【GreenInnovation Vol.344】

組換え農作物の検査法、安全性審査を終えた後の“空白期間”が既に4カ月

(2017.11.24 10:30)
河田孝雄

 1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。原則として第4木曜日のGreenInnovationメールを担当しております。

 今回は「組換えDNA技術応用生物の検査方法」を話題にします。

 まずは、食品ではない話題から。未承認の組換え生物の検査方法については今年、大きな話題があります。2017年春にフィンランド食品安全局が公表したことをきっかけに判明した、未承認遺伝子組換えペチュニアが日本市場にて流通していた、という問題です。この問題のときには、かずさDNA研究所が検査法の確立に協力した、と農林水産省から聞きました。

 なお、これらの組換えペチュニアの販売実績を集計したところ、年4000万円ぐらいという結果を得ました。来月(2017年12月)18日に発行する「日経バイオ年鑑2018 ~研究開発と市場・産業動向~」の編集を進めながら計算しました。

 さて、次は、「組換えDNA技術応用食品の検査方法」です。日本にはこの検査方法が2つあります。

 厚生労働省が所管する「安全性未審査の組換えDNA技術応用食品の検査方法」と、消費者庁が所管する「安全性審査済みの組換えDNA技術応用食品の検査方法」です。

 違いは「未審査」と「審査済み」です。厚労省の未審査の検査方法は99ページ、消費者庁の審査済みの検査方法は48ページの構成です。

 以下の厚労省のウェブサイト「組換えDNA技術応用食品の検査方法」にリンクが掲載されています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/idenshi/kensa/kensa.html

 今回これを話題にする理由は、おもしろい案件を見つけたからです。ある組換え農作物の検査法が、未審査の時点では公表されていたのに、安全性審査済みになった途端、検査法が公開情報から無くなったのです。検査法が公表されていない“空白期間”は既に4カ月を超えました。

 具体的な対象は、2017年7月20日に安全性審査を終えたことが官報に掲載された「アクリルアミド産生低減及び打撲黒斑低減ジャガイモ(SPS-00E12-8)」です。申請したのは、1946年に世界で初めて冷凍フレンチフライ製品を販売した米J.R. Simplot社です。アクリルアミド産生低減、打撲黒斑低減の性質を持っています。

 このジャガイモ(バレイショ)の検査法は、2016年3月に厚労省の「未審査の検査方法」に追加されましたが、2017年7月20日の官報掲載により「審査済み」になったため、厚労省の資料からは削除されました。

 審査済みになったので、検査法の掲載先は、消費者庁の「審査済みの検査方法」になるはずなのですが、まだ、追加されていません。

 担当の消費者庁の食品表示企画課によると、日本市場に当該の組換えジャガイモがすぐに輸入されることは無いと分かっているので、まだ追加していないとのことです。業務の優先順位の関係から、まだほとんど手つかずの状態のようです。正式な検査法を確立するためには、組換え分析の専門家のいる機関(たとえば、厚労省が検査法の開発を依頼している国立医薬品食品衛生研究所)に相談する必要があるようです。

 未承認でも、承認でも、遺伝子組換えで導入された外来遺伝子などを標的とする検査法そのものに大きな違いがないので、“暫定版”として、厚労省の検査方法を、消費者庁の検査方法としてそのまま移す、という形をとってでも、“公開を継続”すべきではないでしょうか。

 飼料関係では「暫定検査法」という記載があります。農林水産省関連の独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の飼料関係通知の一覧を見ると、

http://www.famic.go.jp/ffis/feed/sub1_tuti.html

 最近では、2016年8月25日付けの通知である「遺伝子組換え小麦(MON71700及びMON71800)の暫定検査法(平成28年8月25日・28消安第2364号)」があります。

 国立医薬品食品衛生研究所において検討された検査法の妥当性が確認され、厚労省が未審査の検査方法に、この検査法を追加したことを受け、農水省では、この検査法を飼料に係る暫定検査法として定めた、とのことです。

 消費者庁の食品表示企画課は、2017年4月に始まった「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」の事務局を務めています。ですので、多忙なことは容易に理解できます。それだけに、無駄を排して迅速対応できる仕組みに移行していくのがよいのでは、と思います。

 先週金曜日(2017年11月17日)の第6回遺伝子組換え表示制度に関する検討会では「遺伝子組換え表示の表示方法の考え方(案)」が事務局から示されました。

 導入遺伝子を検出できるコーンフレークなどを、表示の対象に新たに加える方向性は既に打ち出されています。組換え体を複数掛け合わせたスタック品種が多く流通しているトウモロコシを想定して、より良い表示制度への進化を望みます。異種遺伝子が入っていない新タイプの精密操作技術で育種された品種の実用化も迫っています。

 毎月第2・第4木曜日に配信している日経バイオテクGreenInnovationメールに掲載している記者や専門家によるコラムを掲載します。

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