アグリバイオ最新情報【2018年3月】のハイライト 
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 2018年国際女性デー(IWD)に国連は、「今こそ女性の生活を農村でも都会でも変革する時である!」をテーマに掲げ、世界人口の四分の一以上を占め、開発の全ての指標で取り残されている農村女性の活動に焦点を当てた。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の研究によれば、中国、インド、フィリピンの女性が、遺伝子組換え作物栽培において重要な役割を果たしている。インドでは、男性が肉体労働を必要とする農業活動を担当しているが、女性は雑草の除去、抜き取り、清掃などの活動を行っている。一方、ISAAAおよびそのバイオテクノロジー情報センター(BICs)は、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどのSNSを通じて「ScienceAndShe ;科学と女性」と題するキャンペーンを行い、遺伝子組換え技術の有用性をこれらの女性群が発信することを奨励している。女性科学者や科学コミュニケーターは、科学と公衆の間のギャップを埋めるために、その経験や指向性を一般公衆と共有するように活動している。

 このように、世界中で女性の働きが極めて重要になっている。その点は我が国でも同様だが、遺伝子組換え技術に関しては、上記のような動きには至っていない。北海道においても、甜菜栽培の除草作業など女性に頼っているところが大きい。この作業を軽減するために、遺伝子組換え作物を導入しようとしても、北海道庁は条例を盾に試験すらやろうとしない。北海道女性デーの制定も必要ではなかろうか?

 ブラジルの約100の製糖会社は、初めて遺伝子組換えサトウキビの商業栽培を開始した。ブラジルCentro de Tecnologia Canavieira (CTC)社が開発したニカメイ虫に耐性を有する品種が、400ヘクタール(988エーカー)に初めて栽培されることになる。このニュースは北海道には衝撃的である。北米での甜菜は、ほぼ100%遺伝子組換えである。ここでさらにサトウキビにまでGMの導入が進むことにより、我が国の製糖業界、農業者はますます取り残され、利益も出ない状況になる可能性がある。それを理解できない北海道庁の対応が全く不可解である。

 遺伝子組換え作物がもたらすベネフィットについて3つのニュースがある。1つ目は「過去40年間のデータにより、様々の作物の中でBTトウモロコシの導入がもたらしたベネフィットを明らかにした」というもの。2つ目は「南オーストラリア州におけるGM作物栽培の禁止は、農業者に何の利益ももたらさないとの報告を確認した」というもの。3つ目は「オーストラリアでのGMナタネ導入の遅れによる環境的コストには、ナタネ栽培地における有効成分650万kgを含み、農業者、消費者、生態系への影響のコストが14.3%増加することになる。また 870万Lのディーゼル燃料が余分に使用され、これは2420万kgの温室効果ガス(GHG)とその他の排出物が放出されたことになる。また一方、110万tのナタネの生産減とナタネ農家の純経済損失4億2560万オーストラリアドルとなる」である。いずれも科学的に調査を行い、遺伝子組換え作物がもたらしたベネフィットを明示している。もちろん非遺伝子組換え作物の栽培を否定するものではなく、共存が大事とも言っている。経済的および環境への負荷軽減を考えると遺伝子組換え作物は、圧倒的に優位にある。

 科学的な貢献としては、「農業は世界最大の淡水ユーザーであり、人口増加がこの貴重な資源に大きなプレッシャーとなっている。米国と英国の科学者は初めて、水の使用量を25%減らしても生産性を低下させない作物を全ての植物にあるたった1つの遺伝子の発現を変えることで改良した」ことが挙げられる。大気中の二酸化炭素濃度は過去70年間で25%増加したので、植物は気孔を完全に開けなくても体内に二酸化炭素を蓄積できる。このことに着目して光合成蛋白質(PsbS)の発現を高め、植物の気孔を閉じさせて水を節約した品種を開発した。
グリホサート耐性雑草を調べてみるとグリホサート標的遺伝子が他の数種の遺伝子とともに染色体から切り出されて自己複製環状DNA構造を形成していた。これは、抗生物質への耐性機構と同じ機構によるもので、有用な薬剤の使い方をよく考えて行うようにとの警鐘といえる。つまり、農業の持続可能性のためには、グリホサートを使用し続けられるよう、統合された雑草管理戦略をすることの重要性が指摘されている。抗生物質の乱用がもたらした耐性菌の出現を思い出させるものである。

世界
これからは、女性がバイオテクノロジー分野で重要な役割を果たす

南・北アメリカ
ブラジル製糖会社が遺伝子組換えサトウキビの栽培を開始
25%少ない水で栽培できる干ばつ耐性作物への改良
雑草のグリホサート耐性獲得機構を発見
Btトウモロコシの導入が他の作物の害虫管理にもベネフィットもたらす
カナダ保健省がゴールデンライスを承認

アジア・太平洋
南オーストラリアでのGM作物禁止は農業者に何の利益ももたらさないオーストラリアでのGMナタネ導入の遅れのコストを試算

国際アグリバイオ事業団(ISAAA)アグリバイオ最新情報【2017年3月】 https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/041100021/