【GreenInnovation Vol.329】

アグリバイオ最新情報【2017年3月】のハイライト

(2017.04.13 08:00)

アグリバイオ最新情報【2017年3月】のハイライト
       ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 既に各種メディアからの報道で承知の方も多いと思うが、3月1日に日本農学アカデミーが我が国で初めて、農学の専門学術関連機関として遺伝子組換え作物の栽培実証試験を早期に実施すべきとの提言を出した。提言は、当アカデミーのホームページに発表すると同時に、郵送で中央官庁、地方自治体、学会、研究機関などに発出すると共に農林水産省の記者クラブで記者会見を行った。内容は、今回のニュースに少し手を加えて紹介すると以下のようになる。

1.国の主導のもとに学術団体も協力し、日本の農業環境においても海外と同様の利点を発揮することを確認するために適切な管理下で、遺伝子組換え作物の利点の実証栽培を日本各地で行うこと。
2.雑草防除と直播に効果が高いと期待される遺伝子組換え除草剤耐性テンサイの北海道における栽培試験が行える環境作りに国と道が取り組むこと。
3.上記の試験結果を公表し、国民的検証に付することにより、遺伝子組換え技術の農業上の利点の理解を促進すること。

 学術団体として正しい科学的論拠に基づいて提言したことに大きな意義がある。

 上記に関連して米国国立科学・工学・医学アカデミーは、先に詳細な組換え作物に関する包括的報告書を出したが、これに対して利益相反がされていないとPLOS Oneの論文で指摘された。国立科学・工学・医学アカデミーはすぐさま、この論文に対して思慮の無いものであるとの声明を発表し、改めて「報酬無しで奉仕した委員会メンバーが、この重要な問題について徹底的かつ慎重な調査を献身的に実施したことに感謝している。米国政府は、国立アカデミーが政策決定と一般市民に証拠に基づいた情報を提供するために、多くの専門家が快く奉仕してくれたことを、幸いかつ誇りにしている。我々はこの報告書を誇りとし、委員会の意見に従うものである。報告書は今日までに、169カ国から3万3618回のダウンロードがなされた」と表明した。

 また、米国政府は、科学アカデミーに対して3つの規制機関(米国環境保護庁(EPA)、米国食品医薬品局(FDA)、米国農務省[USDA])が、次の5年から10年の遺伝子組換え製品の未来と未来の製品の動向を洞察し、今後の各機関が備えるべき能力を予見して提供することを委託した。これに対し、直ちに「自然科学、規制、社会科学を含む遺伝子組換えの期待される成長の主要分野において、科学的能力、ツール、専門知識高める必要がある。」との報告をまとめつつある。

 さて、我が国は、どうするのか? 特に北海道のように農業を含む1次産業をどうするのかが政府および関係機関に問われているのは間違いない。この点に関して北海道の農業者が、自分で考え自分で行動を起こし始めたことに注目したい。昨年は、北海道農業を考える会(約100名)が発足し、今年の1月には、テンサイ栽培研究会(約30名)が発足したことに注目したい。後者は、4月11日に発足記念公開セミナーを地元北見で開催する。北海道庁をはじめ研究者特に農業者が講演し、議論することになっていることに注目したい。

 今月のニュースとしては、米国環境保護庁は、アイルランドのジャガイモの飢餓を引き起こした病原体に抵抗性のある米J.R. Simplot社の遺伝子組換え(GE)ジャガイモ3品種の栽培を承認した。EPAによると、GEジャガイモは環境に対して安全であり、食しても安全としている。また米Cornell UniversityのSarah Davidson Evanega教授(Cornell Alliance for Science所長)は、「気候変動に関する科学的コンセンサスを維持しながら、GM作物の安全性に関する科学的コンセンサスを否定することはできない」と語り、遺伝子組換え生物(GMOs)についての見方をもう一度見直すように、またケースバイケースで各GMOを評価し、消費者と環境に対するリスクと利益を評価するように促した。

 また、米Arizona State Universityの植物遺伝学者であるMonica Schmidt氏らは、Aspergillus.リボ核酸(RNA)の断片をトウモロコシに取り込ませた。宿主植物と真菌の間で小さい遺伝子情報を感染中に交換して、アフラトキシンを産生する真菌の能力を停止または消滅させた。この技術は、アフラトキシンフリーとするのに100%有効で、試験の結果では、アフラトキシンフリーの穀粒を生産できた。これは、大きな福音をもたらすと期待される。

 中国農業科学アカデミーのYongwei Sun氏が率いる研究でCRISPR / Cas9技術を用いて、高アミロースイネを開発する可能性を示したことは、評価が高いと考える。

世界
米国国立科学アカデミー、PLOS One論文に異論を申し立て
米国国立科学アカデミー、未来の組換え製品の準備に関する報告書を発表

南北アメリカ
米国環境保護庁、3品種の組換えジャガイモを承認
Cornell University教授が遺伝子組換え作物の消費を促す
真菌由来のRNAを用いてアフラトキシンフリーコーンを開発

アジア・太平洋
日本農学アカデミーがGM作物の圃場試験の実施を提言

欧州
欧州化学物質庁がグリホサートに発癌性は認められないと結論

研究
CRY10AA遺伝子は、組換えワタにワタゾウムシ耐性を付与

新育種技術(NBT)
CRISPR / CAS9による高アミロースイネの開発

作物バイテク以外
ゲノム編集によりブタ繁殖・呼吸器症候群抵抗性のブタを開発

国際アグリバイオ事業団(ISAAA)アグリバイオ最新情報【2017年3月】 https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/041100008/

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