アグリバイオ最新情報【2017年12月】のハイライト 
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 世界中の8200人以上の科学者による専門的な学会である米毒性学会(SOT)は、遺伝子組換え(GE)作物が関与する食糧と飼料の安全性に関して新しい声明を採択・承認し、公表した。声明には、安全性、実質的な同等性および表示に関する5つの重要な項目がある。また、多くのGE作物がこの20年間に莫大な商業的成功を収め、その間に健康への悪影響の可能性あるいは、立証された悪影響は無いと述べた。このように毒性学の学会が声明を発表したことは、現在商業栽培されているGE作物の正しい理解に向けての大きな進展である。我が国の専門家の学協会にも同様の声明を出してもらいたいものである。

 東および中央アフリカバイオサイエンス支部(Biosciences Eastern and Central Africa(BecA-ILRI)Hubが主催し、国際アグリバイオ事業団(ISAAA) のAfriCenterと国際畜産研究所(ILRI)のナイロビキャンパスの協力の下に、2週間の科学コミュニケーショントレーニングワークショップを行ったが、この点についても我が国で同様のことが行われるべきと強く感じた。科学者として誤解の無い広報を行うのが重要であるのはもちろんだが、この中で主導的役割を果たしたISAAAのAfriCenterディレクターであるMargaret Karembu博士の「科学に馴染みのない聴衆はそれらの研究がどのようなインパクトを自分たちに与えるのかに興味を持っている。研究者は自分の研究成果を伝えるために戦略的な方法に優先順位を付ける必要がある」「情報を発信することと聴衆に分からせることの違い、情報の共有と広報活動とを区別すべき」といった言葉をかみしめている。

 University of Florida園芸学部部長のKevin Folta教授は、いかにしてメディアが科学を誤解し、事実をねじ曲げて偽ニュースにするかを解説した。Temple Universityの科学者の研究は、カノーラ油が記憶障害、痴呆、肥満、およびアルツハイマー病を引き起こすことを示してはいない。特にヒトについては何も言っていない。それにもかからず、Temple Universityのプレスリリースは研究結果と全く異なる「カノーラ油がアルツハイマー病の記憶および学習能力の低下と関連すると、Temple Universityが発表」という表題をつけてしまった。このプレスリリースすぐに記者に取上げられ、カノーラ油摂取に対する一般市民の恐怖を煽った。

 欧州ではまだ遺伝子組換え作物の栽培が広く行われていないが、欧州科学アカデミーが食品と栄養の安全性に関する緊急行動を呼び掛け、ゲノム編集やメタボロミクスなどを使用して遺伝亭改変を進めるよう提言したのは興味深い。Montana State University経済学部を退職したGary Brester教授による「欧州連合(EU)における遺伝子組換え作物禁止が農業の生産性を損なわせている」とのコメントとも関係があると感じている。

アフリカ
アフリカの農業研究者に対する科学コミュニケーション研修を開催

南北アメリカ
EUでの組換え作物禁止は農業の生産性を損失と研究者が指摘
組換え作物には悪い副作用の証拠は無いと毒性学会
Temple Universityの発表はカノーラ油摂取とアルツハイマー病を関連付ける

アジア・太平洋
ゴールデンライスはバングラデシュの役に立つ
豪連邦科学産業研究機構の科学者は食物繊維が10倍多い新コムギを開発

ヨーロッパ
欧州科学アカデミーが食品と栄養の安全性に関する緊急行動を呼び掛け

文献備忘録
遺伝子組換え/バイテク作物栽培国の現状と動向

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/011100017/index.html