ゲノム編集の学会に注目、遺伝子組換え食品の検査とアマニ油【GreenInnovation Vol.314】

(2016.08.25 08:00)
河田孝雄

 1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。

 今回はまず、甲子園やリオの観戦をお供にしてこの夏に読んだ書籍の中からお薦めを紹介します。

「外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD」
ジャーナリストFred Pearce原著
草思社 2016年7月20日第1刷発行 1800円+税

「人類のやっかいな遺産 遺伝子、人種、進化の歴史」
英国科学ジャーナリストNicholas Wade原著
晶文社 2016年4月30日初版 2200円+税

「生殖医療の衝撃」
石原理・埼玉医科大学教授
講談社現代新書 2016年8月20日第1刷発行 800円+税

 最初の「THE NEW WILD」は、(いわゆる)遺伝子組換え生物を育てることを各国で規制する(いわゆる)カルタヘナ法の取材で、外来種の位置付けについて考えることが多い中で、とても参考になります。

 また2番目の「人類のやっかいな遺産」と3番目の「生殖医療の衝撃」は、“元気な赤ちゃん”を育むことが国家的課題でもある日本の多くの方々に読んでもらいたいと思いました。

 このメールの中核革新技術である“ゲノム編集”の注目書籍も、この夏に相次ぎ発行されました。

「ゲノム編集の衝撃 『神の領域』に迫るテクノロジー」
NHK「ゲノム編集」取材班
NHK出版 2016年7月25日第1刷発行 1300円+税

「ゲノム編集とは何か 『DNAのメス』クリスパーの衝撃」
小林雅一
講談社現代新書 2016年8月20日第1刷発行 800円+税

 来月(2016年9月)の第2週の火曜日(6日)と水曜日(7日)には、日本ゲノム編集学会の第1回大会が、広島国際会議場で開催されます。当方も学会を取材する予定です。学会長の広島大学教授の山本卓さんのインタビューが、NHK取材班の書籍に掲載されています。ぜひご覧ください。

http://jsgedit.jp/

 さて、取材活動のほうでは、アマニ油に関連する記事を最近まとめました。
[2016-8-10]
日本製粉、αリノレン酸が豊富なアマニ油の健康食品を8月22日発売
上位品は小さじ1杯で血圧、2杯でコレステロールの機能性相当量超
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/08/09/01326/

[2016-7-20]
日本製粉が初の機能性表示食品、コレステロール下げるαリノレン酸「アマニオイル」
アマニ油の機能性表示で先行する日清製油とキユーピーは血圧高め対策
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/07/19/01170/

[2016-8-19]
【機能性食品 Vol.250】、機能性表示食品の届け出は日本水産が21件に、
福島のヒラメ試験操業が9月開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/foodmail/16/08/19/00036/

[2015-5-15]
日本製粉、新たな機能性食品表示制度でセラミド、アマニ、機能性野菜、パミスエキスの販売に注力
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150515/184825/

 この関連で、7年前に問題になったカナダ産アマの遺伝子検査命令がその後、どうなっているか調べてみました。

[2009-12-1](フリーランスの松岡真理さんがまとめた記事です)
カナダ産アマの組み換え遺伝子検査命令でアマニ商品が品薄状態に、市場への影響広がる
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/7246/

 国(厚生労働省)は、食品の輸入元の国・地域ごとに、「検査命令」や「自主検査」を行っております。

 「検査命令」の場合、現在、120の検査対象項目がありまして、そのうち、遺伝子組換えの検査は、「カナダ産アマ」が唯一でした。現在も継続して実施されています。

厚労省ウェブサイトの深いところにある情報なので、アクセスするには何度もクリックする必要があるのですが、「厚生労働省 医薬・生活衛生局 生活衛生・食品安全部 監視安全課 輸入食品安全対策室」(組織名も長いのです)の方に丁寧に教えていただきました。

○厚生労働省トップページ
分野別の政策:食品
輸入食品監視業務
施策紹介→監視指導・統計情報
平成28年度 監視指導 検査命令実施通知

120件の通知の一覧表が記載されていまして、そのうち、1件が
対象国・地域:カナダ
製品検査の対象食品等:亜麻およびその加工品
検査の項目:安全性未審査の遺伝子組み換え亜麻(FP967)

でした。なお、120件のうち10件は、「対象国・地域」を「全輸出国」と記載しています。

 一方、「自主検査」では、コメ加工品は中国とベトナムの2カ国、パパイヤは中国、ベトナム、タイの3カ国が対象です。

■2016年1月12日に改正
コメ加工品、中国、ベトナム、
パパイヤ 中国、ベトナム、タイ

○厚生労働省トップページ
分野別の政策:食品
輸入食品監視業務
監視指導・統計情報
平成27年度 監視指導 その他の監視指導に関する通知
2016年01月12日掲載 PDF 生食輸発0112第1号「安全性未審査の組換えDNA技術応用食品の取扱いの一部改正について」

です。

 日本で未承認の遺伝子組換え食品が、日本に入ってこないように、水際の大変な努力を、国も行っているわけです。カナダ産アマニの場合も、検査対象の除草剤耐性遺伝子が明確ですので、遺伝子検査で水際対策が可能なのです。

 ゲノム編集技術などの登場により、従来型の突然変異育種と区別がつかない新しいタイプの農作物の育種が、世界で爆発的に進んでいます。現在のような水際での遺伝子検査では対応できないことは自明です。制度の変更は必至といえるのではないでしょうか。

 輸入食品については対応できないのに、日本で開発される農作物・食品については、従来型の遺伝子組換え食品に準じる、というのは、日本の研究環境に大変な悪影響を及ぼす、と日頃思っています。

 なお、バイテク情報普及会が、3週間後の9月12日(月)の14時から、「バイテク作物商業栽培20周年記念セミナー」を都内で開催します。

 このセミナーでは、「バイテク作物商業栽培開始から20年を迎えたことを契機に、バイテク技術及び作物の過去20年の歴史をふり返るとともに、様々な分野でバイテク作物・技術と関わりをお持ちの方にご講演いただき、今後わが国においてこの技術に何が期待できるかを皆様とともに考えていきたいと思います」とのことです。

セミナーの詳細につきましては、以下リンク先の案内状をご覧ください。

※セミナーご案内状・申込書
http://www.cbijapan.com/material/dl/siryou/20160824/20th_seminor_gyoukai160824.pdf

 毎月第2・第4木曜日に配信している日経バイオテクGreenInnovationメールに掲載している記者や専門家によるコラムを掲載します。

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