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 まずは、定例の保健機能食品のアップデイト情報です。

 この1週間では、先週金曜日(2018年10月12日)に7件(届出番号はD137からD143)、次いで今週水曜日(10月17日)に6件(D144からD149)の届出情報を公開しました。機能性関与成分の新規は無かったかと思います。

 今回のメールでは、今週月曜日(10月15日)の厚生労働省の食品の審議会と、昨日(10月18日)に都内の同志社大学東京キャンパス(Hub)にて開催された第16回糖化ストレス研究会からの話題を紹介します。

 まずは食品の安全性評価の施策を検討する厚労省の審議会の話題です。

(2018.10.17)
厚労省審議会、ゲノム編集育種食品の2回目審議
「最悪の規制を作ることになりかねない」と中島春紫・明治大教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/10/17/04856/

 ゲノム編集技術は、ゲノム上の狙った部位の塩基配列をピンポイントで改変できる、という画期的な技術です。が、誤って塩基配列が類似した別の部位を改変してしまう“オフターゲット作用”をいかに防ぐかが、課題となります。

 農作物や魚類などのゲノム編集育種でも、このオフターゲット作用をできる限り調べて、ゲノム編集育種を進めたいものです。

 10月15日の審議会(薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会遺伝子組換え食品等調査会、38文字です)では、委員である農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)生物機能利用研究部門遺伝子利用基盤研究領域長の田部井豊さんが、「オフターゲットへの対応と導入遺伝子が除かれたことに関する証明」と題した発表を行いました。

 オフターゲット作用が生じにくいように特性の高いターゲット配列を選定するWeb toolなどを紹介し、外来遺伝子を含まないヌルセグリガントを証明する方法としてサザンハイブリダイゼーション法やPCR法、次世代シーケンサー(NGS)の特徴を説明しました。「農研機構には22万点の遺伝資源がある。オフターゲットという呼び方はしないが、これらの多くはオフターゲットの遺伝資源といえる」ともお話しでした。

 分かりやすい発表でしたが、皆さんにぜひ知っていただきたいのは、日本における食材(=ほぼ生物)のゲノム解読があまり進んでいない、ということなのです。

 田部井さんは今回、イネを例にオフターゲットへの対応を説明なさいました。イネはゲノム解読が最も進んでいる農作物です。

 実は(当たり前のことですが)、オフターゲットが起こりやすいゲノム部位を解析するには、ゲノム全体の塩基配列情報が必要です。

 隔週発行の印刷物である日経バイオテクでは、ほぼ1カ月に1回「機能性食材研究」を連載していまして、食材のゲノム解読状況を調べて掲載しています。

 連載回数は58回に達していまして、直近の記事は、日経バイオテク2018年10月8日号に掲載した「機能性食材研究(第58回)
ニホンナシ(日本梨)」でした。

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082300007/100400032/

 この連載をとりまとめるに当たり、ほぼ毎回がっかりするのが、ゲノム解読状況です。
 日本におけるゲノム解読が進んでいる食材は、ほんの一握りに過ぎないからです。

 数万塩基規模のロングリードを1分子で読める高性能DNAシーケンサーが登場し、ゲノム全体を解読するための費用は劇的に少なくてすむようになってきました。

 クールジャパンでは、高品質な日本の食材を海外に得ることが大きな柱になっています。シャインマスカットのような付加価値の高い食材を栽培しやすくしたり、トマトのリコピンのような注目成分を増やしたりするのに、ゲノム編集育種技術は威力を発揮します。

 日本の誇る食材(=ほぼ生物)のゲノム全体の解読を、国を挙げて推進してみてはいかがでしょうか。

 食材1つ当たりのゲノム解読コストは、精度を突き詰めなければおそらく数千万円程度かと思います。国の予算としてはそんなに大きくないように思います。

 例えば、食材のゲノム解読において日本で最も実績がある、千葉県かずさDNA研究所のアドバイスを受けながら、日本各地の特産食材のゲノム解読を進めるような仕組みを作るのが良いのではないでしょうか。

 さて次の話題は、昨日の酸化ストレス研究会です。

 4題の講演の中から、今回は、東海大学農学部バイオサイエンス学科教授の永井竜児さんの「代謝マーカーとしての各種AGEsの精密測定」と題する講演を紹介します。

 この機能性食品メールでもたびたび、紹介していますが、頑健性の高い分析技術はとても大切です。

 生体内AGEsマーカーの研究では、永井さんの業績は特筆すべき、と思います。記事に反映してまいります。

 実は永井さんには、機能性食材研究の第1回である「トマト」の回(日経バイオテク2014年1月20日号に掲載)に、写真入りで登場していただきました。今から5年近く前のことです。

 永井さんの研究室は東海大の熊本キャンパスにあります。2016年4月の熊本地震では、東海大にも大きな被害が発生しました。その翌月に第70回日本栄養・食糧学会が神戸で開かれましたが、永井さんの研究室の方々がどうなさっているか、気掛かりでした。

 今回の講演にて、その後の研究が急速に発展していることを確認できました。今後ますます楽しみです。