アグリバイオ最新情報【2016年5月】のハイライト【GreenInnovation Vol.309】

(2016.06.09 08:00)

アグリバイオ最新情報【2016年5月】のハイライト
       ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

5月のハイライト

 米国科学、技術および医学アカデミーが出した「遺伝子組換え作物:これまでの経験とこれから」と題する報告によると、遺伝子組換え(GE)作物は、従来育種法による作物と人の健康や環境へのリスクの点で差がないとのことである。報告書は2年間にわたり、50人以上の科学者によって行われた大規模な研究の結果に基づいている。1996年に商業栽培されてから900もの遺伝子組換え(GE)作物の研究からのデータを検討したものである。

 上記の文献は、英国作物生産協議会(BCPC)が遺伝子組換え技術およびその関連技術に対する反対勢力に対抗する際にも使われている。BCPCのRuscoe博士は、最近の米国科学・工学・医学アカデミーが30年かけて900報の研究を調査してGM食品がヒトの健康と環境に悪影響を与えた証拠は認められないとした報告を引用し、「この報告書を考えると、(GMに反対する)グリーンアライアンスが、作物の遺伝的改変への思想的反論をどう正当化し続けるのかを知りたい」と述べている。

 残留農薬に関するFAO / WHO合同会議(JMPR)は、食事を介して曝されるヒトに対してグリホサートが発癌性リスクをもたらす可能性はほとんどないと結論づけた。報告書は、グリホサートについては多くの生物を用いた遺伝毒性に関する様々な試験が大規模に実施されていると述べている。それらの全体の証拠によると、ヒトの食事を通しての暴露に相当する2000 mg / kg体重のグリホサート及びそれに相当する調合剤を、ヒトに対する遺伝毒性を評価するのに適切なモデル哺乳動物に経口投与しても、全く遺伝毒性がなかったという。

 上記のような動きが我が国の相当する機関から全くみられないのはどういうことなのか、懸念を持っている。特に科学技術立国を標榜している中で、科学的な見解がでないのは全く理解できない。

 University of Wisconsin-Madison校のPhil Simon氏が率いる科学者チームは、Nature Geneticsにニンジンの全遺伝子コードを発表した。ニンジンのゲノムは、9染色体に32,000を超える遺伝子が配置され、害虫や病害抵抗性コード、カラフルなカロテノイドおよび他の形質をコードしている。「ニンジンは作物として良い評価を得ており、栄養価、特にビタミンAとして重要である。我々はそれが栄養の重要な供給源であることを知っている。また、遺伝子を深く掘り下げることができるようになり、作物を改良する道具立てを加えることができたことなる」とSimon氏は述べた。

 Cold Spring Harbor Laboratory (CSHL)の生物学者は、植物がその幹細胞の増殖の調節機構を説明する重要な発見をした。新たに発見された経路は、植物の成長の先端に位置する幹細胞のニッチ(成長点、meristem)に対して末端(原基、primordia)から信号を送り出す。この発見で、FEA3遺伝子の「弱めた対立遺伝子」を持つ植物にFEA3受容体の機能を軽度に障害した。成長点からの制動信号を適度にすることにより幹細胞の適度な増加することでトウモロコシの実を野生のものよりもかなり大きなものにした。トウモロコシの実はより多くの子実の列があり、野生のものよりも50%以上の収量増加があった。
これは、作物の収量を大きく上げる手段を手にしたことになると期待できる。

世界
遺伝子組換え食品安全性テスト市場に関する世界的動向および予測
VIB、「植物から作物へ:育種の過去、現在、未来」を発行
全米アカデミー、遺伝子組換え作物がヒトの健康と環境に有害ではないと確認
HO / FAO合同委員会、グリホサートのヒトに対する発癌性はほとんどないと結論

南北アメリカ
University of Wisconsin–Madison校の研究者ら、ニンジンの全ゲノムを解読
新たに発見された幹細胞経路がトウモロコシおよび主要作物の収量を増加

ヨーロッパ
EUでBTトウモロコシへの抵抗性害虫が発生しなかった理由
英国作物保護協議会、グリホサートとGM作物に反対するグリーンアライアンスに反論

研究
BT毒素は、ミツバチの生存、花粉消費、または学習に影響がない
アジアのアワノメイガの寄生虫は、BT毒素に感受性でない

国際アグリバイオ事業団(ISAAA)アグリバイオ最新情報【2016年5月】
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/isaaa/16/06/08/00006/

 毎月第2・第4木曜日に配信している日経バイオテクGreenInnovationメールに掲載している記者や専門家によるコラムを掲載します。

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