バイエルとデジタル農業、築地市場の豊洲移転、「コイの多くは外来種」で市民講座【GreenInnovation Vol.316】

(2016.09.23 10:30)
河田孝雄

 1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。原則として第4木曜日のGreenInnovationメールを担当しておりますが、今月(2016年9月)の第4木曜日の9月22日は「秋分の日」で祭日でしたので、翌日の金曜日に配信します。

 今回はまず農業分野で、ドイツBayer社による米Monsanto社の買収合意の話題から。

(2016.09.16 08:37)
Bayer社によるMonsanto社の買収の狙いは?
農業ビジネスの補完と研究開発の増強の効果を期待
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/09/16/01524/

 農薬・種子関連の売上高が年3兆円に迫る規模の巨大企業が誕生します。Bayer社の農薬と、Monsanto社のバイオ・種子技術との組み合わせは理想的とされ、Monsanto社は情報技術(IT)の活用でも先進的とのこと。ゲノム情報をピンポイントで編集できるゲノム編集技術の進歩ともども、デジタル農業の進展に寄与しそうです。

 環境分野では、東京都の中央区の築地市場が、江東区の豊洲市場に移転する予定が、大幅に遅れる話題を。

 土壌対策費が850億円を超えていることは以前から、有識者でつくる技術会議の委員の方から伺っておりましたが、盛り土問題にはびっくり。経緯が次々と分かってきましたね。

 バイオレメディエーションのプロジェクトでは、土壌汚染対策費の市場規模として、この豊洲市場の数値が用いられているケースがあります。

 3つめの話題は、「鯉(コイ)は『侵略的外来種ワースト100』の驚き」です。

 9月10日にセリーグ制覇を決めた広島カープの活躍、目立ってますね。カープは「鯉(コイ)」の英語Carpに由来しています。広島市を流れる太田川が鯉の産地であることなどから名付けられたとのこと。5月の鯉のぼりの季節までは強くても、半年間にわたる長期のペナントレースで強さがなかなか継続しなかったようで、優勝は25年ぶりとのことです。

 優勝を決めた9月10日の巨人戦で先発した9人は全員、ドラフト指名で獲得した「生え抜き」の日本選手でした。ヤンキースの4番も務めた打ったと聞き、驚きです。大リーグのヤンキースの4番も打ったドミニカ共和国出身のソリアーノを育てたのも、広島カープ。人を育てる仕組みも優れているのでは、と思います。

 さて、コイが実は「侵略的外来種」であることは、日本ではあまり知られていないように思います。日本魚類学会が2016年8月27日に名城大学(名古屋市)で開催した市民公開講座「魚類にみる最新の外来種問題」では、コイの問題が大きく取り上げられました。

 国立環境研究所生物・生態系環境研究センター生物多様性資源保全研究推進室主任研究員の松崎慎一郎さんは「世界ワースト外来種100のコイが在来生態系に及ぼす影響」と題する講演を行いました。国立環境研究所が運用している「侵入生物データベース」の「日本の外来生物」の「魚類」にも、コイは収載されています。

 松崎氏の講演の直前には、東京大学大気海洋研究所海洋生命科学部門分子海洋生物学分野助教の馬渕浩司さんは「コイは外来魚か?最新のDNA研究から見えてきたこと」と題した講演を行いました。

 閉会あいさつは、日本魚類学会自然保護委員会の委員長を務める岐阜経済大学教授(淡水生態学・環境科学)の森誠一さんが「それはThe New Wildか?」というタイトルで行い、「コイは悪者になりすぎでは。きっと何かいいこともやっていると思う」と話しました。

 New Wildについては、この7月に出版された翻訳本を8月に読んだばかりでして、森さんにこの本の評価を伺いました。

(2016.08.25 08:00)
ゲノム編集の学会に注目、遺伝子組換え食品の検査とアマニ油【GreenInnovation Vol.314】https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/greenmail/16/08/24/00017/

 さて、日経バイオテクでこの話題をわざわざ取り上げるのには、理由があります。上記の馬渕さんの講演タイトルにあるように、急速に進歩するDNA解析技術が生態学や生物多様性の研究に寄与していることがあります。

 そして何より、外来生物の規制は、バイオテクノロジーの規制と関係が深いのです。外来生物を規制する「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」は04年6月に公布されて05年6月に施行されたのですが、公布が1年前の03年6月だった「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」ともども、生物多様性関連の重要な法律だからです。

 これら国内法令の基となる生物多様性条約は、「生物多様性条約(生物の多様性に関する条約)」と「カルタヘナ議定書(生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書)」とがあります。

 なお、世界の外来種ワースト100を発表したのは、国際自然保護連合(IUCN)では、魚類は8種ありまして、ウォーキングキャットフィッシュ、オオクチバス、カダヤシ、カワスズメ、コイ、ナイルパーチ、ニジマス、ブラウントラウトの8種です。

 一方、日本生態学会が選定している「日本の外来種ワースト100」では、魚類は淡水魚8種が指定されていますが、こちらにはコイは含まれていません。オオクチバス、カダヤシ、コクチバス、ソウギョ、タイリクバラタナゴ、ニジマス、ブラウントラウト、ブルーギルです。

 お気付きですか、食用としてコイ以上に身近なニジマスは、日本でも世界でもワーストなのです。ニジマスをめぐる「深い話」はまた別の機会にお伝えします。外来種ワースト魚類とはいえ、大量に養殖されて、食卓に届けられているという実情があります。

 日本の外来種ワースト100の魚類8種の最後のブルーギルは、1年前の日経バイオイテク2015年10月26日号の特集記事のメイン生物の1つです。ぜひ記事をご覧ください。

(2015.10.26 07:32)
ゲノム編集育種の実用化
カルタヘナ対象外を明確化、外来生物対策で野外放出へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20151026/188137/

(2016.03.11 00:00)
環境省がカルタヘナ法の施行状況検討に「ゲノム編集」追加
報告書(案)のパブコメを3月10日開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/03/11/00364/

 毎月第2・第4木曜日に配信している日経バイオテクGreenInnovationメールに掲載している記者や専門家によるコラムを掲載します。

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