(2018.09.13 08:00)

アグリバイオ最新情報【2018年8月】のハイライト
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 コムギは、世界の1人当たりカロリーと1日当たりの蛋白質の約20%を提供しているが、遺伝子組換え作物領域ではあまり研究されていない。これは、遺伝子が大きく複雑であることが大きな理由と考えられるが、この「放置状態」を憂慮する声が上がっている。HIVは、非常に問題が大きなウイルス病であるがよい治療方法が無い。特にへき地での問題がある。スペイン、米国、英国の国際研究者チームは、HIVを中和無力化する蛋白質を産生する遺伝子組換え(GM)イネの株の作出に成功したことは朗報である。しかもその製法も簡単であり、これこそ作物を利用した好例である。

 これまで政治的理由などで遺伝子組換え作物の商業栽培が遅れていたナイジェリアが、連邦高等裁判所(FHC)の決定と政府の承認を得てアフリカの7番目の遺伝子組換え作物の栽培国となった。これをきっかけに様々な遺伝子組換え作物が栽培できるようになると期待される。

 米国では、種子中に極低レベルのゴシポールを含むように遺伝子操作した(GE)ワタ種子(TAM66274品種 )の規制緩和に向けて動き出した。ゴシポールの超低レベルを有するGEワタが規制から外れると、綿実粉をより容易に使用することができる。また、USDA農業研究サービスの科学者は、複数の遺伝子を作物植物に挿入するために使用できる新しい方法を開発した。これにより、高度に強化された特性を持つ様々な作物の繁殖を容易にすることができる。GAANTRY遺伝子多重化技術と呼ばれる新しい方法は、高温や旱魃に対する抵抗性が改善され、より高い収量をもたらし、多くの病虫害に抵抗性のジャガイモ、イネ、柑橘類、および他の作物の新しい品種開発を早めることが期待されている。この方法には、重要な特性を発現するために必要な大きなDNAを「多重化」して安定化させることが含まれており、試行中に意図しないDNAが追加または除去されないように遺伝子を正確に望む位置に挿入できる。
 遺伝的に改変された高代謝可高エネルギー(HME)ライグラスのAgResearchの試験によると、従来のライグラスよりも50%速く成長することができ、最適な動物成長のためにより多くのエネルギーを蓄え、旱魃に対してより抵抗性があり、家畜からのメタン(ニュージーランドの温室効果ガス排出量に最大の寄与をする)が23%少なくなっている。これは、飼料面からも環境面からも高く評価できるものである。
 アジア太平洋経済協力(APEC)がようやく遺伝子組換え作物に関するポジティブな議論を開始した。これはアジアにとって重要な一歩である。アジア食品安全協会(AFSA)が主催する第4回食品安全・食糧安全国際会議もまた現代農業と新しい育種の革新について関心をようやく寄せてきたことは大きな進展である。

世界
HIVを中和無力化する遺伝子組換えイネを開発
GMコムギの必要性

アフリカ
ナイジェリアが遺伝子組換えワタを登録
ナイジェリアの連邦最高裁判所は、BTワタの商業栽培を承認

南北アメリカ
USDA-APHIS、新規遺伝子組換えワタ承認の公聴にむけた評価書公開
USDA、新しい複数遺伝子スタッキング技術を開発

アジア・太平洋
ニュージーランドで遺伝子組換え高代謝エネルギーのライグラスの試験実施
APECがバイオテクノロジーと植物の繁殖の革新に関する規制方針公表
アジアの食品安全協会が食品安全保障のための戦略を立案

ヨーロッパ
欧州委員会が5種の遺伝子組換え作物を承認
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/091100026/

 毎月第2・第4木曜日に配信している日経バイオテクGreenInnovationメールに掲載している記者や専門家によるコラムを掲載します。

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