育種学会と植物生理学会、内閣府SIP、ゲノム編集など「精密育種」を知ってもらう【GreenInnovation Vol.304】

(2016.03.24 18:00)
河田孝雄

 1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。

 昨日3月23日(水)には、東京・霞が関の農林水産省の農林水産技術会議委員室にて「記者説明会」が開かれました。テーマは「SIP次世代農林水産業創造技術『新たな育種体系の確立』の進捗状況について」と「NPBTを巡るGM規制等の動向について」でした。

 前半はSIPのNBT3系の代表者である筑波大学生命環境系教授の江面浩さん、後半は農林水産技術会議事務局技術安全室長の鈴木富男さんが、それぞれプレゼンテーションを行いました。また、SIPのNBT1系の代表者である農業生物資源研究所ゲノム機能改変研究ユニット上級研究員の廣瀬咲子さんも、発表後の質疑応答のときに登壇しました。

 江面さんと鈴木さんのプレゼン時間はそれぞれ15分とわずかでしたが、充実した内容でした。この分野の専門家ではない記者向けの説明会ですので、それぞれ30分ぐらい割いてもよいのでは、とも思いました。

 配布資料の後ろには、くらしとバイオプラザ21がまとめた「私たちの、そして世界の食生活を支える育種技術~未来への可能性を秘めた新旧技術~」もありました。

 この資料は、3月15日に東京大学弥生キャンパスで開催された日本育種学会の記者会見でも拝見したもので、大変充実した内容です。おそらく、ウェブで公開される(されている)ので、ぜひご覧いただきたいです。

 この記者会見は、日本育種学会第129回春季大会における発表課題を説明するもので、日本育種学会の幹事長を務めている九州大学大学院農学研究院附属遺伝子資源開発研究センター教授の熊丸敏博さんと、同学会の庶務幹事を務めている東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻准教授の岩田洋佳さんが説明しました。くらしとバイオプラザ21の発表は、合計263題の発表演題の中から選定された3課題の1つでした。

 この日本育種学会大会は3月21日と22日に横浜市立大学で開催されました。取材に行きたかったのですが、日経バイオテク3月28日号の特集「ゲノム時代の天然物創薬」のとりまとめに全力を注いでいたため、現地には行きませんでした。

 育種は、これまでの偶然に頼ってゲノムを改変する技術から、ピンポイントでゲノムを改変するプレシジョンブリーディング(精密育種)への技術発展が飛躍的に進んでいます。プレシジョンメディスン(精密医療)は米オバマ大統領の演説でも有名ですが、同じ技術革新は、ヒトの他の生物でも進んでいるのです。

 育種の対象は、生物なので、ゲノムがあります。そのゲノムの塩基配列情報を解析することが新世代シーケンサーの登場で容易になり、解析したゲノム情報に基づいてゲノム編集できる技術がここ数年で飛躍的に発展し、精密育種が可能になってきました。

 ゲノム編集は、NHKのBS1の新番組「コリドール・ラボ」の最初のテーマに選ばれ、3月21日(月)の0時から100分間、放映されました。

 いまNHKのウェブサイトで確認したところ、番組に登場した方々(敬称略)は、【ゲスト】ダイアモンド☆ユカイ、井森美幸、岡井千聖、立川晴の輔、【出演】グラフィックレコーダー…清水淳子、【解説】中村幸司、【司会】鎌倉千秋、【リポーター】中野淳、だったとのことです。

http://www4.nhk.or.jp/P3928/21/

 ゲノム編集は、かように注目度が高いのです。ヒトのゲノム編集にかかわる倫理問題とともに、トマトなどの育種も話題になりました。

 育種についてよく気になるのは「偶然に頼っていたこれまでの育種」が、新世代シーケンサー(NGS)とゲノム編集技術の登場により、「ピンポイントの育種」に変わったことを、どのように伝えることができるかです。

 従来からの交配育種や、化学変異原物質や放射線、重粒子線などを用いた突然変異育種、さらには従来型の遺伝子組換え(GM)育種は、いずれも、偶然に頼る部分がかなり大きかった。ところが、NGSとゲノム編集技術により、ゲノム上の特定の場所を改変することによる育種が可能になってきたのです。

 育種のために、外から遺伝子を導入するGM育種の場合も、従来は、導入した遺伝子がゲノムのどこに入って機能するのかは、偶然に頼っていました。交配育種も変異育種も同じです。また人為的にではなく、自然界で起こった変異が、育種にいかに有効利用されていることも含め、多くの国民に分かりやすく伝えていくには、どうしたらよいのか、ということです。

 3月18日から20日まで岩手大学で開催された第57回日本植物生理学会年会でも、関連の発表が多くありました。現地には参れませんでしたが、追って、報道してまいります。

 ゲノム編集技術の中でも簡便なCRISPR/Casツールの発展は目覚ましいですね。3月20日のNHKの番組「新・映像の世紀 第6集 あなたのワンカットが世界を変える」が秀逸だったと思います。

https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20160320

 育種の世界でも、たとえば街中の金魚屋さんが外注で取り寄せたCRISPRツールを受精卵に注入して金魚を育種する、といったようなことが世界では広まっていくように思います。 つまり日本の日本学術会議などが、この技術の普及にどこまでコミットできるのか、と思います。前に「ゲノム編集はドローンと共通点がある」というメールを配信しました。久しぶりにビックカメラの店内を通ったら、ドローン売り場がありました。

[2015-5-22]
【機能性食品 Vol.189】「ドローン」と「ゲノム編集CRISPR」は似ているかも、
機能性表示食品はゾロゾロトクホ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150530/185237/

           日経BP社
           日経バイオテク編集
           河田孝雄

 毎月第2・第4木曜日に配信している日経バイオテクGreenInnovationメールに掲載している記者や専門家によるコラムを掲載します。

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