【GreenInnovation Vol.324】

舞鶴湾の1日調査で128魚種を把握、運命の赤い糸を紡ぐ組換えカイコ

(2017.01.26 08:00)
河田孝雄

 1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。原則として第4木曜日のGreenInnovationメールを担当しております。

 今回は、海域の魚類を高効率で把握できる新技術と、遺伝子組換えカイコの実用化拡大への取り組みとを紹介します。

 1つ目の話題では、千葉県立中央博物館生態・環境研究部長の宮正樹さんらが開発した魚類メタバーコーディング用ユニバーサルプライマー「MiFish」が、実際の海域における魚類の調査に役立ったという論文を紹介します。

 2つ目の話題では、既に検査薬や化粧品の原料生産などに実用化されている遺伝子組換えカイコを、蛍光シルクやクモ糸シルクの生産にも実用化する取り組みが進んでいることを紹介します。

 さて、1つめの話題に戻ります。

 神戸大学大学院人間発達環境学研究科学術研究員の山本哲史さんらは、環境DNA多種同時検出法(メタバーコーディング)が、魚類生物相の調査に役立つことを実証した成果を、Springer Nature社のオープンアクセスジャーナルであるScientific Reports誌にて2017年1月12日に発表しました。

 この新技術を用いることにより、1日の現地調査だけで舞鶴湾の128もの魚種を検出できました。2002年から14年間にわたり合計140回実施された潜水目視調査で観察された種の6割以上を含んでいた、目視では区別しにくい仔稚魚期を調査海域で過ごす魚種も検出できたとのことで、目覚ましい技術革新といえるのではないでしょうか。

(2017.01.12 19:00)
神戸大など、環境DNAメタ解析により1日調査で舞鶴湾の128魚種を検出
千葉県の宮部長らが開発した魚類プライマー「MiFish」を野外で初適用
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/01/12/02147/

(2016.08.02 08:00)
ファスマック、環境DNAから魚種を判定するNGS解析の受託開始
千葉県立中央博物館の宮部長らの「MiFish」成果を活用
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/08/02/01280/

 2つ目の話題は、遺伝子組換えカイコです。

 先週木曜日(2017年1月19日)に東京の秋葉原で、農研機構シンポジウム「第1回 カイコ・シルク産業の未来 産業革命による新産業創出に向けて」が開かれ、予約満席で220人ほどが参加しました。

(2017.01.06 00:00)
農水省の2017年度予算、「蚕業革命による新産業創出」に1億6000万円
1月19日のシンポではアステラスや新菱冷熱も発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/01/05/02115/

 いま話題の第4次産業革命の1つともいえるのではと思いますが、農林水産省では、この蚕業革命により、付加価値の高い製品を生産する拠点を全国に3カ所ほど実現することを目標としています。

 世界最大規模という閉鎖系無菌大型養蚕工場の建設が熊本で進んでいますし、一般の養蚕農家における遺伝子組換えカイコの飼育も、早ければ2017年秋頃から実現する見込みのようです。

 1月19日のシンポジウムでは、現代美術家のスプツニ子!さんが「テクノロジーと現代アートのコラボレーション-未来の価値創造に向けて-」と題した基調講演を行いました。英国のインペリアル・カレッジの数学科を卒業して現在はMITのメディアラボの助教です。ゲノム編集技術を用いたGene Driveの発案者も、同じ大学内とのことです。

 スプツニ子!さんは農研機構と連携して「運命の赤い糸をつむぐカイコ」を開発しました。

 このカイコは、共感ホルモンや幸せホルモンともいわれるオキシトシン(アミノ酸残基9個)を絹糸内に発現するようにした組換えカイコと、理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)シニア・チームリーダーの宮脇敦史さんらが開発したサンゴ由来の赤色蛍光色素を絹糸に発現するようにしたカイコとを交配して生まれました。

 5分間ほどのビデオが作製され、YouTubeにて公開されています。面白いのでぜひ、ご覧ください。

Sputniko! "Red Silk of Fate - Tamaki's Crush"
スプツニ子!「運命の赤い糸をつむぐ蚕 - タマキの恋 」
https://www.youtube.com/watch?v=08BFqcZ1xYI

 スプツニ子!さんは、日本の文化の奥深さに着目することが重要と、指摘しました。創建が730年で1300年近い歴史がある神田明神で「IT情報安全祈願」のお守りが販売されていて、日本土産として米国の仲間に好評であることも紹介しました。

 この神社との話し合いを踏まえて、「運命の赤い糸」にまつわるお守りやおみくじを、2016年瀬戸内国際芸術祭の豊島八百万ラボ(スプツニ子!)にて販売を開始しました。現在でも現地にて、購入できるそうです。

 毎月第2・第4木曜日に配信している日経バイオテクGreenInnovationメールに掲載している記者や専門家によるコラムを掲載します。

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