【GreenInnovation Vol.345】

アグリバイオ最新情報【2017年11月】のハイライト

(2017.12.14 10:30)

アグリバイオ最新情報【2017年11月】のハイライト 
     ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表
  
 作物の遺伝子組換えとそれに関連する遺伝子の明るいニュースが多い。
まず、コムギのゲノム配列解析が完了したことが挙げられる。コムギの遺伝子はヒトの5倍も大きい上に複雑である。最終アセンブリには、15,344,693,583塩基を含み、加重平均(N50)のコンティグサイズは232,659塩基である。これは現在までにコムギゲノムの最も完全で連続的な集まりを表し、この重要な食物作物の将来の遺伝子研究のための強力な基盤を提供することになる。また、コムギの茎サビ病耐性遺伝子を同定されたことで、収量の増加を望める。今後の進歩に注目したい。

 中国の科学者は、潜在的に2億人の食糧を供給することができる海水で栽培できるイネ品種を開発に成功しつつある。科学者たちは海水中で成長することができるイネについて長年研究しており、イネ品種は1ha当たり4.5tを生産すると予測したが、1品種は既に1ヘクタール当たり9.3tを生産する有望な結果を示した。これもこれからの成果を期待したい。

 カボチャの遺伝子の塩基配列が決定された。ジャガイモでは、疫病耐性の品種が成果を上げている。また、ベータカロテン(プロビタミンA)やビタミンEなどの必須栄養素が大きく向上した「ゴールデン」ジャガイモも開発された。また、トマトでもプロビタミンAおよびリコペンを含む総カロチノイドがそれぞれ169%および111%と大幅に増加したものが開発された。カロチノイド抽出物は対照より89.5-96.5%高い抗酸化活性を有し、形質転換されたトマトはビタミンE(α-トコフェロール、494%)、スクアレン(210%)およびフィトステロール(94%)の上昇も示した。

 サハラ砂漠以南で重要なササゲに有用なBT蛋白質を遺伝子導入し25%収量を上げた品種が開発されたことや、オーストラリアで初めてバナナのパナマ病に耐性を持つ品種が開発されたことは大きなニュースである。また、地域が限定されるがバングラデシュで、Btナス農業者への奨励策として来シーズンから種子を無料で配布するのは好ましい話題だ。

 これらに対してEUは、遺伝子組換え作物に対して相変わらずの状況である。欧州食品安全機関(EFSA)の遺伝子組換えパネル(GM Panel)は、欧州連合(EU)に遺伝子組換え(GM)テンサイの再認証を行ったまでは、よしであるが、輸入および加工のためのGMテンサイH7-1の承認更新のためのもので、相変わらずEU内での栽培を除外している。我が国がいわゆる組換え禁止条例を持っているところと同じ状況にある。しかし英国で遺伝子組換えで着実に疫病耐性ジャガイモの新品種が出てきて、これには打ち傷が少なくしかも品質向上と収量増を図っていることは大きな貢献である。

世界
米国の大規模研究ではグリホサートと癌の間に関連は無し

南北アメリカ
コムギの茎サビ病耐性遺伝子を同定
ビタミンAおよびE含量が高い組換えゴールデンジャガイモを開発
カボチャの遺伝子配列を決定
マルカマメシンクイ蛾を防除するBT蛋白質産生組換えササゲを開発

アジアと太平洋
オーストラリアでは世界初のパナマ病耐性バナナを作成
遺伝子工学により高抗酸化能のトマトを開発
バングラデシュ政府がBTナス農業者に奨励策を提供
中国の科学者は海水で栽培可能なイネを開発

ヨーロッパ
欧州食品安全機関がEUでの組換えテンサイを再承認
コムギのゲノム配列解析が完了
疫病耐性ジャガイモの開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/121400016/

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