定例の保健機能食品のアップデイトです。
機能性表示食品はこの1週間では、先週金曜日(2018年12月14日)に16件の新規届け出情報を、消費者庁が公表しました。届出番号は、D250からD265です。
今回は、新規な機能性関与成分は無いかと思います。
一方、特定保健用食品(トクホ)は、追加はありませんが、新たな関与成分に関する安全性評価について、進捗がありましたので、記事にまとめました。
(2018.12.21)
かどや製油のごま油がLDLコレステロール対策のトクホに前進
明治の体脂肪対策「ヴァームスマートフィットウォーター」が続く
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/12/21/05133/
関与成分が新規であるトクホは、2018年は1品目も登場しませんでした。これまでこの機能性メールでも何回か紹介しましたが、食品の安全性評価はたいへんなのです。
食品に微量加える添加物の場合には、動物試験の結果を基にして、その100分の1の量を安全性確保の目安とする、ということができますが、摂取量が多い通常の食品・食材の場合には、ヒトが日常摂取している量の100倍を、動物に食べさせることが物理的にできないことが、頻繁にあります。
「100分の1」は、ヒトと動物は生物の種が違うことを理由とする「10分の1」と、同じヒトでも個体間(個々人)で体質などに違いがあることを理由とする「10分の1」を掛け合わせた数値です。
後者の個体間の課題は、近年ますます大きくなっているように思います。
1991年から運用が始まったトクホの第1号は、資生堂の低アレルゲン米「ファインライス」でした。ファインライスはその後、トクホから病者用食品に分類が変更になり、07年3月に資生堂は販売を中止しました。
ゲノム編集技術を用いて大豆の主要アレルゲンを低減したという成果が2018年に発表されましたが、食品のアレルゲン問題は難しいです。主要なアレルゲンを減らしていくと、その次の主要なアレルゲンが問題になることが、頻繁にあるからです。
2018年12月10日に都内で開催された広島大学卓越大学院プログラム×OPERA「ゲノム編集」産学共創コンソーシアムのキックオフシンポジウムで、広島大学大学院生物圏科学研究科教授の堀内浩幸さんが、ニワトリのゲノム編集育種による低アレルゲン卵を開発する取り組みについて発表なさり、アレルゲン蛋白質の遺伝子をノックアウトしても、ノックアウトの内容によっては抗原性が残る場合があるので確認していくことが重要、という旨をお話しになっていました。まさにその通りと思います。ノックアウトといってもいろいろな内容を含みます。フレームシフトにより、天然の蛋白質と比べると途中からアミノ酸配列が変更された蛋白質が生じる場合があります。
幸い、日本の食品アレルゲンの表示制度は、消費者の方々の賛同を得ながら好ましい方向で拡充していっていると思っていますが。
食品とは離れてしまいますが、臓器の移植などにおける主要組織適合遺伝子複合体(MHC)も、同様の課題があります。iPS細胞ストック・プロジェクトの報道が今週ありましたが、“主要”とはされていないものもいかに重要かが、分かってきました。
個人間の違いをいかに考慮して社会実装していくか、大きな課題といえるのではないでしょうか。次世代DNAシーケンサー(NGS)、ゲノム編集、クライオ電子顕微鏡をはじめとした革新技術の活用が、この課題の困難さを減らしていくのに欠かせません。
2019年もこのような技術革新を報道してまいります。