【機能性食品 Vol.365】

データ駆動型への進化、内閣府SIP第2期スマートバイオのキーワード

(2019.01.25 11:00)
河田孝雄

 機能性食品メールの配信は、今回を最後とさせていただきます。ちょうど365回目となりました。食品の機能性研究の話題は、日経バイオテクONLINEメールにて紹介してまいります。

 今回は、2週間前の前回メールに続きまして、内閣府SIP第2期のスマートバイオの話題をお届けします。

 キーワードは“データ駆動型”です。

 「データ」は、「それをもとにして、推理し結論を導き出す、または行動を決定するための事実。資料」とされるようですが、今回は特に、“記録された生データ”を特に強調したいと思います。仮想通貨を実現した革新技術「ブロックチェーン」的なものといってもよいかと考えています。

 日本時間で昨日(2019年1月24日)14時試合開始のテニスの試合(大坂なおみ選手が勝利して決勝に進出)、22時試合開始のサッカーの試合(日本がベトナムに勝利してベスト4に進出)ともに、ビデオ判定が重要な意味を持ちました。

 食品の機能性研究とも関連が深いエピジェネティクスの分野(STAP細胞も含む)では、たびたびデータ解析の不正・ねつ造が問題となっていますが、まずは、測定したデータをしっかり保存しておくことが、最初の対策となります。

 「まずはしっかりと元のデータを保存・保管しておくことが大切。データの解釈は、後に変更・更新されてよいけれども」と、2018年4月発足のした東京大学定量生命科学研究所の初代所長に就任した白髭克彦さんは強調なさってました。

(2018.3.30)
【機能性食品 Vol.329】
科学は「定量」、社会は「定性」
東大に定量生命科学研究所、組換え食品表示の検査法は定量から定性へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/foodmail/18/03/29/00144/

 内閣府SIP第2期スマートバイオの研究開発計画には、次のような記載があります。

≪ここから引用≫
 我が国のバイオエコノミーの拡大、農林水産業・食品産業の生産性向上・競争力強化を図るとともに、持続可能な社会の実現とSDGsの達成に貢献するため、産学官・府省連携のバイオ分野と農業分野の一体的なプロジェクト研究の加速的な推進により多大なシナジー効果を生み出し、バイオ・農業分野におけるイノベーションの基盤を構築する必要がある。さらに、「食」による健康増進社会の実現、「食」を生み出す農業にあっては世界的な潮流となりつつあるデータ駆動型のスマート農業の確立、スマートフードチェーンの構築やデータ駆動型育種の推進に必要な技術の開発及び生物機能を活用した革新的バイオ素材・高機能食品の実用化に向けた研究開発と、必要な制度改革・環境整備を実施することが重要である。
≪ここまで引用≫

 このうち、データ駆動型育種プラットフォームのキックオフミーティングは、再来週の金曜日(2月8日)の午後、都内で開催されます。連絡先は、東京大学の岩田洋佳さん。開発協力グループを募集中とのことです。

≪岩田さんの案内資料からの引用≫
データ駆動型育種プラットフォームの開発協力グループは、
1) 育種現場におけるデータ収集・蓄積の効率化
2) 高効率ジェノタイピングやセンサネットワークなどから得られるゲノム・環境データの収集・蓄積
2) 上記データの紐付けと、統合的解析
3) 解析結果に基づく意思決定支援
等の機能を、各企業が容易に利用できるシステムとして開発することを目的としています。

開発に協力いただける企業の方々に、集会に参加いただき、意見交換をさせていただきたいと思っています。

なお、同開発協力グループには、育種関連企業・組織はもちろん、例えば、ジェノタイピング等のオミクス解析サービスの提供、計測システムの開発のようなかたちでご協力いただける企業も歓迎いたします。
≪ここまで引用≫

 岩田さんの研究成果は、ゲノミックセレクションなどを紹介したことがあります。

(2017.07.07)
【機能性食品 Vol.294】
ビッグデータAI農業とゲノミックセレクション、東大などがカンキツの論文発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/foodmail/17/07/07/00102/

 「データ駆動型」という文言は、2015年1月にオバマ米国大統領が発表したPrecision Medicine(精密医療)あたりからよく使われるようになったようです。

 日経バイオテクONLINEでは、2年半までの次の記事が最初でした。

※日経バイオテクONLINE
(2016.7.14)
【NGS特集連動1】東京農大、国立遺伝学研究所との包括協定でゲノム解析連携強化
2017年4月新設の生命科学部にバイオインフォマティクス研究室など新設
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/16/07/13/01134/

 やはり、DNAやRNAの塩基配列情報を解析する次世代シーケンサー(NGS)の技術革新が、データ駆動型社会への移行に大きく影響しています。

 食品の機能性研究が課題解決に大きく貢献すべき“元気な赤ちゃん”、DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease、将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される)仮説でも、データ駆動は重要です。DOHaDは、エピジェネティクスの重要課題です。

 日本産科婦人科学会が2018年9月に発表した調査結果を基にすると、日本で2016年に生まれた赤ちゃん98万人弱のうち、18人の1人は体外受精で生まれたと計算できるようです。

 日本は世界で突出して多いことが知られています。2016年の体外受精は44万7790件行われ、妊娠後に5万4110人の子が生まれました。凍結した受精卵や未受精卵を使った体外受精で生まれたのは全体のほぼ8割に当たる4万4678人だったとのことです。1983年に東北大学で国内初の体外受精による子が生まれてからの累計は2016年までで53万人ほど。現在では60万人超えが確実かと思います。

 この体外受精では現在は、医師が観察して好ましい性質を持ちそうな受精卵を選んでいるかと思いますが、“元気な赤ちゃん”のためには今後は、エビデンスに基づくデータ駆動型に進化していくのがよいように思いますが、皆さんはどのようにお考えですか。

 もともとは自然に行われていた選別に人間が関与するようになると、いわゆるエビデンスに基づくデータ駆動型の進化を続けることが必然、と思います。

 1984年に文部科学省のプロジェクトで世界に先駆けた取り組みを開始した食品の機能性研究は1991年に特定保健用食品(トクホ)として制度化され(現時点で1000品目強)、2015年に制度が始まった機能性表示食品は有効な届出件数が1600件を超えました。

 昨日都内で日本特産農産物協会が開催した「平成30年度地域特産物の持つ機能性等に関する研究会」での講演にて、トクホの開始年が間違って紹介されていた(確か2002年と記載されていた)ので、改めて紹介しました。
 なお、機能性表示食品は1600件超のうち、生鮮食品が24件(他に撤回が1件)あります。そのうちの1つ、Tファームいしいの「ひなとまGABAミディとまと(フルティカ)」(届出番号:D64、届出日:2018年7月10日)について、昨日、徳島県農林水産部もうかるブランド推進課課長補佐の徳永忠士さんが「徳島県における香酸かんきつ類の産地振興について」と題する講演の中で、紹介なさってました。

 日経バイオテク/機能性食品メールは今回が最後ですが、引き続き日経バイオテクをよろしくお願いします。

 原則毎週金曜日に配信している日経バイオテク機能性食品メールに掲載している記者によるコラムを掲載します。

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