アグリバイオ最新情報【2018年4月】のハイライト 
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 Sonny Perdue米農務長官は、ゲノム編集を含む革新的な新しい育種技術によって生産された植物に関する米農務省(USDA)の明確な見解を示した声明を発表した。声明では、植物病害虫由来の遺伝子、もしくは植物病害虫を使って開発されたものでない限り、USDAはバイオテクノロジー規制の下、伝統的な育種技術によって開発された植物を規制する予定はないとしている。これには、新しい植物品種を生産するために植物育種家によって使用された、伝統的な育種方法によって開発されたものとは区別できない一連の新しい技術が含まれる。ゲノム編集のような最新の方法は、新しい植物形質をより迅速かつ正確に導入することができるため、伝統的な植物育種ツールを拡大することになり、農家に必要な新しい品種をもたらすのに要する時間を、数年から数十年単位で節約させる可能性がある。

 すなわち、ゲノム編集は何ら従来法と区別されるものではなく、規制を受けないとしている。この記事および他の国々におけるこの問題の論点については、農芸化学会発行の「化学と生物」2018年5月号(Vol.56, No.5, p.364-370)にも書かれているのでご覧いただきたい。

 韓国の農村開発局(RDA)は、次世代バイオグリーン21プロジェクトのための農業バイオテクノロジー研究センターを公募により設立した。「農業バイオテクノロジーとバイオテク種子開発に関する研究は、既存の育種技術では解決が難しい農業分野の問題を克服する最先端の農業技術を目的とするもので、国家的側面で確保しなければならない重要な技術である。巨額の研究費を要することと社会的な反対があることから、米国や欧州など他の先進国に比べて韓国は遅れをとっている」と農業バイテクノロジー研究センター所長のPark Soon-ki所長は語った。

 同所長は続けて、「上記のように遅れをとっているが、今後の気候変動適応のためのバイオテク作物開発技術を確保し、このプロジェクトを通じて韓国の農業の限界を克服し、グローバルなバイオテク種子開発者として飛躍できるよう、私は最善を尽くす」とも述べた。

 これに関して、我が国は大丈夫なのだろうかと疑問が湧く。私は、日本の方が韓国よりも遅れを取っているのではないかと懸念している。これからの異常気象に対する警鐘があった。遺伝子組換えを含むあらゆる最新技術を取り込む必要がある。

 国連食糧農業機関(FAO)の「農業および食糧保障に対する病害と災害の影響」と題する報告書によると干ばつ、洪水、森林火災、暴風雨、植物病害虫、動物病害の発生、化学物質漏出、有毒藻類の繁茂などの自然災害は、途上国に2005年から2015年にかけて960億ドルの損失を引き起こした。損害の約50%(480億ドル)はアジアで発生した。干ばつがあらゆる自然災害の中でも最も大きな脅威であることが判明した。干ばつによる経済損失の約80%は農業分野であり、290億ドルの損失となった。

 ウガンダでは、政府にGMを推進するように呼び掛けるデモがあった。かなりの数の参加者が行進し、ウガンダでGM作物の商業化を可能にする法案であるNational Biosafety Bill(バイオセーフティ法)が通過するよう政府に要請した。反GM活動家などによる長期にわたる政治的議論によって、GM作物などの現代農業技術成果を農業者に渡す努力を怠ってきた国において、このデモ行進は、関係者に指導的行動を促すためのプラットフォームを提供したことになる。

米国の非営利組織である農業科学技術審議会(CAST)は、「小規模企業および大学による革新的農業バイオテクノロジーの開発への規制障壁」と題した報告書を発表した。この報告書は、米国の現在の遺伝子組換え作物の規制制度を総括し、主要な貿易相手国と比較し、農業バイオテクノロジーへの影響を考察している。この事業は、委員長のAlan McHughen氏の主導で行われた。専門家は、遺伝子組換え(GE)作物の革新と開発には公共財源を大きく投入し、貢献してきたにもかかわらず、学術機関や小規模な民間企業は、ほぼ完全に農業バイオ市場から除外されていることを示していると指摘している。

 英国王立協会(The Royal Society)の報告によると、英国の人々は、DNA配列解析、遺伝子治療、ゲノム編集などの技術を、ヒトの健康を改善し、不平等を減らし、気候変動の影響に対応するような地球規模の課題に取り組むために利用することに対して慎重だが楽観的でもあるとのことだ。王立協会が、人間、植物、動物に適用される遺伝的技術に関する英国の見解を調査し、その使用に関するいくつかのジレンマと論議を探るために世論調査を行った。2061人を対象とする調査では、46%が「ゲノム編集は一般的に地球規模の課題に取り組むには多大なリスクを伴う」との意見に賛成する一方、特定の分野、例えばヒトの健康への使用については非常に肯定的だった。植物のゲノム編集を利用して、より安価な医薬品作る(69%)、低栄養の課題を解決にするために作物をより栄養豊かにする(70%)、カビなどの病害による作物の被害を防ぐ(77%)ことには多数が賛成した。ヒト疾患を予防または治癒するための動物におけるゲノム編集の使用も支持されている。例えば、調査参加者の71%がマラリアの広がりを制限するために遺伝子組換え蚊の使用を承認している。

世界
農業に最大の損失を引き起す災害は干ばつとFAOの報告書
バイオエコノミーのための全世界的な協調をFAOが呼び掛け

アフリカ
ウガンダの国民が科学技術に基づくバイオテク政策を要望

南北アメリカ
農業科学技術審議会が農業バイオの規制障壁に関する報告書発表
米国農務省がゲノム編集などの植物育種革新に関する声明

アジア・太平洋
韓国に農業バイオテクノロジー研究センターが発足

ヨーロッパ
英国人は遺伝子技術に慎重だが楽観的と、英国王立協会の報告書

研究
家畜の健康と成長に対する遺伝子改変の役割に動物科学者が着目
CRISPR/Cas9でトマトのリコピン含有量を増加

国際アグリバイオ事業団(ISAAA)アグリバイオ最新情報【2017年4月】
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/050700022/