【GreenInnovation Vol.357】

アグリバイオ最新情報【2018年5月】のハイライト

(2018.06.14 08:00)

アグリバイオ最新情報【2018年5月】のハイライト 
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 米農務省(USDA)は、議会が2016年に義務化した「バイオ食品安全基準、National Bioengineered Food Disclosure Standard」に対する新たな提案について一般市民にパブコメを呼び掛けている。この基準は、食品に関するより多くの情報を求めている消費者に対して、消費者を混乱させる恐れがあり、食料費を押し上げる可能性のある国家的または私的の混在した表示を避け、意味のある統一性のあるものを提供しようとしている。この中では従来の遺伝子組換え(GM)という概念とは異なるバイオエンジニアリング食品という概念を打ち出し、「バイオエンジニアリング」の略語である「BE」と、太陽と微笑み顔をデザインした各種の表示(マーク)を表示することを提案している。提案は60日間(7月3日まで)バブコメを求めて公開されている。また、GEの定義を明確に「試験管内(in vitro)でDNAを操作したもの」としている。言うまでもないが成果物の安全性が無いものは、環境放出はできない。日本の対応が遅れている中、米国ではどうなっているかとの関心のある方は、相当の量がありますが、ぜひ原報告をご覧ください。

 ヨーロッパでもヨーロッパ科学アカデミーは、インターナショナル・アカデミー・パートナーシップ(InterAcademy Partnership)と協働して、欧州の政策立案者に、食糧と農業へのアプローチを緊急に再考するよう求め、現在の策は持続可能ではないと述べた。欧州の食糧・栄養保健・農業に関する課題と挑戦と題する報告書を発表した際、EUの政策立案者は、気候変動が食品システムに及ぼす悪影響、健康で環境に優しい食生活を促すこと、持続可能性に役立つ最新の農業慣行と技術を使用することを推奨するシステムを構築する必要があると述べた。ヨーロッパ科学アカデミーは、またこれは欧州の将来の食糧にとって不可欠であり、ゲノミクスの革新技術に基づく製品を含む、技術を失うことのないように、欧州の政策立案者に要請した。

 さらに、フィリピンでも国会議員が農業バイオテクノロジーの最新技術導入に向けて動いている。Pantaleon Alvarez下院議長は、遺伝子組換え技術は、農業バイオテクノロジーは生産性向上と栄養改善のための優れた選択肢であり、国が革新から得られる利益は最終的にリスクを上回ると強調した。

 以上の動きを支持するものとして、GM作物は2017-2024年に世界の農業バイオテクノロジー市場を席巻するとの予想が、2018年5月に発表された「世界農業バイオテクノロジー市場 - 技術、市場シェアと2024年にむけての業界予測」と題する研究と市場調査の最新報告書でなされている。
 以上の動きに比べ、我が国はあまりにも無関心のように思える。農業に最新技術を入れることの重要性を政府に、そして政治家に働きかける必要があると思っている。

 科学的な進歩としては、スペインの研究者は、気候変動に適応した新しい品種を開発するための遺伝子源として使用できる作物野生種(crop wild relatives, CWR)を同定したことと、神戸大学の島谷善平氏の研究チームが、Target-AIDを介して標的遺伝子に所望の点突然変異を導入して除草剤耐性イネ(Oryza sativa)のカルスを造成し、形質転換されたカルスから再生された植物に導入された突然変異が後続の世代に継承され得ることを証明したことがある。これで選択マーカー非含有(SMF)除草剤耐性イネの世代を導くことが明らかになった。

世界
報告:遺伝子組換え作物が世界の農業バイオテクノロジー市場を席巻する

南北アメリカ
米農務省は、新しいバイオ食品安全基準を提案

アジア・太平洋
フィリピンの現代バイオテクノロジーに関する法案を専門家が提案
フィリピンの議員が農業バイオテクノロジーの推進を支持

ヨーロッパ
植物によるマラリア薬の生産を植物科学者が向上
「食品、農業、環境の研究は持続可能ではない」と欧州科学アカデミー
ゲノム編集(GE)カメリアが初の圃場試験へ
気候変動に適応するための遺伝子をスペインの科学者が発見

新育種技術
日本の研究者が選択マーカー非含有(SMF)除草剤耐性イネを開発

作物バイオテクノロジー以外の話題
米インディアナ州のAquaBounty Technologies社のサケ育成施設をFDAが承認

国際アグリバイオ事業団(ISAAA)アグリバイオ最新情報【2017年5月】
http://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/061300023/

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