【GreenInnovation Vol.321】

アグリバイオ最新情報【2016年11月】のハイライト

(2016.12.08 08:00)
日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

 今月のニュースには、遺伝子組換え作物・食品に対する社会の受容性が高まっていることを示すものや、遺伝子組換え作物が地球環境保全にいかに役立つかを示すものが多く出ている。

 まず、第一に、Purdue大学の研究では、GM作物の世界的な禁止が食品価格を引き上げ、さらにおよそ10億t相当の二酸化炭素を大気中に増やすことになることを明らかにしている。しかも、もし米国のGM作物栽培率と同じようにその他の国も栽培するならば、世界的な温室効果ガス排出量は2億t相当の二酸化炭素の低下をもたらし、80万ヘクタールの農地(約200万エーカー)を牧草地と森林に戻すことができるという。また、温室効果ガスの排出を減らそうとしているグループの中には、GMOを禁止したいと思っているグループもあるが、これは両立せず、GM作物の栽培が農業による二酸化炭素排出量を削減する道であると指摘している。

 次に、英国の調査会社のPopulus社がドイツ Bayer Crop Science社に依頼されて行った調査によると、遺伝子組換えに対する態度が過去2年間で著しく軟化しているという。すなわち、2000人以上が回答したオンラインアンケートでは、その3分の2が、GM食品が公衆衛生や環境に悪影響を及ぼさない限り、GM食品を支持すると表明した。原則としてGM作物を受け入れると答えたのは約半数(54%)だった。また、GM食糧が増え続ける人口を養う唯一の解決策だと考えている人は10%に上った。 回答者のわずかな割合(27%)が、GM食品を受け入れないと主張している。

 遺伝子組換え作物の栽培について、米国連邦控訴裁判所は、ハワイ郡が農薬や遺伝子組換え(GM)作物を規制することができないとする判決を発表した。 これはハワイ郡における、GM作物を栽培することへの部分的な禁止請求に対応するもので、この判決により、禁止請求は無効となった。控訴裁判所は、この禁止が州法と連邦法に違反していると述べた。 また、ハワイ州の農薬法は、安全措置が十分に包括的であり、それが「統一的で、追加的な現地の規則を満たしている」とした。
 また、EU離脱を決めた英国の動きが興味深い。EUを離脱した後、英環境・食糧・農村地域省において、遺伝子組換え生物(GMOs)の使用に関する方針を変更する予定があるかどうかについての書面での質問が議会に提出された。 これに対するEU議会への答えでは、政府はEUの出口準備の一環として、GMOの規制のための将来の取り決めを検討しているとGeorge Eustice環境・食糧・農村地域大臣は述べた。さらに政府の一般的見解として、この分野の政策と規制は科学に基づいて行うべきであると述べている。

 技術的な面では、英国のRothamsted研究所の話題が注目される。同研究所は、2017年から2018年にRothamsted圃場で遺伝子組換え(GM)コムギの圃場試験を実施するため、環境・食糧・農村地域省(Defra)に申請書を提出した。研究中のGMコムギは、Rothamsted 研究所、 英University of Essexと英Lancaster Universityで開発された光合成効率が良く、光エネルギーを植物バイオマスに高効率に変換できるものである。圃場試験は、GMコムギの現場での性能を評価するために実施される。 現在、申請に関する公的協議が行われている。いよいよコムギについての試験が可能になりそうである。

世界
FAO、気候変動に対してバイオテクノロジーの促進を求める
GM食品の禁止は食品価格高騰と10億tのCO2増加を招く

南北アメリカ
USDAが打ち傷や褐変の出ない遺伝子組換えジャガイモ販売許可
遺伝子組換え栄養補助食品は社会に受容されているとの調査結果
米連邦控訴裁判所がハワイ郡でのGMO禁止請求を棄却

アジア・太平洋
日本人研究者が朝顔のゲノムを解読

ヨーロッパ
Brexitにより英国はGM作物を栽培することになると大臣答弁
Rothamsted研究所がGMコムギの圃場試験を申請した
英国での世論調査で3分の2がGM作物に賛成

文献備忘録
ISAAAインフォグラフィック:承認されたGM植物種
GM作物の導入国と輸入国への影響に関するISAAAの動画

国際アグリバイオ事業団(ISAAA)アグリバイオ最新情報【2016年11月】
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082400010/120700004/

 毎月第2・第4木曜日に配信している日経バイオテクGreenInnovationメールに掲載している記者や専門家によるコラムを掲載します。

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