【機能性食品 Vol.358】

スフィンゴ脂質(スフィンゴミエリン、グルコシルセラミド)に注目

アミノ酸は刺激物質、ロイシンセンサーSestrin
(2018.11.02 10:00)
河田孝雄
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 まずは、2018年11月2日付で政府が発表した2018年秋の褒章受賞者の話題です。

学術や芸術、技術開発等の功労者を対象とする紫綬褒章に、将棋棋士の羽生善治さん(48歳)らとともに、千葉大学教授の斉藤和季さん(64歳)が選ばれましたことをお伝えします。斉藤さんは、理化学研究所環境資源科学研究センター(理研CSRS)の副センター長と統合メタボロミクス研究グループのグループディレクターも兼任なさっています。

 次に、定例の保健機能食品のアップデイト情報です。

 機能性表示食品では先週金曜日(10月26日)に6件(届出番号:D165からD170)、次いで今週水曜日(10月31日)に8件(届出番号:D171からD178)の届け出受理を消費者庁が公表しました。

 10月31日に、花王がサプリメント「リファイン 動き軽やかサポート」について機能性表示食品の表示を届け出したことが公表されました。届出番号は「D171」、届出日は「2018年9月6日」です。販売開始予定日は「2018年12月6日」と届出資料に記載されていますが、実際の販売開始予定は未発表です。

 関与成分は「乳由来スフィンゴミエリン」です。「乳由来スフィンゴミエリンを含む。健常な方がウォーキングなどの運動と併用すると、足の筋肉への神経伝達を助けるので、加齢によって衰える足の動き(踏み出す、止まるなど)をサポートして、歩行能力の維持に役立つ」旨を表示します。

 花王の機能性表示食品の届け出はこれが6件目です。実際に販売しているのは、6件のうち1件のみ。第1号のサプリメント「リファインMFGM」(届出番号:C214)を、イオン系の一部の店舗で販売しているとのことです。

 リファインMFGMの関与成分は、今回届け出た動き軽やかサポートと同じく「乳由来スフィンゴミエリン」ですが、機能性表示の内容は少し異なります。「50代以上の方が、ウォーキングなどの運動と併用することで、加齢によって衰える、踏み出す、止まるといった、足の動きをサポートして、歩行能力の維持に役立つ」という内容です。

 花王は今回の新規届け出に当たり、「作用機序に関する説明資料」を拡充しました。
引用文献数は、MFGMの同資料では13報でしたが、今回の動き軽やかサポートでは20報です。7報増えました。

 栃木にある花王生物科学研究所が2017年10月に発表したマウスの論文(Exp Gerontol. 2017 Oct 15;97:29-37.)も追加されました。

 PubMedにて「milk fat globule membrane」で検索すると、2018年分だけで32報もがヒットしました。そのうち2報は、花王の研究者が共著者です。

 以下のように、2報とも日本人を対象にした介入試験の成果。機能性表示食品の届け出には引用されていないようです。

1)Effects of dietary supplementation with milk fat globule membrane on the physical performance of community-dwelling Japanese adults: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.

Kokai Y, Mikami N, Tada M, Tomonobu K, Ochiai R, Osaki N, Katsuragi Y, Sohma H, Ito YM.

J Nutr Sci. 2018 Apr 19;7:e18. doi: 10.1017/jns.2018.8. eCollection 2018.

PMID: 29721316 Free PMC Article

2)Light rhythmic exercise with dietary milk fat globule membrane improves physical fitness in an elderly Japanese population: a double-blind randomized placebo-controlled trial.

Yoshinaka Y, Soga S, Ota N, Yokoyama K, Yamada Y, Kimura M.

Biosci Biotechnol Biochem. 2018 Apr;82(4):677-682. doi: 10.1080/09168451.2017.1412248. Epub 2018 Jan 3.

 さて、11月1日には、“肌トクホ”が初めて発売になると話題になりました。

 オルビスが特定保健用食品(トクホ)の粉末清涼飲料「オルビス ディフェンセラ(ORBIS DEFENCERA)」を2019年1月1日に発売すると発表したのです。通信販売、直営店を販路に、国内外で初年度売り上げ22億円を目標にするとのことです。

 このトクホの関与成分は「グルコシルセラミド」。「肌の水分を逃しにくくするため、肌の乾燥が気になる方に適している」旨を表示します。

 このトクホ表示許可をオルビスが取得したのは2018年9月21日。「再許可等特保」としてです。「再許可」というのは、昨年2017年12月12日に、ポーラ・オルビスグループのポーラ化成工業が「ディフェンセラ」についてトクホ表示許可を取得していたからです。

 さて、肌トクホの第一号は、資生堂が2016年4月1日にトクホ表示許可を取得した清涼飲料水「素肌ウォーター」なのですが、資生堂はこのトクホは販売していません。関与成分の「グルコシルセラミド」で、「肌から水分を逃がしにくくするグルコシルセラミドを含んでいるので、肌が乾燥しがちな方に適する」旨のトクホ表示許可を取得しました。

 資生堂は、4年半かけてこの肌トクホの表示許可を取得したのですが、実際に販売を開始したのは、関与成分が同じである機能性表示食品「飲む肌ケア」(届出日:2016年3月18日、届出番号:A278)でした。

 表示の内容は「顔やからだ(頬、背中、ひじ、足の甲)の肌の水分を逃がしにくくすることが報告されており、肌の乾燥が気になるかたに適している」旨。届出書に記載した販売開始予定日である「2016年9月21日」通りに、販売を開始しました。

 資生堂の商品も、オルビスの商品も、トクホ関与成分名は「グルコシルセラミド」と同じですが、原料が異なります。資生堂のはコンニャク由来で、オルビスのは米胚芽由来です。コンニャク由来グルコシルセラミドは、ダイセルが事業化しているのが唯一かと思います。もともとはユニチカが雪国アグリと共同開発しました。米胚芽由来グルコシルセラミドは日本製粉やオリザ油化など複数の企業が事業化しています。

 機能性表示食品における届け出では、関与成分が「グルコシルセラミド」のものは40件あり、原料は3種類。コメ、コンニャク、パイナップルです。パイナップル由来グルコシルセラミドは、丸善製薬が事業化している素材です。

 原料別の件数は、コメ由来グルコシルセラミドが18件(これとは別に撤回3件あり)、コンニャク由来グルコシルセラミドが4件、パイナップル由来グルコシルセラミドが18件です。

 花王のスフィンゴミエリンも、ダイセルや日本製粉、オリザ油化、丸善製薬などのグルコシルセラミドも、「スフィンゴ脂質」の仲間です。

 現在、今年末に発行する「日経バイオ年鑑2019」の編集作業を進めております。このスフィンゴ脂質関連は、掲載項目の1つ「機能性脂質」に盛り込みます。

 スフィンゴ脂質とスフィンゴミエリン、グルコシルセラミドの関係をここで整理してみます。

 スフィンゴ脂質(sphingolipid)は、長鎖塩基成分としてスフィンゴイド類を含む複合脂質の総称で、その部分構造がセラミドです。セラミドは、スフィンゴイドに脂肪酸がアミド結合したものです。セラミドに糖がグリコシド結合したものがスフィンゴ糖脂質で、リン酸と塩基が結合したものがスフィンゴリン脂質です。

 なお、スフィンゴイドの代わりにグリセロールを含むものは、グリセロ脂質と呼ばれます。

 従いましてグリコシルセラミドと、スフィンゴ糖脂質は、ほぼ同じ意味ですが、スフィンゴ糖脂質の方が範囲が広いようです。グリコシルセラミドよりも複雑な化学構造の物質も、スフィンゴ糖脂質に含まれるからです。

 スフィンゴミエリン(sphingomyelin)は、セラミドにホスホコリンがエステル結合したリン脂質です。

 かなり複雑な関係のように思いますが、スフィンゴミエリンも、グルコシルセラミドも、スフィンゴ脂質といってよいかと思います。

 さて今回、もう1つの話題は、分岐アミノ酸BCAAの1つである必須アミノ酸ロイシンの話題です。

 10月31日に味の素のメディアセミナーにて、立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さんの講演「必須アミノ酸ロイシンと運動による筋肉づくり」もうかがいました。

 アミノ酸には、刺激物質としての重要性が分かっていますが、その代表がロイシンです。

 ロイシンは、ストレス誘導性蛋白質であるSestrin2が、ラパマイシン標的複合体1(TORC1)のリソソームへの輸送を制御するGATOR2に結合するのを阻害することにより、TORC1を刺激し、筋蛋白質の合成を促進するということで、Sestrinは、ロイシンセンサーと呼ばれるということのようです。

 PubMed検索にてヒットした論文の見出しを比較すると、2016年の米UCSFなどの論文がおもしろそうと思いました。

Sestrin regulation of TORC1: Is Sestrin a leucine sensor?
Lee JH, Cho US, Karin M.
Sci Signal. 2016 Jun 7;9(431):re5.

 機能性表示食品にて、「ロイシン」を機能性関与成分に含む届け出件数は5件です(他に撤回が1件)。以下の紹介します。

※味の素「アミノエール」(A202、B513)の機能性表示

本品にはロイシン40%配合必須アミノ酸が含まれます。ロイシン40%配合必須アミノ酸は、足の曲げ伸ばしなど筋肉に軽い負荷がかかる運動との併用で、60代以上の方の、加齢によって衰える筋肉の維持に役立つ筋肉をつくる力をサポートする機能と、歩行能力の改善に役立つ機能があることが報告されています。

※大塚製薬「アミノバリュー」(B182、B184)の機能性表示

本品にはBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシンの総称)が含まれます。BCAAは運動まえや運動中に飲むことにより、運動によるカラダの疲労感をやわらげることが報告されています。

※ファンケル「歩くサプリ」(C400)の機能性表示

本品にはロイシン40%配合必須アミノ酸が含まれます。ロイシン40%配合必須アミノ酸は、脚の曲げ伸ばしなどの筋肉に負荷がかかる軽い運動との併用で、60代以上の方の加齢によって衰える筋肉をつくる力をサポートすることにより、歩行機能の改善に役立つことが報告されています。ロイシン40%配合必須アミノ酸には、ロイシン、リジン(塩酸塩として)、バリン、イソロイシン、スレオニン、フェニルアラニン、メチオニン、ヒスチジン(塩酸塩として)、トリプトファンが含まれます。

 なお、ロイシン代謝物である「3-ヒドロキシ-3-メチルブチレート(HMB)」を関与成分とする機能性表示食品は19件の届け出があります。

 HMBの機能性表示の一例を以下に示します。

本品には、3-ヒドロキシ-3-メチルブチレート(HMB)が含まれます。3-ヒドロキシ-3-メチルブチレート(HMB)には、自立した日常生活を送る上で必要な筋肉量及び筋力の維持・低下抑制に役立つ機能、歩行能力の改善に役立つ機能が報告されています。
 こちらは「日経バイオ年鑑2019」の項目「機能性アミノ酸」に記載します。

 原則毎週金曜日に配信している日経バイオテク機能性食品メールに掲載している記者によるコラムを掲載します。

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